ドラマや漫画、ゲームに影響されやすい人間ってのは結構居るものだ。そういう奴らのおかげで経済は回っているんだろうし、それはいいんだけど。
俺の彼女はあまりにもそれが顕著で、そういう単純なとこも可愛いけれど、時々困るような影響のされ方をしていて、今まさに困っている。

「ねーえー、言ってー?」
「言いませんって」

どうやら今ハマっているドラマで、彼女の好きな俳優が歯の浮くような台詞をぽんぽん言いまくる役を演じているらしい。
「ああいうこと言われたらキュンとしちゃうだろうなぁ」という彼女の言葉に嫌な予感はした。そしてそれは、華麗に的中してしまったのだ。
聞いているだけで鳥肌が立つような台詞を言えるはずがない、と拒んでいるのに全然聞き入れられない。何と強情な彼女だろうか。

「ユーキーちゃーんー」
「いやもう本当勘弁してください」
「むー……ツッコミの時はあんなに饒舌なのに……」
「種類が全然違いますよ」
「同じ日本語だよ?」
「そうですけど!そうじゃなくて!」

ツッコミと同じくらいのテンポで甘い台詞を吐く自分なんて想像もしたくない。どんな顔して言えっていうんだ、恐ろしい。

「いいじゃない、減るもんじゃなし」
「減りますよ、何かこう、SAN値……いや、MP的なものが」
「じゃあここはひとつ私のHPを回復するためだと思って」
「ピンピンしてるじゃないですか」
「いや実は朝からお腹が痛くてね」
「いいこと教えてあげますね、先輩。そういうときは病院に行くといいですよ」
「もう!意地悪!」

さっきまで一緒に学食で昼飯食って、デザートに杏仁豆腐まで食べてたのを見てる身としては、腹痛という言葉が響かないのも当然だ。

「大体、その俳優が言ってるのを観てキュンとしたんだから、オレまで言う必要無いでしょうに。リアルを補うためのドラマでしょ」
「……俳優さんも好きだけどユキちゃんの方が好きだし、だったらユキちゃんに言われた方がキュンとするだろうし、」
「そんな可愛い顔して可愛いこと言ったってダメですよ」

膨れた頬に手の甲で触れながら溜息混じりにそう言うと、先輩の脚が止まった。振り返ると、ぽかんとした表情を浮かべている。

「どうしました?」
「……可愛い、は、さらりと言うね」
「……? まぁ、感想みたいなもんですし」
「う、ん」
「台詞じみたことは寒いなって思うけど、いつも思ってることなら普通に言いますよ」
「いつ……!?」
「ああ、もしかして、キュンとしちゃいました?」
「うるさいユキちゃんちょっと黙って」
「うわぁ、理不尽」



単純明快な口説き文句

(いつだって可愛い君が一番弱い言葉、みーつけた)


描写抜けしてるけど、廊下でする会話じゃない。(今更)
15.10.20

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