「み、御堂筋……?」
「おまえ、何でここ居るんや!?」

後ろを振り返った先輩たちの表情はわからないけど、ひどく怯えた様子で御堂筋くんに言葉を掛けてはる。

「学校にボクが居ったらおかしいんか?」
「いや、そうやなくて……」
「大体キミたちこそ、廊下のど真ん中で迷惑極まりないで。生徒はともかく、お客さんの邪魔や」
「あ、あぁ、そやな」

少しだけ廊下の端に寄り、「何でボクまで」と怪訝な顔をする御堂筋くんの腕を石垣先輩が宥めながら引っ張った。
溜息吐きながら私の隣に来た御堂筋くんが、普段より少し身体を屈めて私に話し掛ける。

「新名さんは、何しとんの」
「あ、えっと、先輩のクラスに行く途中で。タピオカドリンクのお店なんやけど」
「タピオカドリンク……」
「御堂筋くんも行く?一緒に行ったら、サービスしてもらえるかも」

お店のある方を指差して尋ねると、御堂筋くんは首をこてんと直角に傾げ、眉根を寄せた。

「タピオカって何ィ?」
「何って……、何でしょう?」

どう説明してええか解らず、先輩たちに視線を向ける。すると先輩たちも首を傾げながら目を見合わせた。

「言われてみれば何やろな、あれ」
「何って、でんぷんやろ?」
「でんぷん?」
「何で黒いんや?」
「オレに解るわけないやろ」
「たまに白いのもあるよな、タピオカって」
「え、知らん」

先輩たちが議論するのを眺めていた御堂筋くんが呆れた表情を浮かべる。
彼の袖を軽く引っ張り、「見た方が早いかも」と、先程と同じように店の方を指差す。それに気付いた井原先輩も、御堂筋くんに声を掛ける。

「行こうや御堂筋、オレが奢ったるで」
「くん付けぇよ」
「何でや!もう引退しとるのに!」
「ハァ?あーんな頻繁に部室に入り浸っとる奴らは、引退しとる、とは言わんよ」
「う」
「あー……」
「もう少しでお受験やのになぁ?うちは一応進学校やのになぁ?今年の進学率、落ちるかも知らんねぇ?」
「落ちるとか言いなや!」
「まぁまぁ、ほら、みんなで行きましょ?」

先輩たちにべぇっと舌を出して見せる御堂筋くんの背中を押し、目的のお店へと向かう。
ちょうど部活の先輩が店番をしていて、彼らの分もサービスとしてホイップクリームを乗せてもらえることになった。
ドリンクの種類は割と豊富で、メニュー表を見ながら先輩たちと一緒に悩む。ヨーグルト系も捨て難いけど、やっぱりミルクティーやろか。

「御堂筋くん、何にする?」
「甘くないやつ」
「コーヒーとか?あ、お抹茶もあるね」
「そうやねぇ。……井原くぅん、ボク抹茶にする」
「はいはい。新名も決めたら言いや、買うたるで」
「え、あ、でも」
「ええから。お前のおかげでサービスしてもらえるんやから、これくらいさせぇよ」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「きゃー井原先輩カッコええー、カフェオレ買ってー」
「ステキー、紅茶買ってー」
「お前らは自分で買えや!」

井原先輩が買ってくれはったドリンクをふたつ受け取り、ひとつを御堂筋くんに渡す。
初めてタピオカを見る御堂筋くんは、カップをくるくる回し興味深そうに観察する。

「ストロー太いな」
「細いとタピオカが通らへんからね」
「……あぁ、成程」

先に飲み始めた先輩たちを横目で見て、御堂筋くんは納得したように頷く。
そしてストローをぐりぐり回すように弄りながら、目線まで持ち上げたカップの底面をじっと見たまま何か考え込んでいる。

「どないしたん?」
「いや、何かに似てるなァ思て。…………あ、」



アレや、カエルの卵にそっくりやな

(ぶふっ!)
(げほっ!)
(うぅわ、汚いでキミィら)
(何て喩え方すんねん、お前!)
(あ、美味い)
(あの喩えの後で平然と食うな!)
((仲良しやなぁ))


お化け屋敷は皆様のご想像にお任せします。多分御堂筋はピギピギ鳴いてます。
14.11.30

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