隣の席の彼女と、朝の情報番組は何を観るか大体決まってるよね、という話をしたばかりだった。
僕と彼女が観る番組は違っていたから、僕らは互いにそれぞれ、番組のキャラが可愛いとか、こういうコーナーが面白いとか言い合ったのだ。

「……あ」

朝、リビングに降り、朝食を作る母と挨拶を交わしながら冷蔵庫を開けてコップに牛乳を注ぐ。
それを飲みながらテレビを点けると、彼女がいつも観ていると言っていた情報番組が流れていた。
もし彼女と話す前だったら、すぐにチャンネルを変えたと思う。それは別に、どうしてもその番組が観たいからではなく、ただの惰性じみた習慣だ。
賑やかに始まったのは、奇しくも彼女が一番好きだと言っていた占いのコーナーだった。

(よく当たるって、言ってたっけ)

占いの類は、嫌いじゃない。
そりゃ全面的に信じるのはどうかと思うけど、ラッキーカラーを身に着けたりするのは、楽しい一日を過ごしたいという思いの表れみたいで、それだけで楽しくなったりするものだ。
いつも観ている番組の占いは血液型占いだけど、こっちは星座占いだった。下位から発表されていく中、僕は夏生まれの彼女の星座を探す。
そして、最後に発表された1位の欄にそれはあった。「お」と思わず明るい声が出る。彼女も観ているだろうし、喜んでいるだろうか。
ラッキーカラーは緑と書かれていて、制服で事足りるな、と少し口元が緩んだとき、階段を下りてくる足音が聞こえた。

「おはよう、定時」
「んんー……おはよう照兄ちゃん……。楽しそうだね、何観てるの?」
「占いだよ。クラスの子が、よく当たるって言ってたから」
「へぇ、何位だった?」
「あのね、なんと、い…………あ、れ?」
「ん?」

1位、と、答えそうになって我に返った。それは彼女の星座の順位であって、僕のではない。……さて、僕の星座は何位だっただろう。

「照兄ちゃん?」
「え、あ、えっと、」

どう答えたものかと焦っていると、台所からご飯をよそって欲しいという母の声が響いた。それに反応して慌ててソファーを立ち上がる。

「ご飯は兄ちゃんがやるから、定時は母さんと一緒にお皿並べてくれるかい」
「おんっ」

話が途切れて助かった、と小さく息を吐いた。星座占いを見ていて、自分の星座を見ていませんでした、なんて、そんな馬鹿な話が出来るわけない。

(……寝惚けてた、かなぁ)

学校行ったら、君が言っていた占い見たよ、って彼女に話したかったのだけど。これじゃあ出来そうにないなと少し残念に思いながら、僕のお茶碗よりひと回り大きい弟のそれに、たっぷりとご飯をよそった。



今日の運勢よりも知りたいことは

(星占いで自分の運勢を見忘れた理由と、君の一位が嬉しい理由)




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