このイカれたギャルゲーの最初に、DSは確かに言った。『目標は愛しのあのコに告白してもらうこと!』。
そして愛しのあのコに告白してもらうために、プレイヤーにできることは1つだけ。好感度を上げることだ。
じゃあさ、じゃあさ、しょっぱなから好感度MAXの奴にはどうしたらいいの?


【ラブフォー・タイムセール! 6】


先のほうでゆるく結った長い髪に青いリボンが揺れる。遠目で見て華やかだと思った着物の柄は女物の着物を着ていたわけではなくて、女物の羽織を羽織っていただけだった。何だその中途半端な変化。 普段のコイツが女装しているときのほうが余程気合いが入っている。まあ、DSも流石に女装を完璧にこなすアラサー男について情報が乏しいのだろう。豊富にあっても困るが。
勝手に上がり込んで茶など淹れていた桂は定春を撫でくりまわして嫌がられながらいつ帰るともしれない俺を待っていた。そんな桂・・・もといヅラ子チャンの好感度は100%。これは、もうアレなんじゃないの。俺が手を出すまでもなくアレなんじゃないの。

「よ、ようヅラ・・・何しに来たの」
「ヅラじゃないヅラ子だ。いや、近くまで来たからちょっと遊びに」
「あ・・・あっそォ〜残念だったね今神楽も新八もいなくてさァ・・・ふ、ふたりっきりで・・・」
「ああそうだな。だがコントローラーはどうせ2つだろう?カーピィやろうカーピィ」
「ナニホントに遊びに来てんだァァアアア!!!」

しかもカーピィってお前が言ってるソレスーパーデラックスだろ!スーファミとかこの後に及んで売ってねーから!!
スパン!と思わず頭をひっぱたいた俺に、だから遊びに来たと言っただろうが!と桂はぷりぷり怒りながら湯呑みを机に叩きつけた。あっヤベーかな好感度これで下がったりしねーだろうなとDSを確認するも、やっぱり好感度はMAXのまま。
おかしい。長谷川さんのときは好感度がMAXになりさえすれば告白イベントが発生しそうだったのに。むしろ1度好感度を落としてから上げ直したほうがいいんじゃないかってくらい、桂は普段と変わりがない。

「そっそーじゃなくてよォ・・・オマエ・・・あるんじゃないの、何か・・・俺に言いたいこととか」
「貴様に言いたいことだと・・・?あるに決まっているだろうが」
「エッ」
「というか俺はいつも言ってきたつもりだったのだがな・・・貴様には伝わっていなかったということか・・・」

はたかれた頭をさすって唇を尖らせていた桂は、焦れた俺が水を向けるとふっと真顔になって目を細めた。
眉を寄せて、全く伝わっていないことをちょっとだけ責めるような目を流されて俺は焦った。え、だってそりゃオマエが俺のこと構いたがるのは知ってたけど俺に構われたがるのも知ってたけど、オマエの口から好きだなんて直接聞いたこと・・・あったら忘れるワケねーし・・・でもコイツのことだから良くわかんねー言葉に変換されてるかもしれなくて、え、オマエ俺にずっとそんなこと、

「銀時、この腐った国を建て直すため再び俺と剣を」
「ダヨネ!!!」

ごっ!
キリッ!とキメ顔で俺を射抜いてきた頭を鷲掴んで机に叩きつけた。ぐぅっとか呻いて机にめり込んでいる桂の頭を見下ろして、居たたまれない気持ちを紛らわせるために腹の底から溜め息をつく。あー恥ずかしいこと考えちまった。わかってただろこんなオチ。
「よっ銀時攘夷してる?」が挨拶代わりのこの男だ。むしろ何で俺はこの流れを読めなかった。このバカに恥ずかしい期待なんかしちゃったなんて俺も大概バカだ。

「痛いぞ銀時何だ貴様さっきから・・・あっそうだまだあったんだ、お登勢殿から家賃の催促を言付かっててそれと貴様糀町の角の店のツケまだ払ってないそうだな、ご店主に泣きつかれたぞ」
「よし忘れろ」

ゴヅン!!
しゅー・・・と額からいった桂が暫く起き上がってこないのを横目に、俺は内心で頭を抱えた。さっきからどついてもどついても、桂の好感度は下がらない。それは大変結構だが、この調子じゃ告白イベントなんていつ発生するやら見当もつかない。
好感度聞いたときは楽勝だと思ったのに。100%だなんていうわりに、桂の態度は全然俺に対して熱っぽさを覗かせない。いつまでも核心に迫ってこない桂の電波ぶりを見ていたら本当に俺のこと好きなのかと猜疑の目を向けたくなる。昔っから銀時銀時って、お前大概俺のこと好きだっただろーがナニ今更もったいぶってんだ大体今お前から告白してくりゃ俺は両手広げて迎え入れてやるってのにお前この期に及んで焦らしプレイとか、

「銀時貴様いい加減にせんか!さっきから人の頭をゴツゴツと」
「ウルセーいつになったら告白してくんだテメーは!!!」

ぱちん。
桂の目が昔の少女マンガみたいに星を飛ばした。鳩に豆鉄砲って顔だ。
あ、やべ。今俺自分から催促しちゃった?
いやでも、こうでもしないとコイツ馬鹿だし、こう見えて意外とノリはいいから何だ貴様告白待ちか?ん?仕方ないな素直に言えばいいじゃんもーとか腹立つセリフでイベント起こしてくれそ

「えっ・・・何か悪い物でも食べたか貴様、気色悪い」






「オイホントにコイツの好感度はMAXなんだろうなァァアアア!!?」
『何度も言わせるなヨ!ヅラ子チャンの好感度は現在100パー・セ・ン・ト!!』
















































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