マダオチャンを踏み台にして、カッと音のしそうなハイヒールを履いた女王様。白く長い髪をツインテールにして、ゴスロリっていうの?それの白いフリフリしたやつ、それから白いタイツ。
甘いオンナノコってカッコしてる割に、目付きが冷たい。下賤を蔑む目だよアレ。
いやそりゃ俺の知ってる女共もたいがいだけど、こんな女王様はやっぱりご存知ない。

『あの方は・・・エリザベス様ァァアアア!』
「アレかァァアアア!?」

【ラブフォー・タイムセール!5】


『あっ・・・あの方はエリザベス様、ヅラ子チャンのペットであり頼もしき相棒・・・好感度は現在・・・ウッ好感度などと畏れ多い・・・!』
「攻略対象の好感度出して何が畏れ多いんだァァァ!!何で主人がチャンでペットが様だ!!」

何があったのか、DSが恐縮しきるのでエリザベス様の好感度はわからなかった。ちら、と無言で長谷川さんの頭をハイヒールでぐりぐりしているエリザベス様を見れば、どっから見ても美女。いつものオバQの面影は色しかない。
こんだけ気合い入れて外見変えられるんなら何故今までのアイツらはアレだったんだ。可哀想だろうが。俺が。
開発されかけた長谷川さんが気持ち悪い声を上げ始めたあたりで、エリザベス様は一度ガッと長谷川さんの頭を蹴飛ばすと俺に向き直った。あの、瞼を見失ったいつものカッとした目はどこへうっちゃってきたのか、絶対零度の女王の眼差しで俺を睨み付ける。鋭い。陸奥とか初期の月詠とかが可愛く見える鋭さだ。
バッ、とその細くなった身体の何処から出てきたのか、翻されたのはいつもの白いプラカード。

『ヅラ子さん見なかった?』

あ、意外とフレンドリー・・・?
引き攣った表情のまま首を横に振ったら、チッと舌打ちひとつ残してエリザベス様は去っていった。腹いせにぐにゃっとした長谷川さんを蹴り上げあて。もう女王というかチンピラというか。何かこうやっぱ、人型になっても意志疎通できる気がしないし、全然フレンドリーじゃなかった。

ピコーン♪

『えっエリザベス様の・・・エリザベス様の好感度が0になったぞォォオオ!どーすんの!お前ッコレどーしてくれんだァァア!おっお待っお待ちくださいエリザベス様ァァァ・・・!』

「知るかァァアアア!!テメーはエリザベス様の何なんだ!!!」

パァン!ともう何度目になるか知れない勢いでDSを叩きつけた。桂の居場所を知らないだけでイキナリ地に落ちた好感度とかDSの奴隷根性とか、ツッコミどころはいくらもあるが、俺にとって心底このDSを、というかこのクソゲーを憎むべき要素はこれで攻略対象が全員出揃ってしまったということだ。結局結野アナはいねーのか。何でギャルゲーのクセに絶賛男祭りなんだだからいらん初志貫徹すんじゃねーよォォオオ!!

叩きつけてもまだ壊れたファービーのように『ウウッ・・・エリザベス様ァァ・・・』とか呻いているDSを重い重い溜め息をついて拾い上げる。あいつらを、それでも元に戻すには何とかしてこのクソゲーをクリアしなければならないのだ。
でも今はこの絶望的状況に落ち込んでふて寝のひとつもしたいし、とにかく疲れたんで帰りたい。帰ったらまた、PACHIEという現実に向き合わなければならないわけだが。大体アイツ性別変わったときでさえメガネのフレームカラー変わっただけだったのに何で今回はおさげとか付いたんだ。アレか?本体じゃなくてメガネかけの方が変化したという点でささやかなの?

意気消沈して、下らないことをぐだぐだと思い過ごしながら帰ってきたら、新八の下駄が無かった。もう夕飯時だし、帰ったのかもしれない。その代わり、玄関に知らない下駄が几帳面に揃えられていた。
青い鼻緒の、女物の下駄。お妙のよりサイズが大きい。ひょっとすると俺と同サイズくらい・・・ピンとくる女はいなかったが、このクソ真面目な揃え方には覚えがある。桂だ。
沖田と追いかけっこしてるのを見ていたから勝手に対象認識していたが、そういえば、桂にはまだ会っていなかった・・・、

「ワン!」
「む、銀時お邪魔してます」

ピコーン♪

『このコはヅラ子チャン!真面目で天然な幼なじみだヨ!そしてエリザベス様の主・・・ウッエリザベス様・・・』
「テメーはこの後に及んで引き摺ってんじゃねェェエ!!さっさと好感度出せコノヤロー!」
『グスッ・・・好感度は・・・現在100%・・・』


「そーかヅラは100%か・・・100%ォォォ!?」

思わずガバッと顔を上げたら、青いリボンでいつもの長い髪を結ったヅラ子チャンが呆れた顔をした。
銀時貴様まさか歩きながらゲームなぞしてきたのではあるまいな。歩きDSは貴様アレだぞ、交差点とかで大きな荷物抱えたお婆さんにぶつかってあっごめんなさい・・・いえこちらこそ・・・とかそんなんから恋が始まっちゃったりするんだからな。なんて相変わらず電波なことを、100%の好感度にそぐわぬ涼やかな無表情で。定春を抱き締めようとして噛まれまくった血まみれの手で、呑気に茶などを啜りながら。
















































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