ipudが壊れた。
ノーミュージックノーライフの手合いでもないので無けりゃ無いでもいいのだが、丁度新しいの出たし買い替えてもいいかと思って気まぐれを出して買ったのだ。
前のは随分使っていた。型落ちしたの何年前?ってレベルで長年酷使してきたのだが、ここへきて暇乞いをしてきやがった。ナマイキ言うじゃねーかもっとやれ、といじくり回してみたのだが、定年退職と決め込んでいるipudはもうウンとも許してください御主人様とも言いやしない。
新しい相棒は魚の鱗のようなメタリックな水色で、先代に比べて色んな機能が追加されている。別にこちらの指示通りに音を流してくれりゃいいのでゲームやアルバムなどいらないのだが、ラジオが聴けるようになっていたのはいいなと思った。意外と粘着質というかしつこいので、同じ曲を何度も聴くのも苦痛じゃないが、ラジオの一期一会も嫌いじゃない。
そんなわけでここのところ暇があるとラジオを聴いている。たとえば今夜などは土曜の夜で、このくらいの歳の男がひとりラジオを聴いているなんて寂しいのかもしれないが、生憎ここにゃそんな奴らしかいやしないので気楽だ。

『・・・でしたー。さて、10時になりましたここからは花束のように歌を贈ろうミュージック・リザーブのお時間。お相手は引き続きわたくしKANRININがお送りいたします。
このコーナーではリクエスト・ソングをあなたとあなたの大事な人のためにリザーブ。毎週10時から11時のこのお時間に心を込めてお贈りします。
ご希望の方はお名前ご記入のうえ、お相手のお名前とメッセージを添えて番組までお送りくださいね。あなたとお相手とのエピソードなどもお待ちしております。お名前はお互いがわかるようなラジオネームでも結構ですよー。
さて今週のミュージック・リザーブは加州金澤のラジオネーム沖桂地に満ちよさんから・・・』

そういえば先週もこんなコーナーをやっていた。興味ないのでチューナーを回してみたのだが、どれもイマイチパッとしなかったのだ。切ってしまえばいいのだが、ラジオを聴きたい気分だけはあったので諦めてそのまま何となく聴いていた。今日みたいに。
尊敬する上司の退職に餞の曲が流れ、友人の出産を祝う歌が贈られたあと、遠距離恋愛の男が女に贈る歌が流れてきた。
なかなか湿っぽい男らしい。寂しいばかりが鼻につく歌だった。曲名もそのものズバリアイミスユー、ヒネリも何もない。こんなん贈られて喜ぶ女がいるかねェと思いながら、遠くない将来フられるだろう男に軽い嘲笑を贈ってやった。
まるで性格の悪い男の典型のようなことをしたが、実際俺はイイ奴だ。恋とかしたって寂しいとか言わないし、逃げ足の速いソイツを追いかけて首を斬ることを楽しみに仕事と恋愛を両立させている。
こないだだって暢気にキャバクラの呼び込みなんてしているソイツにバズーカかまして、3町くらいぐるぐる走って追い詰めた。まさかあの裏路地のボロ長屋が忍者屋敷風に改造されて、追い詰めたあの壁がどんでん返しになっていたなんて。台所のシンクの下が抜け道になっていることを知っていたら、今頃別嬪の生首とデートしてたのによう。
ラジオではまだ寂しい寂しい言っていた。コイツも大概わかってねーな。

『では今週最後のミュージック・リザーブ。住所秘密のドSカイザーさんから住所不定のテロリストさんへ・・・ラジオネームですよねー?えーとメッセージは、

「あのカラクリ屋敷こっちで仕掛け直しといたから精々楽しみなァ」

・・・遊園地勤務の方でしょうかねー?
ではドSカイザーさんからテロリストさんへ、ミュージック・リザーブはakikoで【I miss you】。』


その柔らかそうな頬に顔を寄せて、長い髪を指に絡ませてキスをして。そのままちょっと寄った眉間にもしてやるんだ。そんで白い腕が伸びてくるのを首へやって、腰を抱いて引き寄せて、耳元で恥ずかしいセリフの一つも言ってその顔染めてやりたいんだろ。
・・・夢ン中なら俺もすらァ。


≪(私たちが人生を分かち合えないことは分かっている
  ただ、どうしていいのか分からないだけ
  けれど、心のドアを覗いたら きっとわかるはず
  わたしがあなたに遭いたくてたまらないことを)≫ 


寂しい寂しい男はさっさとフられちまいなァ。
アイミスユーなんて相手に向かって言えるうちは、まだ寂しいうちに入らねーと思うがねェ。









「 ≪(本当は知ってもらいたい
    心の奥では
    私があなたを・・・)≫ 」



声を重ねていたその先、言えずに途切れたラストフレーズは女の口だけがアイミスユーを呟いた。













※10.31一部改変




























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