≪すごく軽薄 ところ構わず
 何処かドクドク なんか気になっちゃう・・・≫


2年後の世界から1週間。世界は今日も目に馴染んで、穏やかとはいえないまでも違和感なく過ぎていく。
時間の流れが速いこの江戸で、1週間前の事件など口の端にものぼらない。バサリと広げた朝刊にはタイムリーな昨夜の話題。ミュージシャンの不倫発覚、アイドルグループの解散騒動、野球番長の覚せい剤使用・・・色んなことがあったんだなぁ。その調子で今日のお妙さんの勤務状況とか教えてほしいんですけど!

「近藤さん、随分熱心に読んでるな」
「うひゃぁっ!?」
「うわっ・・・ど、どうしたんだよ」
「あ、ああトシ・・・いや、何でもない」

1週間前何があったのかは憶えていない。
気づいたらどこかのビルの屋上で伸びていたのだ。2,3日の記憶がすっぽりと抜けていた。酔っぱらって記憶失くすだけでコワいお年頃なんだから、数日続きとかもう真っ青だ。
異星のイボに寄生されていたのだと知ったのは後々のニュースでのこと。騒ぎは沈静化したようで何よりだが、原因の解明とか、あのときの記憶がどうなっているかとかの検証について全くニュースになってこないのは、いくら新しいもの好きの江戸といってもちょっとどうかとオジサンは思うワケだ。こちとら死活問題なワケだ。

「・・・あ、あのさ、トシ、」
「何だ、近藤さん」
「あのイボに乗っ取られてたときの記憶って戻らんモンかな」
「またその話か。大体あの時のことは今まで誰一人思い出してねェんだ、これからのことはわからねェが滅多なことは無いんだろうよ」
「うーん・・・」

またかと言われるのも無理はない。割とけっこう、あの場にいた色んな人に聞いてまわっているのだ。万事屋にトシに新八くん、九兵衛くん・・・。誰も何も憶えていないと口を揃えるなか、冷たい視線で無言を貫いた万事屋の態度はちょっと不穏だったが。
あの場にいたのはもう1人、流石にこいつに事情を聞くワケにはいかなくて、けれど一番聞きたいのもこいつだ。
ぅ、と頭を抱えて、細い腕で上半身だけ持ち上げた。その気だるげな仕草と落ちる黒髪。
桂の姿を目にした途端、唐突に何かがフラッシュバックした。

傷だらけのボロのカウンター机、悪い安酒、それすら気にならないような絶望感・・・不意に肩に置かれた手。
艶やかな黒髪をたっぷり垂らした白い首筋。赤い口紅。涙に暮れる自分を覗き込むようなアングルで相槌をうつ仕草。
女の画のはずだ。何故桂に・・・髪型が似ているからか?
大体さっきの女は誰だ?顔は思い出せないが、あんなに色っぽい美人に優しくされたことなんて身に覚えが・・・ああイヤイヤ、そういうんじゃないから。オジサンはお妙さん一筋だから。

あの画を思い出すだにざわざわと胸の中が不穏に揺れる。思い出さねばならないような、思い出してはいけないような。
バサッ、と畳んだ新聞の隅に目がいった。何かのコラムだ、何について書かれていたのか見てもいなかったが、不意に目に入る「桂一派」の文字。
桂。
唐突に、耳の奥で甘く低い声が蘇る。

・・・まさかお妙殿と土方が・・・それは辛かったでしょう・・・

「エットシとお妙さんんんんん!!?」
「どうした近藤さん!」
「えっあっ・・・いいいイヤ何でもない」
「・・・ホントに大丈夫か?こないだっから」

気遣わしげなトシの目が刺さる。走って逃げたあのときもきっとトシはこんな目をしていたんだろう・・・あのとき?あのときってどのとき?
脳裡で、甘い声の女が囁く。

・・・ああ、かわいそうに近藤さん・・・私なら・・・

それからというもの、記憶だか妄想だかわからないフラッシュバックは唐突にやってきた。桂を追っているとき、手配書の整理をしているとき・・・どうしてか桂絡みでその画はやってきて、桂が逃げたあともたまにぶり返してくる。
慰めるような優しい唇。組み敷かれて下から見上げる白い肌に一点、赤い口紅がぬらりと淫らに嗤った。首筋を辿れば小さく跳ねた痩せた体躯。すらりと伸びた手足は流水のようにひんやりとして、かっかと火照る身体をあやすように絡んでいる。
子供にするように柔らかく頭を抱き寄せてくれた・・・その身体に縋るように抱きついて、貪るように舌を絡めれば薄いそれが熱くうごめいて赤い口紅と区別がつかなくなる・・・

「ウワァァァアアア!!?」

朧げだった女の顔は乱れるうちに桂の顔になっていく。
桂は髪を振り乱して腹の上でよがり、熱が上がってしっとりした肌が吸い付くように両手に馴染んだ。
痛いくらいいきり立った俺のモノをずっぽりと奥まで咥え込んで、妖しげに腰を揺らしながらああ、もっと、と呂律のまわらない舌で先をねだる。乱暴に突き上げたらのけ反って歓び、あっ!ああっ!と高い嬌声が降ってきた。発情した猿のようによがり狂って、もうどっちの汗だか汁だか・・・

・・・いや、こんなことは断じてない。桂を抱いたことなんかある筈がない!なのにこのリアルな痴態は何だ!!?
ぺたりと髪を首筋にはりつかせて、桂は腹の上から俺を見下ろす。ふ、ふ、と目を細める。
桂が・・・・・・桂の・・・・・・


≪愛の好きとは全く別で
 I know・・・くらる、揺らぐモラル
 擽ったり笑ったり困らせたりドキドキしたい
 とっても不純 きみが気になる≫


これは俺の妄想なのか?
それにしては妙にリアルというか、吐息の熱っぽさやべたつく汗まで覚えがある。その反面、桂がどうして女のカッコしているのかとか、どうしてそうなったとかはひどく曖昧だ。
だいたい妄想にしてもどうして桂なんだ!ちょっと外見ソレっぽいからって男抱くシュミは無いっていうか俺にはお妙さんが、お妙さんがァァアアア!!!

けれど桂はそんな俺を嘲笑うように組み敷かれては扇情的に眉を寄せ、腹の上に乗っては煽るように腰を振る。
・・・これは俺の妄想なのか?


≪君は絵になる
 君が気になる
 ぬけがらになる
 きみがきになる
 きみがきになる・・・≫


『・・・でしたー。さて、10時になりましたここからは花束のように歌を贈ろうミュージック・リザーブのお時間。お相手は引き続きわたくしKANRININがお送りいたします。
このコーナーではリクエスト・ソングをあなたとあなたの大事な人のためにリザーブ。毎週10時から11時のこのお時間に心を込めてお贈りします。
ご希望の方はお名前ご記入のうえ、お相手のお名前を添えて番組までお送りくださいね。お名前はお互いがわかるようなラジオネームでも結構ですよー。
さて今週のミュージック・リザーブは越州越後の近桂布教大歓迎さんから・・・』

『・・・さてお次のリザーブは、住所秘密のラジオネームフルーツチンポ侍さんから住所不定のフルーツポンチ侍さんへ・・・このラジオネームは私へのセクハラですかねー?訴えて勝ちますよー。
ではラジオネームフルーツチンポ侍さんからフルーツポンチ侍さんへ、ミュージック・リザーブは植田真梨恵で【RRRRR】。』


≪愛の好きとは全く別です
 I know・・・喰らう、壊すモラル
 擽っても笑っても困らせても意味を持たない
 とっても矛盾 きみが気になる
 とっても不純 きみが気になる・・・≫






















































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