≪瞳は雨 上がれば笑顔に会える知らせ・・・≫



『・・・でしたー。さて、10時になりましたここからは花束のように歌を贈ろうミュージック・リザーブのお時間。お相手は引き続きわたくしKANRININがお送りいたします。
このコーナーではリクエスト・ソングをあなたとあなたの大事な人のためにリザーブ。毎週10時から11時のこのお時間に心を込めてお贈りします。
ご希望の方はお名前ご記入のうえ、お相手のお名前を添えて番組までお送りくださいね。お互いがわかるようなラジオネームでも結構ですよー。
さて今週のミュージック・リザーブは陸前仙臺の坂桂増えろさんから・・・』


『今週のミュージック・リザーブではなんとゲストをお迎えしております!今大注目の宇宙ベンチャー企業・快援隊の代表取締役社長、坂本辰馬さんでーす』
『アッハッハー!なんですかのーこういうのは緊張しま・・・オボロロロロ!』
『さて、坂本さんの快援隊は宇宙中様々な物品の輸入貿易を主としている会社ということで、「宇宙艦が着陸に失敗してたら大体快援隊」「またあそこか」「ていうか社長声デカくね」などとネットを中心にじわじわと注目が集まっているとのことですが』
『ハァおかげさんで・・・エッ?注目ってそっち?』
『快援隊は宇宙で会社を立ち上げられてもう長いんですよね?』
『そうですの。細かいことは憶えとらんのですが、もうかれこれ10年近くになりますか』
『最近江戸を中心に地球でも密かに話題の快援隊ですが、坂本さんはなんとこのコーナーをご存知だったということで』
『地球には給油がてらたまに寄っとるんですわ!スナックすまいるちゅうトコにおりょうちゃんてカワイー娘が『なるほどーじゃあ地球にお寄りの際に聴いていただけたわけですね!』『あっハイ』
『そんなご縁もありまして、今週は坂本さんからもミュージック・リザーブをお預かりしているんですが・・・坂本さん、この曲はどなたに?』
『ヅラ・・・ああワシのコレなんですが・・・いやー照れますの!アッハッハー』
『恋人に曲送る前にスナックの女の話するとかいい度胸ですねー。ていうか彼女さんをヅラ呼ばわりして怒られませんかー?
ではさっそく、坂本さんからヅラさんへ、ミュージック・リザーブはaikoで【4月の雨】。』


≪四月の雨 ゆっくり肌を濡らす知らせ
 あなたもどこかで 同じ時を生きている≫


ぱたたた・・・と、庇から雨だれの落ちる音がする。
かくまわれた先は廃業した旅籠の二階で、古い畳に少し混じった埃臭さが、水気のある夜の空気に沈んでいった。
白々とした蛍光灯の明かりが似つかわしくない。甲高い声の響くラジカセの無骨さも。
便利なもの、新しいものには興味をもつ癖に、たまにこうして無遠慮な光の何もかもが煩わしくなるのは、手負いゆえの心細さが懐古趣味でも引きずり出すのだろうか。
わずかに湿ったような気のするシーツはそれでも憎らしいほどに白い。

「桂さん、お水は」
「御内儀、かたじけない・・・」
「まだ傷が塞いでいないのでしょ、今は寝てらっしゃい」
「亭主殿にもお礼を」
「後でね。あの人桂さんのファンだから煩くってなんないわよう。ああ寂しいかと思ってラジオをかけておいたけれど、うるさかったら消しましょうか」
「・・・・・・いや、いい」

慎ましい音がして襖が開いた先で、初老の婦人がてきぱきと水差しを替えていき、また慎ましい音で出て行った。
休んでいいと言われれば身体は正直で、湿った重い空気のなかで意識はすぐにまどろんでしまう。こんな時に呑気なものだと唾棄する自分がいる横で、大丈夫だとどこか安心している自分がいるのは何だろう。こんなことが前にもあった。銀時がいて高杉がいて、あいつが・・・。

(なんちゃーがやない。ワシに任せとき)

大きな掌が頭を撫でれば、張りつめた緊張の糸がすぐに解れた。今日に限ってそんなことを思い出すなんて、もしかしてこの怪我は余程重症なのではないか。
それとも、まどろんだ頭に響いてくるラジオの声が、いつかの懐かしい声に似ているからだろうか。


≪何年も何年も前の遠い昔が 今でも昨日のことのよう・・・≫


『彼女さんはいまどちらにいらっしゃるんですかー?』
『さあー、ようわからん』
『え?』
『江戸にはおるようじゃが・・・アッその目やめてくれます!その憐れんだ目やめてくれます!!』
『妄想彼女・・・ええと、会えなくて寂しくないですか?』
『んんん・・・寂しゅうないといえばそら嘘になりますが・・・』


≪2人だけで決めた約束に 永遠の秘密を交わした
 あの日から繰り返し変わらず 窓の外はもう朝がきている≫


『アイツは必ず理想を成し遂げる男ですきに』
『ワシが自分の信念もって歩いていけば、必ず会えるに決まっとるんです』
『なんちゃーがやない。ちっくとの辛抱じゃ』


≪きっとあなたは
 きっとあなたは
 あなたを超える日がくる≫

≪そんなあなたを そんなあなたを
 今でも想っています≫


夢にまどろむ記憶に声は優しい。
ああ、何てことはない。宇宙色の夢を描いたお前の足は、きっと同じところに向かっている。


「さかもと・・・」


たどり着いた夢の先で同じ景色を見れたなら、あの大きな掌でもう一度撫でてほしい。






















































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