『・・・でしたー。さて、10時になりましたここからは花束のように歌を贈ろうミュージック・リザーブのお時間。お相手は引き続きわたくしKANRININがお送りいたします。
このコーナーではリクエスト・ソングをあなたとあなたの大事な人のためにリザーブ。毎週10時から11時のこのお時間に心を込めてお贈りします。
ご希望の方はお名前ご記入のうえ、お相手のお名前を添えて番組までお送りくださいね。お名前はお互いがわかるようなラジオネームでも結構ですよー。
さて今週のミュージック・リザーブは遠州浜松の銀桂結婚しろさんから・・・』

「銀時ィ〜貴様重いぞ、自分で歩け、おい」
「う〜〜〜飲みすぎた、飲みすぎたわ気持ち悪ィ・・・」
「だからちゃんぽんで飲むのはよせと言ったんだ。水飲みなさい水」
「おうヅラ、ちょっとそこの自販機寄って」

街のどこかでラジオが流れている。そんなことも知らずに、2人して酔っぱらって夜の町を歩いている。歩いている、というか、よたよたと何となく動いている、というか。
火照った体にひんやりとした夜風が心地いい。
ガコン、と落ちてきたお茶は銀時の酔いを幾分醒まして、残り半分で桂の喉も潤した。

「もう歩けるな」
「ん」

街の喧騒から離れてふたり、目指す桂の家まではまだ遠い。

『さてお次のリザーブは、新宿かぶき町のラジオネーム坂田銀時さんから同郷の桂小太郎さんへ・・・ラジオネームですかこれ?いえいいならいいですけど・・・。
それではラジオネーム坂田銀時さんから桂小太郎さんへ、ミュージック・リザーブは大塚愛で【drop.】。』

凭れ掛かっていた腕が離れても、腕が触れるようにくっついて歩いている。夜風に暖かい互いの体温が離れがたい。この、酔っぱらったときの、微妙な暖かさがいいのだ。例えばもともと少し体温の高い銀時の身体は、酔うと桂のよく知る子供のころの体温になる。例えばもともと少し体温の低い桂の身体は、酔うとやっと銀時好みの懐かしい体温に戻る。他の誰かじゃやっぱり少し違和感があって、昔からこの体温が気持ちいいと身体が知っている。


≪君の隣はとっても居心地がよくて 甘くも優しくもあるの
 君といる空気が溶けていくカンジが 何とも言えなくて好きよ≫


銀時がちらりと見やる桂の横顔は柔らかく微笑んでいる。口元は笑っていても目元はきりっと引き結んでいることの多い桂の笑顔のなかで、こんなふうに眉間まで緩めているのは珍しい。
柔らかくなった表情に周りの空気まで花がほころんでいくようで、銀時もつられてふにゃぁと笑った。何だだらしない笑い方をしおって、と、それを見た桂もだらしなく笑う。
笑う桂の額から顎にかけて、ナナメに3本見事な引っ掻き傷が残っている。今日の夕方飲みに行くまえ、抱き上げようとした野良猫にばりばりとやられた傷だ。こんなキレーな顔に傷をつけて、と思ったことは伏せて馬鹿だねと笑えば、桂はちょっと触れたのだぞ、虎穴に入れずんば虎児を得ずだといって満足そうな顔をした。


≪バカなトコが嫌いで
 バカなトコが好きで
 変な感情 愛しくなっていく≫


通り雨があったらしい。しっとりと濡れたアスファルト、街路樹は夜風をいっそう清々しくする。風が強いのだろう上空はちりぢりになった薄い雲をどんどん流して、月が出たり隠れたりした。
月光に流れる雲が照らされて、紫の混じった明るい灰色が空を見上げた銀時と桂を迎えた。
明日は降らんだろうな、と桂が言う。ウチに置き傘なんてないぞと銀時を見た。
あったらあったで、無いなら無いで。桂も銀時が傘などなくても平気で歩き回り、時にその血を流すためにずっと雨に打たれていたことも知っているけれど、それでもいま明日帰る銀時の傘の心配をする。
そういうところがこいつだよなぁ。と、銀時は自分を見る桂の間抜けな引っ掻き傷を眺めた。
何だ、と近くで酒臭い息をこぼす桂にちゅ、と口づけて、桂がきょとんとした拍子にその右手を絡めとる。
お前酒臭いぞ、と桂がまた笑った。オメーもなと銀時が笑う。


≪涙玉 より深く噛みしめて 
 手をつないで 末永く歩いてこう≫


シルエットがふたつくっついて並んでいる。白い月光は銀時の白い髪をきらきらと浮かばせて、桂の黒い髪をくっきりと映し出した。
桂の家まではまだ遠い。
頭上を雲が流れていった。
明日は晴れになるだろう。


≪君の隣は とっても 好きよ。≫









































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