『テメェ明日のラジオ聴きやがれェェェ!!!』

耳をつんざくような怒鳴り声がして、ブツッと電話は切れてしまった。




『・・・でしたー。さて、10時になりましたここからは花束のように歌を贈ろうミュージック・リザーブのお時間。お相手は引き続きわたくしKANRININがお送りいたします。
このコーナーではリクエスト・ソングをあなたとあなたの大事な人のためにリザーブ。毎週10時から11時のこのお時間に心を込めてお贈りします。
ご希望の方はお名前ご記入のうえ、お相手のお名前とメッセージを添えて番組までお送りくださいね。あなたとお相手とのエピソードなどもお待ちしております。お名前はお互いがわかるようなラジオネームでも結構ですよー。
さて今週のミュージック・リザーブは武州横濱のラジオネーム土桂一線越えろさんから・・・』

明日のラジオ、というのが何だかわからなかったので取りあえず借家に残されていた古いラジオ(何と受信できたのだ、これが)を1日中付けている。ラジオといっても番組は色々あるので、そのうちリクエストソングなどを受け付けている番組を選んで聴くことにした。聴け、というからには、何かしら分かりやすいメッセージが発信されているだろうと思ったので。
いつも通りの真選組とのドンパチのあと、党員のひとりが隊士の携帯電話を拾ったと寄越してきたのだ。盗聴器を付けたり、発信機を付けたり、色々悪用の方法はあると思うが、大体内部連絡用の携帯電話を紛失したら発見し次第そのへんの仕掛けは調べるはずだ。何なら買い替えるだろう。つまりあまり「使える」代物ではない。
拾ったという党員もそのあたりは心得ているようで、むしろ困惑した顔でどうしましょうかと言ってきた。ので、とりあえず電話番号だけ控えてあとは戻してこいと指示したのである。
果たして数分後、携帯電話は回収された。
その晩、家の電話からその電話番号にかけたら何と真選組鬼の副長殿の声がして、俺はここで初めて「使える」と思ったのだ。

『今週のミュージック・リザーブは住所秘密のラジオネームマヨラ13さんから、住所不定のテロリストさんへ・・・ラジオネームですよねー?えーとメッセージは、
「来週携帯電話変えます」
・・・機種変してから連絡すればいいんじゃないですかねー?
ではマヨラ13さんからテロリストさんへ、ミュージック・リザーブは斉藤和義で【ポストにマヨネーズ】。』


≪真夜中4時 電話のベル
 眠い目こすり受話器をとる 何にも言わずただ黙ってる
 用があるならまず名前を名乗れ≫


そう。真夜中の無言電話だ。当然、嫌がらせだ。毎回毎回寝込みに踏み込まれるのがいい加減腹立たしかったので。
出るまでひたすら鳴らしてやれば、テメェいい加減にしやがれと怒声が返ってくる。真夜中にたたき起こされるハタ迷惑感が分かったか。いい加減にしやがれはこちらのセリフだ。
尤も、こちらが踏み込まれるときは無言電話で遊んでいる場合ではない。そのうち「夜中に桂を追いかけた日には電話が鳴らない」ということに気づいたのか、土方の対応はこちらにカマをかけたり、何かを探るようなものに変わった。こちらの反応を試して楽しむような気配も。その間も、こちらは無言を貫くのだが。
でも流石にそろそろ、何も言わないのにも飽きてきた。


≪オマエに一言聞きたいことがある
 ポストにマヨネーズ 流し込んだのテメェだろ!≫


いや、それは俺じゃないな。
俺じゃないし、犯人は他にいると思う。例えば貴様の同僚に貴様を舐めくさったようなカオして命を狙ってくる小童がいるだろう?あいつとか怪しいんじゃないかな。知らないけど。
こういうことも、言ってやりたいんだけど、無言電話じゃなくなってしまうからな。何も言わないでいるというのもそれはそれでストレスなのだ。そろそろ何か言ってやろうか。


≪毎日毎晩ご苦労さん おかげ様で歌ができました
 ところで明日早いから モーニングコールを8時に頼むよ
 ・・・どうせ暇だろ!?≫


暇とは心外だな。俺だって日夜攘夷活動やバイトに勤しんでいるのだ。その間に貴様らの相手もしてやらねばならんし、なかなか忙しくしているのだぞ。
そういえば貴様らも朝は早いらしいな。9時前にウロウロしているのをよく見かける。モーニングコールが8時では間に合うまい。何時が定刻か知らんから、とりあえずもう今かけとくか。

プルルルル・・・ピッ

『・・・よォ、聞いたかよ』
『ああ。グッモーニン』
『早ェよ!!!・・・やっぱりテメェだったか。何のつもりだ』
『ふふん、これに懲りたら人の寝込みを襲うような真似はやめることだな』
『ただの嫌がらせかテメェェェェ毎晩行くからな!もう寝かせねーぞ!!』
『情熱的なのは結構だが、その体力別のところに使ったらどうだ』


≪もしもアンタが女なら ひとつお願いしたいことがある
 思いきりエッチでやらしい声 たまにゃ聞かせろよ 
 減るモンでもねェだろう
 ・・・好きなほうだろ≫


好きなワケあるか。大体好きかどうかなんぞ貴様に推察される謂れはないわ。
だがまあそうだな、貴様も健康な成人男子。そういう方向に体力削いでもいいんじゃないか。それでグッスリ眠って俺のところに踏み込めなくなるがいい。

『女子ではないが聞かせてやろうか?減るものでもないからな』

受話器の向こうで、ぐっと息を呑む音がした。想像しちゃったのか馬鹿め。
ツッコミ待ちの冗談のつもりだったのだが。受話器の向こうの気配は暫く黙りこんだあと、挑むような表情でニヤリと笑う。



『・・・・・・聞かせてもらおうじゃねェか』


















































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