inzm | ナノ




会う度にキスとかしてくれるのは愛されてると思うし、すごく嬉しいけど…たまに素っ気ない時はすごく寂しくなる。なまえ先輩のベッドに寝転がって頬杖をしながら先輩の横顔を見つめる。当の先輩は胡座をかきながら太股に置かれた雑誌を見ている、彼女である私がいるのに雑誌の方に目を向けるなんて…悔しい感情が沸々と沸いてくる。

「…先輩」
「ん?」

返事はしてくれた、けど視線は雑誌のまま。また声を掛けてみてもきっと視線が変わる事はないだろう。ベッドから下りてなまえ先輩の隣に座る、ちょっとだけ、先輩に近づけて嬉しかった。いつもはお兄ちゃんが邪魔してゆっくり近寄れないもん。

「…せんぱい」
「んー?」

勇気を出して甘えた声で言っても、やっぱり先輩の返事は変わらなかった。だから思い切って、だけどさりげなく、先輩に寄り添う。先輩と私の肩がくっつきそうな距離で、私はもう一回口を開く。

「なまえ先輩」
「……もう、春奈それ反則…!」
「きゃっ!」

今まで「ん?」としか言ってこなかった先輩が、雑誌を投げ捨て私を抱きしめた。急な出来事だったから顔が熱くなった気がしなくもない。

「あぁー春奈可愛い…可愛い!」
「せ、先輩!急になんですか!」
「ちょっと意地悪するつもりだったんだけど…春奈が可愛いすぎてこっちが意地悪されたなあ」

するつもりはなかったんですけど…、とは言わない事にしておく。って事は今まで素っ気なかったのは先輩の意地悪って事ですか!?

「先輩酷いですっ!私ショックだったんですからね!?」
「本当にごめんって!」

頬を膨らませて怒る私と眉を八の字にして苦笑いする先輩、そして先輩は私の頭をポンっと優しく叩いた。

「じゃあ、仲直りと称して一緒にカップルカフェへ行こうか!」
「またですか?あそこはちょっと恥ずかしいです…」

とか言いつつ、手を繋ぎながら家を出る私達は、正真正銘のバカップルなんでしょうか?



寄り添う