「ごめんなさいいい!!!」
両手で顔を隠して謝りながら走る奇妙な人を3階の窓から確認して、胸をなで下ろした。先輩が男の子の告白を断るのはこれで何回目だったかな。両手両足の指を使って数えてもきっと足りないんじゃないかしら。たまに勢い余って先輩の手をガッチリ掴んで告白する人がいるけど、そのときのわたしの心境、腸が煮えくり返るという言葉がぴったりしっくりくる感じ。そんな汚い手で先輩に気安く触らないで頂戴。本当に、何様のつもりなんだろう。だけどそう思う反面、わたしが男の子ならあんな風に手を握るだけで顔を赤くしてもらえるのかなと考えるとうらやましい気持ちでいっぱいになる。やめて、ずるい、でもうらやましいとぐちゃぐちゃなわたしの脳内、考えて るのはただただ先輩のことだけ。男の子って、やだなあ。きらい。
♀♂
「ふ、ふゆかちゃぁぁあんんん」
はあはあと息を切らせて髪の毛もぐちゃぐちゃで今にも泣きそうな先輩はわたしを見るなりすごい勢いで飛びついてきた。これはわたしだけの特権。だってわたしは先輩の仲の良い女の子の後輩だから。だってわたしは先輩ととても親しい仲の女の子だから、先輩はこうやって抱きついてきてくれる。
「なにかあったんですか?」
うわ、白々しい。今さっきここで告白現場をしっかりこの目で見てたくせにね。それで先輩が泣きそうな顔で「言えない」って小さな声でつぶやくのをわたしは知ってる。今日もおんなじように。それで、わたしは先輩の背中をゆっくりさすって「大丈夫です」って言って、それに先輩はたくさんたくさん泣いてくれて、あああ、うわああああ!今すぐそのピンク色の唇にくいつきたい、赤い頬に流れる涙をなめたい、もっともっと指を絡めて先輩を、先輩が、ほしい、欲しい欲しい欲しいうわああああ「冬花ちゃん」頭がぐちゃぐちゃになっていると必ず先輩は「ありがとう」とわたしのおでこにキスを落とす。
「本当に、冬花ちゃん大好き」
いろんな意味で頭が破裂しそう。こんなに好きで仕方が無いのに先輩もわたしも女の子で、手を繋ぐのも抱き合うのもキスをするのもそれ以上のこともぜんぶぜんぶ男の子とするのが普通なんだって。こんなに先輩のことで頭がいっぱいなのに、おかしい。わたしがおかしいんじゃなくて、きっと世界がおかしいんだ。
「冬花、ちゃん…?」
「いやだったら、言ってください」
先輩は簡単だ。肩をちょっと押せばもうこてんと後ろに倒れてしまうんだから。白いシャツの下で少し浮き出る鎖骨をぺろりと舐めたら先輩の肩がピクリと動いた。
「だめなんですわたし、先輩のことがすきで」
べろり。
唇にざらりと生温かい感触が走って、目を見開けばさっきよりも近付いてきた先輩の顔、押し倒したのはわたしなのに、びっくりして飛び退いてしまった。
「すきって言ってもらえるの、ずっとまってた」
染める