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!冬花の一方通行気味です。


最近なまえさんばかりが、私の視界に映る。
他の人がモノクロなのに、彼女だけが色鮮やかで、とても映えて見える。
そして、なまえさんの周りだけが酷く美しく感じるのだ。

「冬花ちゃん」

それは、美しく耽美的な響きで私の鼓膜を震わせる。
私の耳は本当に、どうかしている。
他の人と同じ言葉を発しているはずなのに、なまえさんの言葉は特別な言葉に聞こえるのだから。
近いうちに耳鼻科に行くべきだ。

そういえば、この間なまえさんと他の人と接している時の
私の表情が嬉しそうだ、と指摘されたのを思い出した。
(まるで、恋をしているみたい。)

「どうしたの?熱でもある?」

返事をしなかった私を心配したのか
なまえさんの冷たい手が、私の額と自分の額に触れる。

そして、触れて体温を確かめた後に少し、眉を顰めた。
その後に、しなやかで色白な手を私の額から離した。
思わず、その手を反射的に掴んでしまいそうになった。


「うわ、あっつい・・熱あるんじゃない?
保健室行ったほうがいいよ、冬花ちゃん。」

ほら、付き添うから一緒に行こう?と私の片方の手を掴む。
その行動に、息が詰まりそうになる。
駄目だ、駄目だ。2人きりなんて恥ずかしくて私にはきっと耐えられない。

「わ、私は、大丈夫だよ?」

熱なんか、ないから。
そう、なまえさんに言うも「駄目だよ。」と
逆に言い返されてしまった。

「だって、私冬花ちゃんが大事だもの!」


その、言葉に私の心臓の鼓動がさっきよりも早くなるのを感じた。
勿論、そんな意味じゃないってわかっているのに。
それに、きっと私の方がなまえさんを大事だと思っている。

「だって、私冬花ちゃんが大事だもの!」
と、いう言葉が私の中で何度も何度もリピートされて
そのたびに私の心臓が早まり、負担がかかる。
きっと、私は早死にだ。
こんなに、心臓に負担をかけているのだもの。

結局、なまえさんの説得で私は保健室に行くことになってしまった。
(・・仮病なんて、使うつもりなかったんだけどな・・。)

「はいはい、横になってね!安静にしなきゃ駄目だよ。」
半ば強制的に、ベッドに寝かされてタオルケットを上からかけられた。
なまえさんがこんなに近くにいて、2人きりで勿論眠れるわけも無くて私はただタオルケットに
包まってなまえさんのことだけを考えていた。