inzm | ナノ



『忍さん、私達ってね
“オカシイ”んだって』


可笑しそうに笑う反面
彼女は涙を流していた


忙しい奴だと
溜め息を付くも
あたしは彼女を抱き寄せる


「で?」


女が恋する相手が
女じゃいけないなんて
誰が決めたのか


社会の曖昧な風潮だろ?


「あんたは
それを真に受けたの?」


『違う、
ただ私が本気で忍さんを
好きだって気持ちを
馬鹿にされたのが
許せなかった』


「ふぅん、それはどうも」


あたしは愛しくなって
瞼に口付けた


「よく考えたら
不思議じゃない?」


パートナーを探して
セックスして子孫を残す


それだけなら、
恋は本能でしてる事になる


だけど、あたし達は仮にも
子孫は残せないし
体を求めてるわけではなく
ただ単に好きなだけ


なら恋は理性でしてるの?


「結局はこの関係が
良いも、悪いも、
恋すること事態が
解らないなら
誰かが決める事じゃない
そういう事だろ?」


『そうだね、』


疲れちゃったと
肩に寄りかかる彼女


あたしも体重を掛けてやる


『忍さんは
悩んだりしない?』


「恋愛における悩みって
全人類に言える事だろ、」


『そうだけど』


「悩んでる隙があんなら
あたしはあんたを
想っててやるよ」


言った後に
恥ずかしくなるが
後悔はしてない


顔が赤いのを
悟られないように
あたしは彼女をまた
抱きしめた


ああ、とか
うう、とか聞こえるけど
それは無視して
あたしは目を閉じた




クダラナイ事に
時間を割くくらいなら
いや、何時だって―…


―あんたの声を、表情を、
あたし自身に
焼き付けていたいよ