inzm | ナノ




イナズマキャラバンの新しい監督。響監督じゃなくて、瞳子監督。綺麗な人ですごく素敵。少し冷たそうな感じがあるけれど、知的そうだし、どこかひきつけられる雰囲気がある。現にあたしがそうで、瞳子監督から目が離せない。

ほんのちょっとの時間がものすごく長く感じられた。見ていた時間は30秒ほどだけど、1時間たったって言われても不思議に思わないくらいに。綺麗過ぎて大変だ。誰がって、あたしが。

「先輩、ほら、キャラバンに乗りましょ!」なんて、すごくわくわくしてる春奈ちゃんに連れられてキャラバンに乗ると、女の子の隣は埋まっていて、かといって男の子の隣というのは、なんとなく気が引けて、しぶしぶ、瞳子監督の隣に、間を空けて座った。

髪がさらさらで綺麗だとか、枝毛なんてなさそうだとか、横顔も綺麗だとか、姿勢がいい、背中痛くならないのかとか、瞳子監督のことばかり考えてしまう。横になんて座るんじゃなかったかなぁ。

ふと、頭の中を埋め尽くしていた人がこちらを向いた。びくりとするあたしに、瞳子監督はなんの反応もせずにすいすいと話しかけた。
名前は?だったり、このメンバーとは長いの?だとか。答えて返ってくる返事はそっけないけど、なぜかそれでもいいと思えた。
一通り、あたし関係の質問を終えると、瞳子監督は少し気まずそうに前に向き直り、小声で言った。

「あの子達の反応から、きっと、私を良く思ってない子も何人かいるみたいだけど・・・・・・。あなたは、どう思ってる?」

どうといわれても、今のあたしの頭の中はパニック状態で、なんて答えればいいのか分からない。
つい、「綺麗な人だと、思います」なんて答えてしまった。よくよく思い出すと恥ずかしい答えだったと、下を向いていると、横からくすくすという笑い声がかすかに、ほんのかすかに聞こえた。

「あなた、おかしな人なのね」

少しだけ、口角をあげて笑う瞳子監督。あたしのほっぺたはなぜか熱くて、ようやく分かった。時間が長く感じたのも、瞳子監督のことばかり考えていたのも、そっけない返事でもいいと思えたのも全部、全部。


あたしが瞳子監督に、惚れてしまっていたからだった。

惚れた