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玲名は頭が良い。
玲名は頼れる。
玲名はサッカーがうまい。

みんなそう言う。
そう言われると玲名はいつもちょっと顔を赤らめながら、そんなことはない、と言う。
その姿か憎たらしいと思う。
みんなに誉められて。
マキだって誉められたいのに。
ねぇ。
マキだって、ちゃんと出来るよ。
マキだって、頑張ってるよ。
マキだって、マキだって、マキだって。

それはおひさま園の頃からずっと思っていたことで、玲名が凄いのは事実で、マキと玲名でも、マキュアとウルビダでも、きっとほかの誰かだとしても変わらないことだった。

玲名はすごい。
ウルビダはマスターランク。
ほかの誰かでも以上に類する何か。

マキはふつう。
マキュアはファーストランク。
ほかの誰かでも以上に類する何か。

必死に追い抜かそうとして、一生懸命になってみたけど結局追いつけない。
玲名はいつもマキの先を行っちゃう。
何回戦いを挑んでも、何回泣き喚いても、結果は同じ。
どうしても勝てない。

でも。

負けてしまって悔しくて泣いてしまうマキに、玲名はいつも優しく手を差し伸べてくれる。
きつく睨むと困ったような顔をするけれど、涙も拭ってくれる。
そんなに優しくて、マキはあんたに嫉妬できないじゃない。
憎たらしい、と叫べないじゃない。
その呆れた顔さえ愛おしいと、思ってしまうじゃない。
どうしてそうやって、そうやって、玲名は。
強い子ぶって、本当は優しくて。
こんなにも愛おしいの。

これは、この気持ちは。


マキは可愛らしい。
マキは努力家だ。
マキと一緒にいると楽しくなる。

みんなそう言う。
そう言われるとマキは満面の笑みを浮かべながら、でっしょー!、と言う。
その姿か憎たらしいと思う。
みんなに愛されて。
私だって愛されたいのに。
ねぇ。
私だって、女の子だ。
私だって、可愛い格好とかしたい。
私だって、私だって、私だって。

それはおひさま園の頃からずっと思っていたことで、マキが可愛らしいのは事実で、玲名とマキでも、ウルビダとマキュアでも、きっとほかの誰かだとしても変わらないことだった。

マキはお洒落だ。
マキュアは可愛い。
ほかの誰かでも以上に類する何かだろう。

私は垢抜けない。
ウルビダは怖い。
ほかの誰かでも以上に類する何かだろう。

私は女の子で、可愛らしくありたくて、愛されたくて、それらしく振る舞いたかったけれど結局出来ない。私はいつもマキのような笑顔を作れずぶっちょうずらだ。
笑顔を練習してみても、可愛い髪型にしようとしてみても、結果は同じ。
マキのような子になれない。

でも。

勝負して負けてしまって悔しくて泣いてしまうマキに、私はいつも優しく手を差し伸べる。
私をきつく睨みながらも、それでも手を取ってくれる。
そんなに可愛らしくて、私はマキに嫉妬できないじゃないか。
憎たらしい、と叫べないじゃないか。
この泣き顔さえ愛おしいと、思ってしまうじゃないか。
どうしてそうやって、そうやって、マキは。
真っ直ぐで、分かり易くて。こんなにも愛おしいのか。

これは、この気持ちは。


これは、この気持ちは。
愛おしいあなたへの嫉妬。
愛おしいあなたへの憧れ。
大好きの中身はいつでもぐちゃぐちゃに混ざってる。


「マキ、次こそはきっと勝ってやるんだから!」
「ああ、楽しみにしている。」

強いあなたに、嫉妬する。
可愛いあなたに、嫉妬する。

「じゃあ明日はお出かけね!」
「え!?」
「マキがお洋服見繕ってあげるの!感謝しなさいよ!」
「あ、ありが、と…。」

優しいあなたに、憧れる。
真っ直ぐなあなたに、憧れる。


この気持ちは、嫉妬と憧れの中間地点。