カウントダウン
光と想いが通じ合ってから、これ以上ないってくらい、私は幸せな日々を過ごしていた。

だけどその一方で、私の中のメインシステムは、今まで積もりに積もったシステムエラーの数々、そして何より、私の中に芽生えたココロの容量に耐えられず、着実に機能停止へと向かって、カウントダウンが始まっていた。


「光、朝だよ?起きて?」

「んん…っ……あと5分…」

「ダーメ!もうご飯出来てるんだから」

「……じゃあ、氷麗がキスしてくれたら起きる…」

「本当?」

「うん、本当」

「じゃあ…」


光の言葉に、私は頭まで被っていた布団を少しだけ捲ると、ベッドの上で未だ目を閉じたままの光にそっと口付けた。


「……これで満足…?」

「ん…おはよ、氷麗」


数秒間重なった唇が離れれば、綺麗な翡翠の瞳が私を捉え、寝起き特有の少し掠れた声で光が私の名を紡ぐ。

それだけで、私の中に幸福感が満ちていく。


「おはよ、光」


光の顔を見つめたまま、光に微笑んで挨拶を返せば、光は再び私の唇にそっと自分のそれを重ねた。


「……今日はこのまま、氷麗と2人でゆっくりしてたいな…」

「ダメ。今日は光のお友達が遊びに来るんでしょ?私、午前中の内に部屋の掃除と、洗濯と、食材の買い出し済ませておかなきゃいけないから忙しいもん」

「買い物?僕も行く」

「?別にいいけど……どうかしたの?たくさん人の居る所は避けたがる光が、一緒に買い物に行くなんて珍しいね」

「たまにはね…(氷麗の事心配だし、少しでも長く氷麗と2人で過ごしたいしね)」

「光?どうかした?」

「何でもない。さてと、そろそろ着替えようかな」

「それじゃ、私ご飯の準備して待ってるね?」

「ん、わかった」


光の部屋を出て、キッチンへと向かう途中、私は軽いシステムエラーを感じて廊下の途中で立ち止まった。


「っ……またエラー…(もう自己修復機能がエラーに追い付かない…。体が、重い…)」


そうは思っていても、光にそれを悟られたくなくて、私は日々動かしにくくなる体を無理矢理動かし、何でもないような風を装って毎日を過ごす。


「(…なんて、結局いつかはバレるんだけど…。………あとどのくらい、光の側に居られるのかな…)」


そんな事を考えながら、私は再びキッチンへと向かって足を踏み出した。



時の流れは残酷なもので…



漸く愛を知り、ココロを持ったのに

私の時間は、着実に終わりへと向かって歩みを進める。

光と同じ時を歩む事は、私には許されない…
to be continued...
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