- プロローグ
- XXXX年、XX月、XX日――
気が付くと、辺り一面は静寂に包まれた白銀の世界。
そこに私の知る人は、誰一人存在しない。
その事実に、“あぁ、私はまた捨てられてしまったのか…”そう思った。
別に悲しくなんてなかった。
だって、私にココロと言う器官は存在しないから。
何故なら私は、人の手によって作られた、ただの機械人形(にんぎょう)に過ぎないのだから……
静寂に輝く夜空から
空を見上げていると、今まで降っていた雪が突然止んだ。
そして次の瞬間、私の視界に映ったのは、あの方を彷彿とさせる綺麗な銀髪と、翡翠の瞳。
あまりにもあの方と酷似したその姿に、私は自身の目を大きく見開いた。
「……あなたは、誰…?」
「…ただの通りすがり。君さ、寒くないの?それとも馬鹿?こんな雪の日に、傘も差さずそんな薄着でボーっとしてたら、風邪引くどころか、凍死するよ?立てる?」
そう言って私に手を差し伸べてくれたあなたに、あの方の影が重なって…
「!……とにかく、僕の家すぐそこだから移動するよ。ずっとここにいたら、またウザいのが集まって来るし」
あなたはそう言うと、私の手を引き立ち上がらせ、自宅へと向かって足を進め始めた。
私の手を掴むあなたの手がとても温かくて、
不思議な事に、機械人形である私の瞳から、また一筋の水が零れ落ちた。
to be continued...