新たな星々との出逢い
あれから暫くし、授業が終わった瞬間、私の元にはクラス中の人が集まり、私は質問攻めにあっていた。


「どうしてこの学校に?」

「日向さんって、もしかしてすっごいお金持ち?」

「綺麗ー…どうやったら、そんなに綺麗になれるの?」

「化粧品とか、どんなの使ってるの?」

「日向さん、彼氏いるんですか!?」

「日向さん、握手してもらってもいいですか!?」

「えっと…あのー…」


この質問の嵐に、私は困ったように苦笑を漏らした。


「はいはい、ちょっと、ごめんよー。」

「え?」

「夏希ちゃん、こっち!」

「え?ちょ、うさぎちゃん?」


そんな中、困った私を見兼ねたのか、うさぎちゃんは人を掻き分け、私の手を引くと、そのまま私を教室から連れ出してくれた。

それから暫くして私達が辿り着いたのは、学校の中庭だった。


「ふー…ここまでくれば大丈夫でしょ!」

「ありがと、うさぎちゃん…助かった。」

「どういたしまして!」

「うさぎちゃん!」


うさぎちゃんが私に向かって微笑んだその時、後ろから彼女を呼ぶ声が聞こえ、私達は振り返った。


「あ、亜美ちゃん!まこちゃん!」

「うさぎちゃん、こんな所でどうしたんだい?」

「いやー、教室の中にいられなくなっちゃって…」


そう言ってうさぎちゃんは困ったように笑った。教室にいられなくなったのは、うさぎちゃんのせいじゃないのに…


「ところでうさぎちゃん、その子は…?」

「あ、この子は日向夏希ちゃん!今日うちのクラスに転校して来たの!」

「そうなんだ。あたし、6組の木野まこと!あたしも元は転校生なんだ。よろしく!」

「あたしは5組の水野亜美。よろしくね、日向さん。」

「1組に転校して来た日向夏希です。よろしく、木野さん、水野さん!あ、それから私の事は、苗字じゃなくて、気軽に夏希って呼んで?」


私がそう言って2人に微笑むと、2人も微笑み返し、こう言ってくれた。


「ええ、わかったわ。」

「あたし達の事も、気軽に名前で呼んでくれて構わないからさ!」

「うん!ありがとう、2人とも!」


私は2人にお礼を言い、微笑んだ。それから私達は4人で軽く立ち話をして過ごし、休み時間が終わる頃になると、次の時間も会う約束をし、授業が始まるギリギリになって教室へと戻った。


「いい人達だね、亜美ちゃんとまこちゃんって…」

「でしょ?あたしの大切なお友達なんだー。」

「そっか……私もなれるかな、2人と友達に…」

「なれるよ、絶対!2人とも、とっても優しい子だもん!」


そう言ってうさぎちゃんは私に微笑んだ。そんな彼女の笑みを見て、私もつられて微笑んだ。


「…うん。ありがとう、うさぎちゃん!」

「授業始めるぞー!」


私がそう言った瞬間、先生が教室の中へと入って来て、私達の会話はそこで打ち切りとなった。

それから今日一日は、ずっとうさぎちゃん、亜美ちゃん、まこちゃん達と共に放課後まで過ごし、私達は一緒に帰路へと着いた。

その帰り道で、うさぎちゃんはぼやきにも似た呟きを、ポツリと漏らす。


「あーあ……せっかく学校が終わったのに、まーた、レイちゃん家でお勉強かぁ…」


そんな彼女の呟きに、まこちゃんと亜美ちゃんがすかさず言葉を掛けた。


「仕方ないだろ?あたし達、受験生なんだから。」

「そうよ、うさぎちゃん。受験まであと1年もないのよ?今勉強しておかないと、絶対に後悔するわよ?」

「うー……でも、お勉強きらーい!!それに、せっかく夏希ちゃんと仲良くなったんだから、夏希ちゃんと遊びたい!」

「ふふ……私はそれでも構わないけど…?」


うさぎちゃんの言葉に、私はクスクスと笑いを漏らしながらそう答えた。そんな私の言葉に、うさぎちゃんは凄い速さで食い付いて来た。


「本当!?」

「うん。でも、例えそれで受験に失敗しても、私は責任取れないからね?」

「うっ……そりゃそうだけど〜…!せっかくお友達になったんだから、もっといっぱいお話したいー!」

「…その言葉はすごく嬉しいけど、私と遊んだせいで、うさぎちゃんの受験に響いても困るし…」

「んー……そうだ!それじゃあ、夏希ちゃんも勉強会に呼んだらどうだい?」


ごねるうさぎちゃんに、まこちゃんはそんな提案した。このまこちゃんの提案に、亜美ちゃんが真っ先に乗り、私を勉強会へと誘って来た。


「そうね。お勉強は大事だもの…。夏希ちゃん、もしこの後予定がないなら、一緒にどうかしら?」

「え…?うん…私は別に構わないけど……本当に私も参加していいの?」


私のこの問い掛けに、皆は微笑み、頷いた。


「…ありがとう!それじゃあ、私もお邪魔するね?」

「やったー!夏希ちゃん!これでもっとお喋り出来るね!」


私の言葉に、うさぎちゃんは喜び、飛び跳ねた。そんなうさぎちゃんに亜美ちゃんはすかさず突っ込みを入れた。


「うさぎちゃん、お喋りするんじゃなくて、お勉強をするのよ?」

「う゛……は〜い…」


そんな彼女達のやり取りを見て、私はクスクスと笑いを漏らした。



―――――



あれから私は、亜美ちゃんとまこちゃんの2人に集合場所の住所を聞いて、3人と別れた。それから一旦家に帰り、着替えを済ませた私は、勉強道具を持って再び家を出る。


「(…あの3人、不思議な力を感じた…。特に月野うさぎ……彼女は、一体……。…彼女達が敵、味方のどちらにしろ、暫く様子を見た方がいいかもしれないわね…)」


私はそんな事を考えながら、集合場所へと向かって歩みを進めた。それから暫く歩いて、私は指定された住所の場所へと着き、目の前に伸びた石段を見上げた。


「…火川神社…?」


私は背丈くらいの石に彫られた文字を読み、首を傾げた。


「ここで合ってる……よね…?」


私はそんな不安を胸に抱きながらも、石段を登り、神社へと向かって足を進めた。そして階段を登り切ると、そこには、私を待つうさぎちゃん達の姿があった。


「あ、来た来た!おーい、夏希ちゃーん!」


私の姿を見付けた3人が、私に向かって手を振った。私はそんな3人の元へと駆け寄り、安堵の息を漏らした。


「よかった…。下に神社って書いてあったから、場所本当にあってるか不安になっちゃった…」

「ふふ…そうね、ごめんなさい。ここの名前までは、伝えていなかったものね。」

「ここにはね、あたし達のお友達で、火野レイちゃんって子が住んでるの!」

「レイちゃんはここで巫女さんやってて、レイちゃんの占い、よく当たるって評判なんだよ!」

「へー…そうなんだ!あ、でも…全然知らない私が突然お邪魔したら、迷惑じゃない…?」

「あ、それなら大丈夫!もうレイちゃんには、夏希ちゃんの事話してあるからさ!」


不安交じりにそう問い掛けた私に、まこちゃんが笑顔でそう答えてくれた。


「そっか、それならいいの。ありがとう、まこちゃん!」

「お礼なんていいよ。あたし達、友達だろ?」

「!うん…!」


まこちゃんの言葉が嬉しくて、私は笑顔を漏らした。


「それじゃあ、そろそろ行きましょう?レイちゃん達が待ってるわ。」

「(レイちゃん達…?まだ他に誰かいるのかな…?)」


亜美ちゃんの言葉に、私達は揃って家の中へと入った。そして少し歩き、ある部屋の前に着くと、うさぎちゃんが勢いよく部屋の扉を開ける。


「おっ待たせー!さっき話してた夏希ちゃん、連れて来たよ!」

「こんにちわー…」


私はうさぎちゃんの後ろから、ひょこっと顔を出すと、ちょっとだけ控え目に部屋の中にいる人達に挨拶をした。そんな私を見て、部屋の中にいた2人の女の子は、目を見開き、信じられないと言った顔を見せた。


「うっそ…」

「こんな綺麗な子が、うさぎなんかの友達だなんて…」

「ちょっと、レイちゃん!どう言う意味よ!?」

「あんたとは大違いだって言ってんのよ!」


そしてうさぎちゃんは、レイちゃんと呼ばれた子と、睨み合い…って程でもないけど、言い合いを始めた。


「あのー…」

「さ、夏希ちゃん、入って入って!」

「え?あ、うん…!ねぇ、うさぎちゃん達、放っておいていいの?」

「あー、いいのいいの!いつもの事だから!」


私が言い合いをする2人に戸惑いながらも部屋の中へと入ると、金髪に赤いリボンがよく似合う可愛い女の子が、座布団を用意し、私に座るように促した。


「ありがとう!えーっと…」

「あたしは、愛野美奈子!芝園中3年!よろしくね、夏希ちゃん?」

「こちらこそよろしく、美奈子ちゃん。」


そう言って私が彼女に微笑むと、言い合いに負けたのか、うさぎちゃんが泣き始めた。


「うわ〜ん!レイちゃんのバカぁああ!!」

「ふん、あんたには言われたくないわよ!」


そんな彼女達に、私は苦笑を漏らし、泣き始めてしまったうさぎちゃんを宥める。


「もう…ほら、泣き止んで?チョコあげるから。」

「チョコ!!」


私がそう言うと、うさぎちゃんは驚くべきスピードで泣き止んだ。


「(…単純と言うか、何と言うか…)」


そんなうさぎちゃんを見て、皆は呆れたような表情を見せ、私はクスクス笑いを零した。そして鞄の中からチョコを1つ取り出すと、目をキラキラと輝かせたうさぎちゃんに手渡した。


「ありがとう、夏希ちゃん!」

「ふふ…どういたしまして。」


私はうさぎちゃんを宥めた所で、うさぎちゃんの隣にいた黒髪の少女へと目線を移した。


「あなたが、火野レイさん…ですよね?」

「あ、はい!あたしが、火野レイです!」

「突然お邪魔してしまって、ごめんなさい…」

「いえ、全然!気にしないで下さい!」


私に急に話し掛けられ、緊張なのか、テンパっているのかはわからないが、敬語で話す彼女に、私は小さく笑いを零すと、自己紹介を始めた。


「日向夏希です。今日十番中学の、うさぎちゃんと同じクラスに転入して来たの。これからよろしくね?」

「あたしは、火野レイ。T・A女学院中等部の3年!こちらこそ、仲良くしましょう。」

「…それじゃあ、話も落ち着いた所で、そろそろ勉強会を始めましょうか。」


私達の自己紹介が終わった所で、亜美ちゃんはそう皆に声を掛けた。その一言に、私達は頷くと、勉強会とは名ばかりの、お喋りが始まった。



―――――



あれから数時間が経ち、勉強会と言う名のお喋りを終えた私達は、それぞれ自宅へと向かって歩き始めた。

その帰り道、私は火川神社に向かう時同様、考え事をしながら家に向かって歩みを進めていた。


「(レイちゃんと美奈子ちゃんの2人からも、不思議な力を感じた…。…彼女達は一体…)」


私がそんな事を考えながら、1人夜の街を歩いていると、チャラチャラとした、いかにも頭の悪そうな数人の男が、私に声を掛けて来た。


「おっ、彼女可愛いじゃん!ねぇねぇ、今1人?俺らと一緒に遊ばない?」


しかし私はそんな男達を無視…と言うか、気付かずに家に向かって歩みを進めた。しかし、その男達の横を通り過ぎようとした時、私はその中のリーダーの男に、腕を掴まれ、引き止められてしまった。


「おーっと、無視はいけないな〜…」

「は?何なんですかあなた達?って言うか、触んないでもらえます?気色悪い……セクハラで訴えますよ?」

そう言って私は腕を掴んでる男を睨み上げた。しかし、男はそんな私を見ておもしろそうに笑った。


「はは!気が強い所も可愛いじゃん!ねぇ、俺らといい事して遊ばない?」

「はぁ…人の話聞いてた?離してって言ったんだけど。それから、残念だけど、あなた達と遊んでる無駄な時間なんて私にはないの。わかったら早く腕離しなさいよ!」

「俺らと遊んでくれるなら、離してあげてもいいけど?」


リーダーの男がそう言うと、それを取り巻くように立っていた男達が、下卑た笑いを漏らし、見下すように私を見た。そんな男達に、私の怒りも抑え切れなくなり、私の腕は怒りでわなわなと震え出した。



「だから…人の話を…っ…」

「何?震えちゃってんの?かっわいー!大丈夫、別に痛い事はしないからさ〜。」

「聞けって言ってんでしょ!!誰があんた達みたいなクズ共と遊ぶか!!って言うか、いい加減腕離せって言ってんでしょ!?」


そう言うと私は腕を掴んでいた男の急所を思いっきり蹴り上げた。そして痛みに耐えられず、私の腕を離し、しゃがみ込んだ男を、今度は私が見下すように見下ろし、ドスの利いた声で言う。


「くたばれ、この下衆。次近付いて来たら、これだけじゃ済まさないからね。」

「っ…このアマ…!」


そして私は男達に背を向け、再び歩き出そうとした。しかし、私の態度に腹を立てた男は、痛みに耐えながらも背を向けた私に、後ろから殴り掛って来た。


「おっと…!ちょっと、か弱い女の子に、それも後ろから殴り掛って来るなんて、どう言う神経してるの?」


男のパンチを避けた私は、避けられた事でバランスを崩し、地面へと倒れそうになっていた男を蹴り飛ばし、見下ろした。そんな私を見て、数人の取り巻きの男達も私に殴り掛って来る。


「ちょっと…!街のど真ん中で、こう言う事、止めてくれる?めちゃくちゃ目立っちゃってんじゃないのよ…!」


私は男達の拳を避けながらそう言うと、殴り掛って来た内の1人の鳩尾に一発決めた。更にその流れで、もう1人の男の鳩尾に、今度は蹴りを一発入れ、最後の1人の腕を捻り上げた。そんな取り巻き達を見て、リーダーの男は、顔を青ざめさせ私を見た。


「…次近付いて来たら、これだけじゃ済まさないって、私忠告したわよね…?」

「ひっ……す、すいませ…っ…!」


男は恐怖に後退り、冷や汗をたらたらと垂らしながら私に謝って来た。しかし、そう簡単に怒りが治まらない私は、男を冷やかな目で見下ろし言った。


「…私に気安く触れた事、後悔させてあげる…」

「ひぃ…っ…!」


私はそう言って満面の笑みを浮かべると、腕を捻り上げていた男をリーダーの男に向かって蹴り飛ばし、止めに男達顔を思いっきり殴ってやった。もちろんグーで。


「女だからって嘗めてるからこう言う目に遭うのよ。よく覚えておきなさい。」


そして私は、痛みに悶える男達を放置して、今度こそ家へと向かって歩き出した。



―――――



「全く、近頃の男共は…!」


その帰り道、私は先程の男達の事をぶつぶつとボヤキながら帰っていた。


「私を誰だと思ってんのよ!これでも太陽王国、シャイン・モナルのプリンセスよ!?この私に触れていいのは…っ…!」


そこで私は言葉を途切らせ、怒りで荒々しく歩いていた歩を停め、顔を俯かせた。


「私に触れていいのは……ウラヌス、だけなんだから…」


私はそう呟くと、愛し合っていたにも関わらず、戦いのせいで、結ばれる事なく死別してしまった愛しい人を想い浮かべ、空に懸かる月を見上げた。


「……ウラヌス…あなたに、会いたい…。(夢の中で聞いた言葉通りなら、この時代に転生し、この町のどこかにいるはずなのに…っ)…ウラヌス、ネプチューン…あなた達は一体、どこにいるの…?」
to be continued...
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