戦士の運命(3/3)
ファラオ90の中へと入り込んだ私は、すぐにサターンの元へと向かった。


「サターン!!」

「!プリンセス…!!どうして…!?」

「言ったでしょう?私も一緒に戦う、あなたをこの悲しい運命から解放するって…」

「危険です!!私の事はいいから、あなたはすぐに…!」

「戻らない!私も戦うわ。仲間が…私の大切な仲間が、この星の為に戦ってるんですもの……プリンセスの私が戦わないわけにはいかないでしょ?それに、守られてるだけなのは、性に合わないの」

「!……あなたと言う人は、本当に…」

「さあ、さっさと倒して、皆の所に帰るわよ…!!」

「はい…!!」


私の言葉に再び沈黙の鎌を構え、ファラオ90を攻撃し始めたサターンの隣で、私はロッドを掲げ、言霊を唱えた。


「我らが父、光と業火の星、太陽よ!我は、シャイン・モナル第一王女、プリンセスエリカ!我が名の下に、邪を祓い、星の戦士を悲しき運命から解き放て!星を守る少女を、新たなる生命へと導け…!ブライトイノセンスパワー!!」


私がそう唱えた瞬間、ロッドの先に付いたクリアトパーズが眩い光を放ち、ファラオ90を内側から浄化し始めた。それと同時に、ロッドの先から放たれて光がサターンを包み込み、彼女を沈黙の戦士から、破滅と誕生の戦士へと転生させた。


「…何て温かい光………ありがとう、シャイン…」


サターンは微笑みながら小さくそう呟くと、光と共に赤ん坊の姿へと変わった。もう一度この時代で、新たな人生をやり直す為に…。


「よか、った……無事…転生、させられ……て…」


私はそこまで口にすると、膝から崩れ落ちるように、地面へと倒れた。タリスマンの力なしに、無理に力を解放したせいで、私の命でもあるクリアトパーズが光(ちから)を失ったのだ…。


「!夏希ちゃん…!!」

「…救世、主……」


地面へと倒れた私が、意識を失う直前の最期の瞬間、私は、この星を守ってくれる、本物の救世主に出逢えた。そんな気がした…


「(よかった……救世主が、見付かって……。…これでもう…この世界は、大丈…夫……)」


そこで私の意識は途絶えた。聖杯の力を得たファラオ90の浄化、セーラーサターンの転生に、今持てる力の全てを使い果たした私は、そのまま永い眠りへと付いた。



―――――



あたしがファラオ90の中へと入り、漸く2人を見付けたその時、ファラオ90は夏希ちゃんの力により浄化され、サターンも転生の為の準備に入っていた。つまりは、何もかもが遅かったのだ…


「!夏希ちゃん…!!」

「…救世、主……」


サターンが夏希ちゃんにお礼を言い、光に包まれ、無事転生を果たしたその瞬間、夏希ちゃんはゆっくりと、崩れ落ちるように倒れた。


「夏希ちゃん!!夏希ちゃんしっかり…!お願い…っ……目を開けて…!夏希ちゃん…!!」


あたしはすぐに彼女に掛け寄り、彼女の体を抱き起こした。しかし、何度声を掛けようとも、どれだけ体を揺さぶろうとも、夏希ちゃんが再び目を開く事はなかった。


「…っ…星は救われ、ほたるちゃんも助かった……なのに…っ、どうして…!夏希ちゃん…っ……!!」


動かなくなった彼女の体を抱きしめ、頬を伝った涙が、彼女の命でもあるクリアトパーズへと落ちた。その瞬間、輝きを失ったクリアトパーズが再び輝きを取り戻し、動かなくなった夏希ちゃんの体を包み込んだ。


「!これは…」


光に包まれた夏希ちゃんの体は、静かに、ゆっくりとあたしの腕の中から消えて行った。再びこの世に、転生して来る為に…


「…夏希ちゃん……また、会えるよね…?」


夏希ちゃんの体が消える直前、あたしが涙ながらそう問い掛ければ、返事が返って来るはずなんてないのに、夏希ちゃんが返事を返してくれた気がした。


“きっと、またいつの日か……”


次の転生に向けて眠りに就いた夏希ちゃんを見送り、あたしは彼女が命懸けで守ってくれた転生後のほたるちゃんを腕に抱き、皆の待つ元の世界へと帰った。


「(あなたが帰って来るその日まで、この星は、あたし達が守るから…)」
to be continued...
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