- epilogue〜別れの時〜
- デス・バスターズとの戦いが終わって、早数日…
あの日、沈黙からこの世界を救うと言う使命を達成した僕達に、新たな使命が出来た。彼女、夏希が命懸けで救った、この小さな生命を守ると言う使命が…
「ほたるちゃーん!ミルクだよ〜」
そう言って希望はほたるをそっと抱き上げると、ソファーに腰を下ろし、赤ん坊となったほたるに、ゆっくりとミルクを飲ませ始めた。そんな希望の姿を見て、みちるが小さく笑みを零した。
「ふふ……希望ったら、もう立派なお姉さんね…」
「ああ…。元々あんまり手の掛からない子だけど、希望のおかげで随分と助かってる…」
「ふふ…そうね…」
僕達はそんな会話をしながら、この部屋にある少ない荷物を箱に纏め、この町を出る準備を進めた。その時、僕達のいるこの部屋に、来客を知らせるベルが鳴り響いた。
「あら、誰かしら…?はるかの部屋に、私達以外の来客なんて珍しいわね…」
そう言いながら、みちるが客人を迎えに玄関に行けば、少しして玄関の方から賑やかしい声が聞こえて来た。
「「「「「「こんにちわー!」」」」」」
「ちびうさ!と、うさぎさん達も…!」
「えへへー…のんちゃん!遊びに来ちゃった!」
「「「「「お邪魔しまーす」」」」」
おちびちゃんの言葉に、そう続くお団子達に小さく笑みを零し、僕は彼女達を迎え入れた。
「…いらっしゃい、子猫ちゃん達…」
そう言って迎え入れた僕の足元や、部屋のあちこちに散らばる段ボールを見て、お団子が問い掛けて来た。
「あれ…?……はるかさん、引っ越すんですか…?」
「ああ……僕達の役目は終わった。明日、僕達はこの町を出て行く…」
「「「「「!?」」」」」
「そんな急にっ…!」
突然の僕の言葉に驚くお団子達に、みちるが言葉を続けた。
「…私達がこの町に来たのは、私達のプリンセスを見付け、デス・バスターズからこの星を守る為…。デス・バスターズの脅威から救われた今、私達は、彼女から新たな使命を授かった…」
「僕達はその使命を全うする為、この町を出て、一からやり直す事にしたんだ…。彼女が…夏希が帰って来た時に、胸を張って、迎えられるように…」
「はるかさん…みちるさん……」
お団子が小さく僕達の名前を呟いたその時、ミルクを飲ませ終えた希望が、ほたるを腕に抱いたまま、おちびちゃんに近付いた。
「ちびうさ…のんもね、明日未来に帰るの…。未来のシャイン・モナルがどうなったのか気になるし、のんは大して役に立てなかったけど…この時代のママのおかげで、この星を救い、未来の世界を守ると言う使命は達成された…。これ以上、私がここにいる理由はない…」
「のんちゃん……」
「…そんな顔しないで?未来に帰れば、またいつでも会えるじゃない…」
「うん……」
そう言いつつも、悲しそうな表情を浮かべ、顔を俯かせてしまったおちびちゃんに、希望の腕の中のほたるが手を伸ばし、そっとおちびちゃんの頬に触れた。
「あーっ…あ、ぅー!」
「ほたるちゃん……?」
「ほら…ほたるちゃんだって、元気出してって言ってるよ?」
「のんちゃん……うん…!」
希望の言葉に、再び笑顔を見せたおちびちゃんに、ほたるも嬉しそうに笑い、声を上げた。その様子を静かに眺めていた僕とみちるに、お団子が再び声を掛ける。
「はるかさん、みちるさん…」
「あたし達…確かにあなた達に比べたら、1人1人の力は弱いけど…」
「あたし達も、夏希が帰って来るその日まで…」
「絶対、この星を、守ってみせます…!」
「夏希ちゃんが帰って来た時、胸を張って“おかえり”って言えるように…」
「……ありがとう、皆…」
「はるか……私達、彼女達の事、過小評価し過ぎてたわね…」
「ああ…そうだな……」
彼女達の言葉に、僕達は微笑を浮かべ、そう小さく呟いた。
「(夏希…君の帰る場所は、僕達が守るから…。だからまた会うその日まで、暫くお別れだ……愛してる、永遠に…)」