新たな始まり(1/2)
土萠創一にとり憑き、操っていたダイモーン、ゲルマトイドを倒した私達は、暫くして建物の最深部であろう、ある一室に辿り着いた。そこには、どうやって中に入ったのかは不明だが、セーラームーンと、沈黙の救世主であるミストレス9、その奥には、異次元空間へと繋がった巨大な機械が見えた。


「漸く見付けたわよ…!」

「この星の未来の為…!」

「愛する人達を守る為!」

「僕達はお前を倒す!!」

「!待って!!シャイン、ウラヌス、ネプチューン、サン…!!」


ミストレス9を視界に捉え、戦う構えをとった私達を前に、セーラームーンがミストレス9を庇うように、私達の前に立ちはだかった。


「そこを退け!セーラームーン!!そいつはもう、ほたるなんかじゃない…!!」

「嫌!!もう誰も、犠牲になんかさせない…!!」

「っ…お前のその甘さが、この結果を招いたのに……まだわからないのか!!」

「わからないわ!!どうして…どうして誰かを犠牲にして、世界を救わなきゃいけないの…?誰かを犠牲に何かを守ったって、そんなの…本当の意味で救ったなんて言えないじゃない…!!ほたるちゃんは絶対に助ける!あたしが、守ってみせる…!!」

「ほたるを助ける…?あははははは!無駄だ…ほたるは消滅した…」

「!?そんな…っ…」


セーラームーンの絶望的な顔を見て、ミストレス9は楽しそうに声を上げて笑った。


「マスターファラオ90、今暫くお待ちを…」

「!ファラオ90!?沈黙の救世主が、最後の敵なんじゃないの…!?」

「っ…どうやら、違うみたいね…(何…この巨大な負の力は…っ…どんどん近付いて来る…!)」

「…セーラーシャイン、太陽系を統べる貴様なら感じているだろう…このタウ星系の中を、今正に近付いて来る、我らデスバスターズのマスター、沈黙の支配者であるファラオ90の力を…」

「っ、それが…?」


私の声に、ミストレス9は再び笑みを零すと、私達に背を向け、異次元空間に向き直った。


「この機械に私が聖杯を取り込めば、ファラオ90は出現し、この世界は沈黙の時代を迎える……太陽系は、我らデスバスターズの物となるのだ!」

「そんな事させるものか…!ワールド・シェイキング!」

「ディープ・サブマージ!」

「アジュール・ブレイズ!」


ミストレス9の言葉に、ウラヌス、ネプチューン、サンが一斉にミストレス9に向けて技を放った。3人の技が1つの力となり、威力の増したそれが、ミストレス9へと向かって行った。


「!ダメぇええええ!!」

「!セーラームーン…!!」

「っ…きゃあぁあああ!!」

「御苦労…」


ウラヌス達の放った技を、セーラームーンは自らが盾になる事により、ミストレス9…ほたるちゃんの体を守った。


「セーラームーン!!」


私はすぐにセーラームーンに掛け寄り、吹き飛ばされ、地面へと伏してしまったセーラームーンを支えた。


「大丈夫?セーラームーン…?」

「っ…シャイン……ありがとう…」

「友達を助けるのは当たり前、なんでしょう…?」

「シャイン……」

「心配しないで…?ほたるちゃんもちびうさちゃんも、私が必ず助けてみせるから…」

「!っ…あたしも、諦めない…!2人は絶対に助けてみせる…!!」


そう言うとセーラームーンは、私に支えられながらも何とか立ち上がり、再びミストレス9に向き合った。


「セーラームーン、あなたの力借りるわよ…。さあ、ミストレス9!ほたるちゃんとちびうさちゃんを返してもらうわよ…!!」

「無駄だと…!っ…何、だと……ぐっ…止めろ…出て、来るな…!!」

「セーラームーン!!」

「うん!クラシス・メイクアップ!!」


私の声にセーラームーンは、聖杯の力を使ってスーパーセーラームーンへと変身した。そして私達はロッドを取り出すと、それをほたるちゃんの意識が戻り、悶え苦しむミストレス9へと向けた。


「ほたるちゃん、今助けるから…!シャイン・ハート・キュア・エイド!」

「レインボー・ムーン・ハート・エイク!」

「ぅあぁあああああ!!止め、ろぉ…!!っ…うぁ…あぁあああああ!!」

「「「!!」」」


私達の放った浄化技により、ミストレス9は滅び、消え去った。しかし、ミストレス9が滅びた事により、外でバリアを張っていたダイモーンや、ファラオ90を導く機械の制御が出来なくなり、力の暴走が始まった。


「!不味い…!力の暴走だわ…!!このままじゃファラオ90が…!」


私がそう声を漏らした瞬間、異次元空間を作り出していた機械のガラスにひびが入り、瞬く間に大きな爆発音と共に、私達は建物ごと吹き飛ばされてしまった。


「っ…しまった…!」

「そんな…」

「ファラオ90が…」

「っ…もう地球は…この星はお仕舞いなの…?」


痛みに耐えながら、何とか体を起こした私達の目に映ったのは、異次元空間から遂に姿を現したファラオ90だった。聖杯の力を取り込んではいないものの、その姿から感じ取れる力は絶大なもので、今までのダイモーンや、沈黙の救世主であるミストレス9の比ではなかった。そんなファラオ90の姿を目の前に、ウラヌス、ネプチューン、サンの3人は、絶望の色を浮かべた表情を見せた。そんな中、セーラームーンがポツリと声を漏らした。


「まだ…っ…終わらせない…」

「そうよ…っ…まだ、終わってなんかない……この星は…皆は、私が…守る…!!」


私とセーラームーンが痛む体に鞭を打ち、足元をふら付かせながらも何とか立ち上がったその時、私達の目の前に、淡い光と共に、ある戦士が姿を現した。


「プリンセス…」

「「「!!」」」

「セーラー、サターン…」


私がポツリと漏らした言葉に、サンとセーラームーンが驚きの声を上げた。


「!あれ、が…」

「沈黙の、戦士…?」

「…セーラームーン、セーラーシャイン、私を…ちびうさちゃんを助けてくれてありがとう…」


驚く2人を余所に、サターンは小さく微笑むと、私とセーラームーンを見つめ、静かにお礼の言葉を口にした。


「っ、ほたるちゃん…!」

「私はもう、ほたるではありません…。この世界からあなた方を失うわけにはいかない今、世界を沈黙から救えるのは、私だけです…。後は任せて…?」

「…残念だけど、その意見は却下。あなたを1人になんか、絶対にさせないわよ…!」

「!シャイン!?何を…!」

「そうよ…あなただけに、辛い思いなんてさせないわ…」

「!セーラームーンまで…」

「っ、ファラオ90を倒すには、その中心部に入り込んで、一気に消滅させなければいけないんですよ!?そんな危険を、あなた方2人に冒させるわけには…!」


私達の発言に驚くウラヌス、ネプチューン、サン、サターンに向かって微笑むと、私達は揃って口を開いた。


「大丈夫。心配しないで…?」

「絶対3人の元に帰って来るから……だから、信じて…?私達を…」

「シャイン…」


私はウラヌスに向かってもう一度微笑むと、サターンへと視線を戻し、彼女を真っ直ぐ見つめながら再び口を開いた。


「もう1人で抱え込まないで…?ごめんね…辛い運命を背負わせて…。今度こそ、私が絶対、あなたを救ってみせるから…」

「!プリンセス…」

「ほたるちゃん…私達が全力であなたのサポートをするわ…。だから…絶対、一緒に生きて帰ろうね?」

「うさぎさん……っ…ありがとう…」


私達の言葉に薄っすらと涙を浮かべ微笑むサターンに、私達は微笑み返すと、ウラヌス、ネプチューン、サンの3人に一言声を掛け、サターンと共に、ファラオ90の中心部へと侵入した。
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