世界を賭けて(2/2)
「よし…準備出来た!乗ってくれ!」


はるかの声に、私、みちる、せつなの3人は、はるかの愛機、天王丸へと乗り込んだ。そしていざ無限学園へ向かって飛び立とうとしたその時、突然後方座席の扉が開き、セーラーサンが天王丸へと乗り込んだ。


「待って…!私も…私も一緒に連れてって!!」

「サン!……いいの?一度飛んだら、もう引き返せないわよ…?」

「いいの!確かに怖いけど、私は…大好きなパパとママを……ちびうさやほたるちゃんを救いたい…!!ほたるちゃんは確かにセーラーサターンの生まれ変わりかもしれない…けど、ただあいつらに利用されてただけだった…!ほたるちゃんは何も悪くない!だから…!!」

「サン…(やっぱり親子ね…考える事が、夏希とそっくりだわ…)」

「…希望」

「!ママ…」

「絶対、ちびうさちゃんもほたるちゃんも、助けてあげようね?」

「!うん…!!」


私の言葉に、サンは漸く笑みを見せると、後部座席に座っていたネプチューンとプルートの間に腰を下ろした。


「さあ、出発だ…!」


そして、ウラヌスがそう言葉を漏らすと同時に、私達は無限学園へと向かって飛び立った。



―――――



暫くして、無限学園近くの上空までやって来た私達の目に映ったのは、無限学園である建物を囲むように、天辺に星型の大きな穴が空いたピンク色のバリア。


「何だ…?」

「…だたのバリアではない事は確かね…」

「あの穴から入れるかな?」

「多分…」


ウラヌスは星型の穴からバリア内に入るべく、天王丸の高度を少し下げ、バリアへと近付いた。そこで漸く、私達はピンク色のバリアの正体を掴んだ。


「っ…!」

「ダイモーン…!」


しかし、気付くのが遅かった私達は、襲い来るダイモーンに為す術なく、天王丸はあっと言う間にダイモーンに囲まれ、攻撃を受けてしまった。


「「「「「ぅ、あぁあああああ!」」」」」

「「「!!」」」

「不味い…っ…!!」


大量のダイモーンから放たれる電撃に、機械である天王丸が耐えられるわけなどなく、エンジンは壊れ、速度計や高度計などから煙が上がり始め、次の瞬間には、天王丸は大きな爆発音を上げた。しかし…


「!これは、一体…」

「プルート…!」


本当なら今の爆発と共に死んでいたはずの私達は、自分が生きている事への疑問を感じつつ、サンの声にプルートのいる後部座席があった方へと振り向いた。


「プルー、ト…?」

「一体、何を…?」

「時間を止めました。さあ、行って下さい!今の内です…!」

「君は、これ程の力を隠し持っていたのか…」

「いいえ…これは時の守人である私が、決して冒してはならない最大のタブーなのです」

「最大の、タブー…」

「あなたは、どうなるの…?」

「………もし、もし本当の救世主に会えたら…」

「!会えたら…」

「プルート…!」


私がプルートを呼んだその次の瞬間、私達は光に包まれ、無限学園内に降り立った。そしてそれとほぼ同時に、上空では天王丸の爆発が起こり、天王丸は炎と共に砕け散った。


「っ……!」

「そんな……」

「せつな、さん……」

「嫌…っ…嫌ぁあああああ!!」


私は泣きながら地面に崩れ、プルートを守れなかった悔しさに、地面を思いっきり殴った。


「…っ…(何も出来なかった…皆を守るって決めたのに…なのに…!)」

「シャイン…」

「ママ…」


私を心配するネプチューンとサンの声に、私は涙を拭うと、拳を強く握り立ち上がった。


「っ…大丈夫……行こう!」

「シャイン…」

「?何?ウラヌス…」

「絶対にこの星を…未来の世界を救おう…。僕達を守ってくれた、プルートの為にも…」

「!うん…!!」


私達は互いの顔を見て頷き合うと、沈黙の救世主がいるであろう学園最奥部へ向かって足を踏み出した。



―――――



学園内へと足を踏み入れて数分後、私達の目の前には気味の悪い人形らしき物が、廊下の奥までいくつも並んでいた。


「!何これ…」

「これはね、私が作った器だよ…」

「「「「!!」」」」


私の呟きに不気味な笑い声と共に現れた土萠創一に、私達は警戒の色を強め、構えをとった。


「天王はるかくん、海王みちるくん…ここへ立ち入るのは校則違反だよ…。そちらのお嬢さん達も、学園への部外者の侵入は禁止しているんだがね…」

「今更学園もくそもないでしょ…!それよりも、そこを退いて下さるとありがたいんですけど…?」

「ふははははは…っ……それは出来んな…ここを通りたければ、この私を倒して行くんだな…!」


そう言うや否や、土萠創一の体から、彼を操っていたと思われるダイモーンが姿を現した。


「!やっと正体現したわね…!フレイム・バースト!」

「ぅぉおおおおお!」


土萠創一の中から現れたダイモーンは、私の攻撃に呆気なく吹き飛んだ。しかし、飛び散ったダイモーンの残骸が、廊下に大量に並んでいたあの不気味な人形の中へと入り込み、一斉に私達を襲って来た。


「無駄だ!お前達の技は全て分析済みだ…私には勝てないのだよ…!」

「さて、それはどうかな…!」

「ディープ・サブマージ!」

「ワールド・シェイキング!」

「アジュール・ブレイズ!」

「フレイム・バースト!」


私達は四方にそれぞれ技を放ち、襲い来る人形を次々と倒して行った。


「っ…キリがないな…!」

「どうやら、本体を倒さなきゃダメなようね…っ…!」

「でも…!どうやってこの中から、本体を見付けて倒せばいいの…!?」

「っ……!そうだ!タリスマンを…深海の鏡(ディープ・アクア・ミラー)を使えば…!!」

「!そうか…深海の鏡は真実を暴く鏡…!ネプチューン!!」

「やってみるわ!」


そう言うとネプチューンは深海の鏡を取り出し、敵を鏡に映し始めた。


「!な、何事だ!?げっ…」

「いたわ!あいつが本体よ!」

「さあ、覚悟しなさい…!シャイン・ハート・キュア・エイド!!」

「う…っ…ぅあああああああ!!」


私の放った浄化技により、今度こそ本当に土萠創一にとり憑いていたダイモーンを倒す事が出来た私達は、再び最奥部へ向かって足を進めた。


「(待ってなさい!沈黙の救世主、ミストレス9…!必ずあいつを倒して、この星を、ちびうさちゃんとほたるちゃんを、救ってみせる…!!)」
to be continued...
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