世界を賭けて(1/2)
沈黙の救世主が目覚めてしまった。それも私達の目の前で…

私達は止められなかった。沈黙の救世主の覚醒を…

救世主が見付かっていない今、世界が沈黙に晒されるのは時間の問題。

だけど、私は諦めない。最期まで、世界の為に、愛する人の為に戦うと決めたから…!



―――――



無限学園内から脱出した私達は、形成を立て直す為、一時撤退し、ここから一番近いはるかのマンションへと戻って来た。しかし、沈黙の救世主覚醒のショックが大きい為か、私達の間に会話はなかった。

そんな中、はるかが突然壁を殴り、悔しそうな声を上げた。


「くそっ…!!沈黙の救世主が目覚めてしまった…っ…!目の前にいたのに、僕達はそれを止められなかった…!」

「はるか…」


俯き、悔しさに震えるはるかに、みちるが近付いた。そんな2人に向かって、私は静かに口を開いた。


「…まだ間に合う」

「「え…?」」

「…まだ間に合うって…ママ、どう言う事?」

「…確かに沈黙の救世主は目覚めてしまった。だけど、聖杯はまだこちらの手の内にある……まだ私達にだって、勝機はある…!!」

「っ…でも、救世主が…!!」

「そうだ!聖杯がこちらの手にあったとしても、肝心の救世主がいないんじゃ意味は…!」


私の言葉に、はるかと希望が反論の言葉を口にした。しかし私は、そんな2人に向かって微笑み、一言声を掛けた。


「信じて?」

「「え…?」」

「必ず世界を救えるって…。…私は諦めない…救世主がいなくたって、最期の最後まで、この星と…愛する人達の為に戦う。太陽系のプリンセスの名に懸けて、必ずこの星を…太陽系を守ってみせる…!」

「夏希…」

「ママ…」

「……そうね……やってもいないのに、諦めるのはよくないわね…」

「!みちる…」

「…はるか、前に言ったでしょう?私は、私が守りたい者の為に戦うって…それがどんなに辛い事でも、どんなに厳しい物になろうとも、少しでも可能性がある限り、私は諦めない……何を犠牲にしたって、私は夏希と夏希の笑顔を守りたい」

「!……そう、だな……僕達は今まで、夏希と夏希の笑顔を守る為だけに戦ってきた…。それがどんなに苦しい状況でも、決して諦めずに…」

「パ、パ…?」

「諦めちゃいけないんだ…!前世のような悲劇を繰り返さない為にも、絶対にこの星を…夏希を守る!!」


みちるの言葉に、再び戦う意志を取り戻したはるかに、私はギュッと抱き付いた。


「…もう一緒に戦ってくれないのかと思った…」

「そんなわけないだろう…君を1人では行かせないさ…」

「…ありがとう、はるか…」


私がはるかの胸に顔を埋めそう呟けば、はるかも私をきつく抱きしめ、優しくそう囁いてくれた。それから少しして私達は離れ、希望に真っ直ぐ向き合うと、希望に問い掛けた。


「希望?あなたはどうする?…怖いのなら、ここで戦いを止めてもいい。あなたはまだ子供なんだから、無理に私達に付いて来なくてもいいの…。でももし、希望に戦う勇気があるのなら、この世界を…希望達の世界を救う為に、私に力を貸して欲しい…」

「私…っ…」


私の問い掛けに、希望は震えるくらい拳を強く握り、顔を俯かせてしまった。


「(…酷な事かも知れないけど、ここは希望に、自分で選んでもらわなきゃ…)」


私がそんな事を考えていると、静かにリビングの扉が開き、せつなが部屋の中へと入って来た。


「夏希、私も共に戦わせて下さい。スモール・レディを助ける為に、あなた方の力を私に貸して下さい…!」

「いいよ…一緒に行こう、せつな…」

「…ありがとう…」


私がせつなに向かってそう微笑めば、せつなも小さく笑い返してくれた。そして私は一度だけ希望を見ると、再び前を向き、真剣な表情で口を開いた。


「行こう…!この星を守る為、愛する人を守る為に、最後の戦いへ…!!」


私のこの言葉に、はるか、みちる、せつなの3人が頷いた。そして私達は変身を済ませると、急いでマンションの屋上へと向かった。



―――――



『怖いのなら、ここで戦いを止めてもいい。あなたはまだ子供なんだから、無理に私達に付いて来なくてもいいの…。でももし、希望に戦う勇気があるのなら、この世界を…希望達の世界を救う為に、私に力を貸して欲しい…』


誰もいなくなった部屋で1人、希望は私が言った言葉を思い出し、小さく声を漏らした。


「……怖い、よ…。怖いに決まってる…っ…沈黙の救世主が目覚めて、世界を救う救世主は見付かってないなんて、最悪の状況なんだもん………でも…っ…大好きなママとパパを…大切な友達を失う方が、もっと怖いよ…!!」


そう言うと希望は、はるかの部屋を飛び出し、私達のいる屋上へと向かって全速力で走り出した。


「(お願い…っ…間に合って…!!)」
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