太陽系を統べる者
あるビルの地下駐車場で、うさぎを守る為、ダイモーンと戦闘していたタキシード仮面は、ダイモーンの攻撃によって、ガラスの中へと閉じ込められてしまった。

そんな彼を見て、うさぎは涙を流しながら悲痛な声を上げ、ガラス付けにされ、カオリナイトとダイモーンに人質として捕まってしまった彼を見つめた。


「!タキシード仮面が…!」

「ちっ…あれじゃ、こちらも下手に手を出せないな…」

「どうするの、シャイン?」

「っ……」


私はネプチューンの問い掛けに、どう動くのがベストな選択なのか、頭をフル回転させて必死に考えた。

その間にも、泣きながら彼の名前を呼ぶうさぎを、カオリナイトは小さく笑いを漏らしながら見下ろした。


「そこまでよ!」

「「「「セーラー服美少女戦士、ただいま参上!」」」」

「!」

「現れたわね…月野うさぎにセーラー戦士達よ、タキシード仮面を助けたかったら、東京タワーに来なさい…。それがあなた達の死に場所よ…」


カオリナイトは彼女達にそう言い残すと、ガラスの中に閉じ込めたタキシード仮面を連れて、この場から消え去った。


「東京タワー…」

「どうやら、次の行動は決まったみたいだな…」

「ウラヌス、今日車で来た?」

「あぁ…この近くに停めてある。」

「それじゃ、すぐにその車取りに行くわよ!それで偶然を装って、うさぎをに接触するの!うさぎのあの性格なら…きっと、タキシード仮面を助けに行こうとするはず…!」


そう言って走り出した私の言葉に頷いたウラヌスとネプチューンは、私の後に続き、地下駐車場を後にした。



―――――



あれから私達は、人目がない事を確認してから変身を解き、急いではるかの車が停めてある場所まで向かった。


「はるか、急いで!うさぎの事だから、すぐに助けに行こうとすると思うの!」

「わかった!」


車に乗り込んだ私達は、急いでさっきいた場所まで戻った。そこへタイミング良く出て来たうさぎに、何気ない風を装って声を掛けた。


「うさぎ…?こんな所でどうしたの?」

「!夏希ちゃん…っ…そうだ!お願い、はるかさん!乗せて…!!」

「…いいけど」

「!ありがとう!!」


はるかの言葉に、すぐにうさぎは車に乗り込むと、はるかに目的地を伝え、はるかはその言葉に従って、車を走らせ始めた。

それから暫くして、みちるは何気なさを装う為に、うさぎに問い掛けた。


「そう言えばうさぎ、彼とは仲直りしたの…?」

「え……う、うん……」


そんなみちるの問い掛けに、うさぎは歯切れの悪い答えを返すと、そのまま顔を俯かせてしまった。


「…お団子頭……人間って、結局誰かを犠牲にして生きてる…。…そう思わないか?」

「え……?…何の事ですか…?」


突然のはるかの問いに、うさぎは疑問の声を漏らした。そんな彼女に、私が解り易く、それを説明した。


「例えばね…うさぎの大切な人が、うさぎを庇って危険な目に遭ってしまったとしたら…」

「!」

「…そんな時、きっとその人は…自分の事なんて構わず、あなたに安全でいて欲しいと思うでしょうね…」

「それが友人の場合もあるし、親の場合だってあるだろうさ…。皆、誰かを踏み付けにして生きてるんだ…」


私の言葉に続くように、みちる、はるかの2人も口を開いた。そして私は、戸惑ううさぎに、最後に問い掛けた。


「うさぎは、そうは思わない…?」


私のこの問いに、うさぎは驚いた表情からハッと我に返り、少しだけ間を空けて私の質問に答えた。


「っ…でも、踏み付けている人達はそれでいいかもしれないけど…踏み付けられている人達はどうなるの!?犠牲になる人達の事は、考えなくてもいいの!?私は、他の人達を見過ごして、自分だけ助かろうなんて出来ないわ!…そりゃ、1人じゃ無理かもしれないけど…皆で力を合わせれば、きっと犠牲者を出さずに済む方法も見付けられるはずよ!!」

「…うさぎって、本当に優しい子だよね…」

「え…?何…?ごめん…よく聞こえなかったんだけど…」


私がボソッと小さく呟いた言葉が聞き取れなかったうさぎは、私に何を言ったのかと聞き返して来た。そんなうさぎに、私は嘘の笑みを張り付けると、うさぎに向かって言った。


「うさぎが大好きって言ったの!…ごめんね、急に変な事聞いて…」

「あ、ううん…!気にしないで…」


それから、東京タワーに着くまでの間、私達の間に会話はなかった。



―――――



暫くして、私達の乗った車は東京タワーの前へと着いた。はるかは車を路肩に停め、エンジンを切ると、車を降りたうさぎへと問い掛けた。


「ここでいいのか…?」

「はい。どうもありがとう。」


そう言うとうさぎは、一度だけ東京タワーを見上げると、私達に背を向け、東京タワー内部へと向かって走り出した。そんな彼女の後姿を見送りながら、みちるが真剣な声で私に最後の問いを投げ掛けて来た。


「……本当にいいのね?夏希…。…あの子、死ぬのよ?」

「…言ったでしょ?世界を救う為なら…世界を沈黙から守る為には、多少の犠牲は、已むを得ないって……っ…」


そう言って、私は2人に見えない位置で、掌に爪が食い込み、血が滲むのも気にせず、強く拳を握り締めた。


「…わかったわ…。それじゃ、私達も行きましょう!」


私とはるかは、みちるのその言葉に頷くと、車を降り、物陰に隠れ、人目がない事を確認すると変身した。


「ウラヌス・プラネットパワー!」

「ネプチューン・プラネットパワー!」

「ブライトイノセンスパワー!」

「「「メイクアップ!」」」



―――――



変身を終えた私達は、非常階段を使って展望室のある階まで一気に駆け登った。


「ハァ…ハァッ……きっつ…!」

「何だシャイン、もうバテてるのか?これくらいでバテるなんて、運動不足なんじゃないか?」

「ハァ…ハァッ……ウラヌス、あなたが…体力バカ、なのよ…っ…」

「失礼だな…体力バカだなんて…」


地上150mの距離を一気に駆け上がった事で、流石に息を切らす私とネプチューンに、ウラヌスは息一つ乱さず、そう言って退けた。


「ハァ…ハァ…ッ……ありえない…この距離を駆け上がって、息一つ乱さないなんて…」

「ッ…ハァ……本当…」


それから暫くして、漸く呼吸を整えた私とネプチューンは、物陰に隠れ、先に1人でうさぎ達の様子を窺っていたウラヌスの元へと向かった。


「ウラヌス、どんな感じ…?」

「今は、交渉中…ってとこかな…」


ウラヌスの言葉に、私とネプチューンも陰から少しだけ顔を覗かせ、うさぎ達の様子を窺った。


「あたしはどうなってもいい!だから、タキシード仮面様には、手を出さないで!!」

「…わかった。セニシエンタ!」


カオリナイトは、うさぎの言葉に了承すると、ダイモーンにうさぎのピュアな心を奪うよう命じた。その命令に従い、ダイモーンはうさぎに向かってピュアな心を取り出そうと構えた。


「お前のピュアの心、今度こそ頂くでシエンタ!」


その言葉と同時に、ダイモーンはうさぎに向かってピュアな心を取り出す為攻撃を放った。


「っ…ぅあぁあああああ!」


そして暫く苦しんだ後、うさぎは再びダイモーンによってピュアな心を抜き取られてしまった。


「!行くわよ、ウラヌス、ネプチューン!」


私の合図に、ウラヌス、ネプチューンは頷くと、敵の手にうさぎのピュアな心が渡る前に、それを奪い取った。


「!お前達…!」

「久しぶりねおばさん…モトクロスレース場以来かしら?」

「っ…小娘…!」

「ウラヌス、心の結晶はいかが?」


ネプチューンの言葉に、ウラヌスは持っていたうさぎの心の結晶を調べた。そしてウラヌスは、驚きの表情と共に口を開いた。


「!違う、これはタリスマンじゃない!」

「何!?それ程の輝きを放ちながら、タリスマンではないと言うのか…!?」

「そんなはずは…!」

「…どうやら、輝きの強さは、純粋さのバロメータであって、タリスマンかどうかは関係ないようね…」

「あぁ…また無駄骨だったな…」

「そうね…。…でも、よかった…」


私はウラヌスの言葉に、ホッと胸を撫で下ろした。そしてうさぎにそっと心の結晶を返すウラヌスと見て安堵の笑みを浮かべると、すぐに彼女の元へと駆け寄った。


「…っ……」

「大丈夫…?」

「!あなた達が、あたしを…?」

「よかった…あなたが無事で…」


若干目に涙の幕を張り見つめる私を、ウラヌスはそっと抱き寄せた。


「よかったな、シャイン…」

「っ…うん…!」


ウラヌスのその言葉に、私は笑顔を浮かべ頷いた。



―――――



うさぎが無事なのを確認し、喜び合う私達に、カオリナイトは一瞬悔しそうな表情を浮かべるが、すぐに余裕のある笑みを取り戻し、再び口を開いた。


「っ…ふん……例えタリスマンでなくても、あなたの命は頂くわよ。月野うさぎ…いいえ、セーラームーン!」

「!」

「「「!?」」」

「な、何だって…!?」


カオリナイトの発した言葉に、私達3人は驚愕の表情を浮かべ、目の前のうさぎを見つめた。そんな私達を見て、カオリナイトが余裕の笑みを零しながら、勝ち誇ったような顔を見せたその時、別の方向から聞こえた声に、私達は一斉にそっちに視線を向けた。


「その子はセーラームーンじゃないわよ!」

「!お前は…!」

「「「「!!」」」」

「罪もない女の子のピュアなハートを付け回し、あたしと間違えるなんて失礼千万、針千本!月に代わって、お仕置きよ!」

「セーラームーン…!?…しかし、何か違うような…」


そのお決まりの台詞と共に現れたセーラームーンに、カオリナイトは驚きの表情を一瞬見せるが、すぐにセーラームーンの違和感に気付き、疑うような目で彼女を見つめた。


「何よ!?人の完璧なへ…っんぐぅ!?」

「「「正真正銘、本物よ!!」」」


セーラームーンが何か言おうとした所で、他の戦士が彼女の口を塞ぎ、彼女の言おうとしていた言葉は遮られてしまった。


「(…違う…。必死に誤魔化そうとしてるけど、あれはセーラームーンじゃない…。…となると、カオリナイトの言った通り、やっぱりうさぎが……?)」


その場にいる全員が偽物のセーラームーンへと視線を向ける中、私だけは周りに怪しまれないようにしながら、目の前の少女へと視線を向けた。

その間にも話しは進み、カオリナイトは悔しそうに手に持っていたブローチを見つめ、怒りに震えた。


「…飛んだ茶番だったな…」

「そうね…それじゃ、私達は失礼させて頂くわ。行きましょう、シャイン。」

「…うん…」


私はネプチューンの言葉に頷くと立ち上がり、その場を後にしようと踵を返したその時、カオリナイトの言葉と同時に、窓ガラスが割れ、展望室の天井が破壊された。


「そうはいかないわよ…!じっくりお相手して頂くわ…」

「いい度胸じゃない、おばさん…。おばさん程度の力で、私が倒せるとでも思ってるの?」

「また言ったわね…っ…この小娘…!」

「お止しなさい、シャイン…」

「そうだ…タリスマンがないとわかった以上、長居は無用だ。行くぞ。」


そう言うとウラヌスは私の手を引き、ネプチューンと共にその場から飛び去った。しかし、すぐに私達の後を追って来たカオリナイトは、その姿を現すなり、迷わず私へと攻撃を繰り出して来た。

私はそれを軽々と避けると、カオリナイトに向かって構えを取った。それに続き、ウラヌス、ネプチューンの2人も同じく戦闘態勢に入る。


「仕方ない…。そんなに決着を付けたいと言うのなら…」

「受けて立ちますわ!」

「覚悟しなさい!おばさん!!」

「ふん…いつまでその減らず口を続けていられるかしら…」

「いつまでだって、続けてやるわよ……!フレイム・バースト!」


カオリナイトは私の放った技を避けると、再び迷う事なく私へと向かって来た。そんなカオリナイトに対し、私もカオリナイトに向かって行くと、彼女の攻撃を片手で防ぎ、もう一方の手で、奴の顔面目掛けて拳を繰り出した。


「!?貴様…っ…顔を狙って…!?」

「あら、残念。外しちゃった…」


互いの攻撃を防ぎ、距離を取った私とカオリナイトは、再び睨み合いながら言葉を交わした。


「「シャイン…!」」

「油断しないで…あいつ、思ってたより出来る…」


私を心配して、私の元へと駆け寄って来た2人に、私は小さくそう言葉を掛けた。その言葉に、ウラヌスとネプチューンは警戒の色を強め、私を庇うように立つと、再び構えを取った。



―――――



一方で、展望室に残った内部系戦士達は、ダイモーンを倒し、無事タキシード仮面の救出に成功した。

しかし、そのすぐ後に、カオリナイトの仕掛けが作動し、彼女達のいるタワー上部で爆発が起こった。この爆発により、セーラームーンは何かを思い出したように、タキシード仮面から、自分の守護戦士達へと視線を移した。


「!そうだわ、皆!シャイン達を助けに行かなきゃ!!」


セーラームーンのこの言葉に、その場にいた内部戦士は驚きの表情を見せ、彼女に疑問の言葉を発した。


「何で!?」

「あんな奴ら、放っときゃいいんだよ!!」

「ダメよ!それに、あの人達、あたしを助けてくれたもん!悪い人達じゃないのよ!!」

「「「「セーラームーン…」」」」

「よし、いっちょ頑張りますか!」


このヴィーナスの言葉に、他の戦士達は頷くと、私達がカオリナイトと戦闘している場所へと移動した。


「っ…くそ…!」

「ウラヌス、退いて!シャインフレイム…」

「!」

「レイザー!」


私はウラヌスが退いたの確認すると、すぐにカオリナイトに向かって技を放った。しかしカオリナイトは、それを軽々と避けると、高笑いしながら私達へと余裕の笑みを見せた。


「大口叩いておいて、あなた達の力はその程度なの?だったら、期待外れね…。もっと楽しめると思ったのに……これで、おしまいにしましょ!」

「お待ちなさい!!」

「!」


カオリナイトが私達に向かって再び攻撃を仕掛けようとして来たその時、頭上から聞こえた制止の声に、私達は一斉に上を見上げた。


「全国のお茶の間に、楽しいテレビ番組を送るタワーを爆破するなんて許せない!視聴者の皆さんに代わって」

「「「「「お仕置きよ!」」」」」

「漸く来たわね…」


カオリナイトはセーラームーン達の姿を捉えると、そう言葉を漏らした。そんな彼女の言葉を受けながらも、セーラームーン達は私達のいる作業用の足場の上へと降りて来ると、カオリナイトへと視線を向け、挑発するような言葉を掛けた。


「さあ、どうするの?いつものように逃げる?」

「ふん…何の為にあたしが、あなた達をここに呼び寄せた思っているの?」


そう言うとカオリナイトは、どこからかガラスの靴を取り出し、それに独自に開発したと言うダイモーンの培養液を掛けた。するとガラスの靴はどんどんその姿を変化させ、最終的には剣の形となった。


「このガラスの靴に、この培養液を合わせると、セニシエンタと同じ力が…備わるのよ!!」


その言葉と同時に、カオリナイトは剣を振ると、ガラスの破片を私達に向かって放って来た。


「!皆、私の後ろに隠れて!!シャイン・シールド!」


私は皆にそう声を掛けると、手に持っていたロッドを翳し、シールドを張った。その声にウラヌスを始めとする戦士達やタキシード仮面は大人しく従い、急いで私の後ろへと移動した。

「セーラー戦士達のガラス像が並べば、教授もきっと喜んで下さるわ…」

「ガラス像が欲しけりゃ、あんたがなればいいでしょ!このクソババア!!」

「っ…ババ……小娘…!!貴様だけは、絶対に許さない!!」


カオリナイトは私の暴言に怒り、再びその剣を振り、ガラスの破片を飛ばして来た。私はそれを再びシールドを張る事で防ぐと、カオリナイトに向かって行った。

カオリナイトの剣をロッドで受け止めながら、ロッドを手に持っている為、主に足を使ってカオリナイトに攻撃を仕掛けた。


「ちょっと!何避けてんのよ…っ…!」

「貴様こそ!さっさとガラス像になってしまえ…!」

「…すごい…あんな激しいぶつかり合いなのに…」

「カオリナイトの攻撃を全て受け止めるだけじゃなくて…」

「一瞬の隙を見付けては、攻撃し返してる…!?」


まだまだ余裕を見せながらカオリナイトとの攻防を繰り返す私を見て、セーラームーンを始めとする戦士達は、驚愕の表情と共にポツリとそんな事を漏らした。そんな彼女達の言葉に、ウラヌスとネプチューンが口を開いた。


「…まだまだ…シャインの本気は、こんなもんじゃない…」

「彼女が本気を出したら、星1つくらい、余裕で吹き飛ぶわよ?」

「「「「「!?」」」」」

「彼女は、一体…」


タキシード仮面のこの呟きに、何の気まぐれか、ウラヌスとネプチューンが答えた。


「…彼女は、この太陽系最強のセーラー戦士、セーラーシャイン…」

「太陽王国、シャイン・モナルと、この太陽系を統べるたった1人のお方……私達の大切な、可愛いプリンセス…」


ウラヌスとネプチューンはそれだけ答えると立ち上がり、未だカオリナイトとの攻防を続ける私を見つめ、小さく笑みを受けべると気の抜けた会話を始めた。


「…ネプチューン、今僕が戦いに手を出したら、シャイン後で怒るかな?」

「さあ…どうかしら…?」

「…疲れたし、早く帰りたいんだけどな…」

「なら、手を出したらいかが?」

「怒られる時は、一緒に怒られてくれる…?」

「…そうね…今回だけは、怒られてあげるわ。私も早く帰りたいもの…」

「…決まりだな。シャイン!!」

「ちゃんと避けるのよ!!」

「OK…!」


私は2人の言葉に、一瞬の隙を突いて、カオリナイトの背後に回り込むと、カオリナイトを拘束した。


「ワールド・シェイキング!」

「ディープ・サブマージ!」


そして私は、ウラヌス、ネプチューンの攻撃が当たるギリギリまで、カオリナイトを抑え込むと、技が当たる直前の所で離れ、私はウラヌス達の元へと戻った。



―――――



ウラヌス、ネプチューンの放った技は、私が奴をギリギリまで抑え込んでいた事もあり、カオリナイトへと直撃した。それを見たセーラームーンが声を漏らした。


「…やったの…?」


そんな彼女の疑問の言葉に、煙の向こうで陰が動いたのを確認した私は、否定の言葉を口にした。


「!まだよ…!」


私のこの言葉に、その場にいた全員が警戒の色を強め、フラフラと立ち上がるカオリナイトへと視線を向けた。


「っ…この、小娘共…!よくもやってくれたわね……死ねっ!!」

「誰が死ぬもんですか…!フレイム・バースト!」


私はカオリナイトが剣を振り放って来た、当たった物全てをガラス付けにしてしまう、ガラスの破片を全て巻き込むようにして、カオリナイトへと技を放った。

既にウラヌス、ネプチューンの技を食らい、フラフラなカオリナイトはそれを避ける事が出来ず、私の技を食らうと同時に、先程自分の放った技をもその身に食らった。


「何!?きゃああああああ!」

「「「「「!!」」」」」

「っ…そんな、まさか…教授ー!」


そしてカオリナイトは先程のタキシード仮面と同じく、自らが放った技によりガラスの中に閉じ込められ、自分で自分の身を滅ぼした。


「終わったわね…」

「あぁ…」


ウラヌスのこの言葉とほぼ同時に、私の技の影響で、ガラス化し、壊れやすくなっていた鉄骨が何本か落下し、足場の一部を破壊すると、カオリナイトのガラス像と共に夜の闇の中へと消えて行った。


「…ウラヌス、ネプチューン、行きましょう。」

「「あぁ(ええ)…」」


カオリナイトのガラス像が落ちて行ったのを確認した私は、ウラヌス、ネプチューンの2人に声を掛け、セーラームーン達に背を向けた。


「!待って!!」

私達がこの場から立ち去ろうとしたその時、セーラームーンの制止の声で、私達は一度足を止め、彼女達の方へと振り返った。


「さっきは、カオリナイトの攻撃から、私達を守ってくれて、どうもありがとう…」

「…どういたしまして…」

「シャイン、行こう…」

「うん…」


カオリナイトの攻撃から庇った事へのお礼を言うセーラームーンに、私は口元に小さく笑みを浮かべ、彼女にそう言い残すと、ウラヌス、ネプチューンの2人と共にこの場から飛び去った。

あれから地上まで一気に下りて来た私達は変身を解き、近くに停めていたはるかの車に乗り込んだ。そして彼女達が下りて来る前に、私達はその場を立ち去った。


「カオリナイトは倒したけれど、肝心のタリスマンは見付からなかったわね…」

「うん……でも、うさぎが、タリスマンの持ち主じゃなくてホッとした…」

「それは言えてるな……タリスマンじゃないのは残念だったけど、夏希の悲しむ顔を見なくて済んだ…」

「あら、昼間夏希を悲しませて、泣かせた張本人が何を言ってるのかしら…」

「っ…それは……!」


みちるの鋭い突っ込みに、運転中のはるかは返す言葉もなく、困ったような表情を見せた。そんな2人のやり取りを見て、私は初夏の夜風を感じながら、小さく笑いを零した。
to be continued...
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