勘 違 い
モトクロスレースがあった日から数日、衣替えの時期を迎え、私達の制服は冬物から夏物へと変わった。

そんな6月のある放課後、私は学校まで迎えに来てくれたみちると、途中まで一緒に帰る約束をしていたうさぎを引き連れ、はるかとの待ち合わせをしている場所へと向かって歩みを進めた。


「んー…っ…いい天気!太陽の光浴びるのも、久しぶりだなー…」

「いつもは雨雲に隠れちゃって、全然見えないもんねー。」

「ふふ…そうね。でも、仕方ないわ。今は梅雨の時期ですもの…」

「あーあ……早く、梅雨明けしてくれないかなー…」

「残念だけど、まだ暫くは無理ね…。この間梅雨入りしたばかりでしょう?」

「ちぇー…」


私がそんな声を漏らした時、何かを思い出したように、うさぎがみちるにある事を問い掛けた。


「そう言えばみちるさん、何で今日ははるかさん一緒じゃないんですか?」

「久しぶりに風を感じたいんですって。…本当、困った人…」

「…へ……?」


みちるの予想外の返答に、うさぎは素っ頓狂な声を漏らした。そんな彼女に、私はすかさずフォローの言葉を続けた。


「要は、待ち合わせ場所と時間だけを伝えて、バイクに乗って1人でどこか行っちゃったのよ。でしょ?みちる。」

「ええ…」

「へー……夏希ちゃん、あれだけでよくわかったね。」

「まあ、昔っからこんな感じだし……何て言うか…慣れ、みたいなもんかな?」

「へー…そっかー。」


私の言葉を聞いて、うさぎは小さく納得の声を漏らした。その後私達は、アイスを食べたり、ウインドウショッピングをしたりと、あちこち寄り道しながら待ち合わせ場所へと向かった。


「それじゃ、うさぎ。私達はここで。」

「うん!また明日ね、夏希ちゃん!みちるさんもまた!さようなら!」


待ち合わせ場所である喫茶店の前に着いた私達は、うさぎに別れを告げ、彼女と別れた。そして喫茶店の中へと足を進めると、みちると2人でお茶を楽しみながらはるかの到着を待った。

それから暫く経った頃、漸くはるかが喫茶店へと現れた。店員のお姉さんに案内されて、私達の所へやって来たはるかは、迷わず私の隣に腰を下ろすと、アイスコーヒーを注文し、私達に遅れた事を謝った。


「遅れてすまない…」

「珍しいわね、はるかが遅刻だなんて…何かあったの?」

「夏希の友達の…ほら、お団子頭とよく一緒にいる子で、黒髪の…T・Aに通ってる女の子いるだろ?」

「T・A女学院って事は…レイ?」

「あぁ、その子だ。」

「その子がどうかしたの?」

「いや、寝不足の状態でフラフラ歩いてるの見かけて…危なっかしかったから、バイクで家まで送ったんだ。そしたら、たまたま外にいた彼女のお爺さんに捕まってね…」


はるかは「本当、逃げるのに苦労したよ…」なんて言いながら、運ばれて来たアイスコーヒーを口にし、苦笑を漏らした。


「ふふ…それはお疲れ様。でも…」

「それとこれとは別!自分で時間と場所指定しておいて、私達を待たせた罰として、ここははるかの奢りね?」

「それくらいで遅れた事を許してもらえるなら、喜んで払うよ…」


そう言うとはるかは私を抱きしめ、額にそっとキスを落とした。


「会いたかった…」

「…昨日も、一昨日も、その前も……毎日会ってるじゃない…」

「そうだけど…もっと夏希と一緒にいたいって思っちゃいけないか…?」

「それは…ダメじゃ、ないけど…」


私ははるかの言葉に、微かに顔を赤く染めながらも小さくそう漏らした。そんな私を見て、はるかは小さく笑みを零し、抱きしめる腕の力を強めた。


「この戦いが終わったら、一緒に暮らそう…。そしていつか…」

「いつか…何…?」

「…まだ秘密。いつか必ず言うから、その日まで待ってて?」

「その約束、ちゃんと守ってくれる…?」

「あぁ、必ず…」

「…わかった。それじゃあ、その日が来るまで待ってる…」

「ありがとう、夏希……愛してる…」


そう言うとはるかは、私の左手を取り、薬指の付け根にそっと口付けた。



―――――



あの後、喫茶店を出た私達は、それぞれ一旦家に帰り、邪魔な荷物を置き、制服から私服へと着替えると再び集合した。

そして車で来ていたはるかの車に乗って、はるかの気の向くまま、私達はドライブを楽しんでいた。


「ねぇ、これからどうするの?」

「そうだな…夏希は、どこか行きたい場所とかないのか?」

「んー…私は2人が一緒なだけで満足だし、特には…。…みちるはどう?」

「そうね……私も特にないのだけれど…」

「それじゃ、せっかく久しぶりに晴れたんだ。このまま暫く、僕の気が済むまでドライブでいいかな?」


はるかのこの問いに、私とみちるは頷き、はるかの気の済むまで、暫くの間ドライブを楽しんだ。その後、適当なレストランで夕食を済ませ、私達は十番町へと戻って来た。


「わー…月が綺麗…」

「本当…今日はちょうど満月なのね…」

「…そこの公園にでも入って、暫く月見でもするか。」

「うん!」


はるかの提案で、私達は近くにあった公園で、時期はかなり早いけど、お月見をする事にした。

路肩に車を停めたはるかは、エンジンを切ると私達に先に行くように言った。


「はるかはどうするの?」

「僕は飲み物でも買って来るよ…それとも、一緒に行くか?」

「行ってもいいけど、みちるを1人にするのも…」

「あら、心配してくれてるの?」

「そりゃ、するよ。みちるの事、大切に思ってるもん…」

「なら、やっぱり夏希はみちると一緒にだな…。飲み物を買ったら、すぐに追い掛けるよ…少しの間だけ待ってて?」


はるかはそう言って、助手席に座る私にそっと口付けた。


「ん、わかった…待ってる。」

「話しは付いたみたいね…それじゃ、行きましょう?」

「うん。」


私達は車を降り、はるかは飲み物を買いに、私とみちるは公園の中へとそれぞれ足を進めた。


「この辺でいいかな…?」

「いいんじゃないかしら。月もよく見えるし、そこからは夜景も見られるし…」

「それじゃ、ここにしよっか!」

「ええ…」


私とみちるは、公園内にある階段を登り切った所にあるベンチへと腰を下ろした。


「みちる、せっかくヴァイオリン持って来たんだし、みちるのヴァイオリン、聴かせてくれない?」

「いいわよ。その変わり、あなたの歌声も聴かせてくれるかしら…?」

「歌声って…みちるの演奏に合わせて歌えばいいの…?」

「そう…昔は、よくやっていたでしょ?」

「うん……いいよ。久しぶりにやろっか!」


そして私の返事を聞いたみちるは、持って来ていたヴァイオリンを手にすると、手早くチューニングを済ませ、階段の所まで戻ると、ヴァイオリンの演奏を始めた。

それに私も続き、彼女の隣に立つと目を閉じ、みちるの演奏に合わせて歌い始めた。曲は、昔太陽に住んでいた頃に好きでよく歌っていた、太陽国に伝わる、ちょっと切なくて、だけど純粋な愛の歌…。



―――――



まぎれもなくここにある
抑えようもなくあふれてくる

君を想うとき
この胸宇宙になり 星を抱く
限りある時間を 日々を
君を愛することに使おう

あいしてると言える強さ
知りはじめてる

それは長い道
遠くにある 光に導かれて

何度でも また会おうね
こうして今 会えたように

つのるこの想い
冷たい風に揺れないように
守り続けると誓うよ

生まれ変わっても
この銀河に君を見つける

何度でも また会おうね
こうしていま 会えたように

君を想うことが
生きる意味だと

確かに触れた
それを抱きしめた

何度でも また会おうね
愛すること 私が選んだ

君の幸せを 祈り続ける
くもりのない瞳で

もう夜に振り向かない
こうしてまた出会えるから

濡れたその翼乾かすのなら
私のそばで 心のそばで

I love you so love you

無限の広がりの中
君へのいとおしさを歌えば
永遠の彼方から 星がキラリ



―――――



歌い終わった私は、閉じていた目をゆっくりと開けた。するとそこには、いつの間に来ていたのか、3人分の飲み物を片手に抱えたはるかの姿があった。


「!はるか、いつの間に…」

「少し前にね…。それにしても、懐かしいな、今の曲…」

「うん…私も久しぶりに歌った…」


そう言ってはるかは、ベンチの上に飲み物を置くと、私達の元へと戻って来た。そしてすぐに私を後ろから抱きしめると、首筋に顔を埋めた。


「昔はよく、みちるのヴァイオリンと、僕のピアノの演奏に合わせて歌っていたな…」

「そうね…。…あの頃のように、平和な時取り戻す為にも、一刻も早く3つのタリスマンを見付け、聖杯をメシアの手に委ねなければ…」

「……タリスマンを見付け、聖杯を救世主の手に委ねたところで、僕達は本当に世界を救えるんだろうか…」

「!はるか…?どうしたの…?」

「いつも強気なあなたらしくないわ…」


私とみちるは、弱気なはるかに驚きの表情を見せた。そして私は、彼の腕の中で体の向きを変えると、はるかへと視線を向けた。


「はるか…」

「…何をしても手遅れなのだとしたら、僕達は何の為に、こんな事を…っ…!」

「…それを承知で、だけど一縷の望みに…可能性に賭けて始めた事でしょ…?」


私ははるかの頬に手を添え、彼をじっと見つめながらそう話した。そんな私の言葉に、みちるもゆっくりと言葉を続けた。


「…運命の歯車は、既に回り出してしまった。新たな覚醒は、やがてすぐ来る…私達には、3つのタリスマンを揃えるしかないのよ…」

「その為には、全てを犠牲にしても…?」

「全てを犠牲にしても、私は…大好きなこの世界を、大切な人達がいるこの世界を守りたい…。例え、命を落とすような結果になろうとも、私は…皆を、愛する人を守りたい…」

「夏希…」


私はそう言って、彼に向かって小さく微笑んだ。私が誰よりも、何よりも守りたい、一番大切な人へ向かって…


「はるか、使命なんて関係ないわ…。私は、私が守りたいものの為に、ここまでやって来たの。夏希を守り、夏希との平和な時を取り戻す為に、これまでも、そしてこれからも戦い続けると決めたの…」


「あなただって、そうなんでしょ?」みちるのこの言葉に、はるかは小さく笑みを浮かべると、優しい眼差しで私を見つめながら言った。


「……そうだな…。世界を救う為…なんて言ってても、実際僕は、僕の守りたいもの…夏希を守る為に、タリスマンを探し、敵と戦って来た。夏希をこの手で守れるのなら、もう二度と失わずに済むのなら、どんな犠牲でも払う覚悟を決めて……。…2人ともすまない。月夜のせいかな…弱気になってしまった…」


私達の言葉によっていつもの調子に戻ったはるかは、弱音を吐いてしまった事を、私とみちるに謝って来た。そんなはるかに私は微笑むと、彼の首に腕を回し言った。


「いいよ…。また不安になった時は、いつでも言って…?私はずっと、はるかの側にいるから…」

「ありがとう、夏希…」


私の言葉に、はるかは微笑み、お礼を言うと、そっと私の唇へとキスを落とした。そして私達は、みちるが見ているのにも関わらず、満月を背に、何度も何度も、その場で口付けを交わした。



―――――



翌日、昨日の晴天とは打って変わって、今日は梅雨らしく、朝からずっと雨が降り続いていた。そんな憂鬱な日の放課後、はるかとデートの約束をしている私は、ぶつぶつと1人ボヤキながら、待ち合わせ場所へと向かって歩いていた。


「もう…!昨日はあんなに晴れてたのに、何で今日は雨なのよ…!せっかく、久しぶりに2人っきりでデートなのに…っ!」


そうは言いつつも、はるかとのデートが楽しみで仕方ない私は、少しでも早く待ち合わせ場所に着くようにと、近道になる、いつもは通らない裏道を歩いていた。すると少し先にある空き地から、誰かの叫び声…と言うか、雄叫びみたいなものが聞こえた。


「何…?喧嘩…?」


私はその声が気になり、空き地に近付くと、塀の陰に身を隠しながら空き地の中の様子を窺った。


「!はるか…!…と、雄一郎さん…!?」


私はそこにいた人物に、一瞬自分の目を疑い、何かの見間違いかと目を擦って見てみたが、そこにいたのは紛れもなく、これから私と待ち合わせしているはずのはるかと、レイのお爺さんのお弟子さんの雄一郎さんだった。

傘を差し、ポケットに手を突っこんだまま立つはるかに対して、雄一郎さんは傘も差さず、泥だらけになりながら、はるかに向かって全力で向かって行っていた。


「何であの2人が…。とにかく、止めなくちゃ…!」


私が2人の喧嘩を止めに入ろうとしたその時、向かい側の道から、学校帰りのレイが歩いて来るのを、私は目の端で捉え、彼女の元へと走った。


「!レイ!!」

「あら、夏希じゃない!どうしたの?こんな所で会うなんて珍しいわね。」

「ちょうどよかった…お願い!レイも一緒に来て!!」

「え?ちょっ、夏希!?」


私はレイの腕を引き、さっきの空地へと彼女を連れて来ると、レイは中の様子を見て驚いた表情を見せた。


「!雄一郎!はるかさんも…」

「何でかわかんないけど、さっきから雄一郎さんとはるかが喧嘩してるみたいで…っ…」

「!何ですって…!?」


私達のこの会話の間にも、はるかに渾身のタックルを避けられ転倒していた雄一郎さんは立ち上がり、再びはるかに向かって行こうと走り出した。


「!雄一郎!!」

「!レイさん!?どわっ…!」


レイの声に反応し、油断した雄一郎さんは、足元の石に躓き、再び地面へと倒れてしまった。私達はその隙にはるかへと駆け寄り、はるかに事情を聞いた。


「はるか…!」

「!夏希…と君は、昨日の…」

「はるかさん、一体何があったんですか?」

「何でこんな事になってるの?」

「いや…それが、僕にもわからないんだ。彼にここに来るよう呼び出されて、来てみたらいきなり…」


はるかの言葉を聞いたレイは再び驚いた表情を見せ、雄一郎さんに問い詰める。


「雄一郎、どう言う事なの!?説明しなさい!!」


レイのその言葉に、雄一郎さんは俯きながらポツリと言葉を漏らした。


「レイさん…やっぱりそいつを、庇うんですね…」

「え…?」

「いや、もう何も言わんで下さい…」


レイの疑問の言葉を聞きながら、雄一郎さんはそう言ってゆっくりと立ち上がった。そして、レイの横を通り過ぎ、私とはるかの前まで来ると、はるかの肩に手を置き、再び口を開いた。


「天王はるかくん。二股を掛けてるとは言え、君は多分男らしい奴だ。」

「二股!?ちょっと、はるか!どう言う事よ!!」

「ご、誤解だ!僕は二股なんて…!」


怒る私に対し、焦るはるかを見た雄一郎さんは、そのまま言葉を続けた。


「この際だ、レイさんを苦しめるような事は止めて、今すぐ夏希さんとは別れてくれ!」


雄一郎さんのこの言葉に、私とはるかは揃って疑問の声を漏らした。


「「…は……?」」

「俺が言いたいのは、それだけだ…」


そう言って雄一郎さん立ち去ろうと、踵を返し、出口へと向かって歩き始めた。



―――――



私達が呆気に取られてる間に、今にも空き地から出て行こうとする雄一郎さんを、誰よりも早く正気に戻ったレイが慌てて引き留めた。


「ちょっ、待ちなさい!雄一郎!!」

「レイさん、止めんで下さい…」


そう言って尚も立ち去ろうとする雄一郎さんの腕を掴み、レイは無理矢理彼を引き止めた。


「ちょっと…!待ちなさいって言ってるでしょ!!」

「レイさんこそ、何故引き止めるんですか!?」

「あんたが変な勘違いして、はるかさんと夏希に迷惑掛けてるからよ!!」

「は…?勘違い…?」


レイの言葉にぽかんとする雄一郎さんを引き連れ、レイは再び私達の元まで戻って来ると、私達に向かって頭を下げた。


「2人とも、ごめんなさい!雄一郎ったら、何でこんな勘違いをしたのか……とにかく、はるかさんが二股掛けてるとか、2人に別れてくれとか…いろいろ迷惑を掛けて…」

「そ、そんなのいいから!とにかく頭上げて!レイは何もしてないんだし!ね?」


何もしていないにも関わらず、私達に向かって頭を下げて謝るレイに、私は慌てて彼女に頭を上げるように言った。


「でも…このバカが迷惑掛けちゃったし……。本当にごめんなさい…!」


頭はとりあえず上げてくれたが、申し訳なさそうに謝り続けるレイに、雄一郎さんは疑問の声を投げ掛けた。


「あ、あの、レイさん…?さっきから何を…?」

「何してんのよ、あんたも早くはるかさんと夏希に、迷惑掛けた事を謝りなさい!」

「え?あの…一体、何がどうなってるんでしょうか…?」


雄一郎さんのこの疑問の声に、はるかが小さく笑みを浮かべながら答えた。


「全部君の勘違いだよ…」

「は?俺の、勘違い…?」

「そうよ!夏希とはるかさんが付き合ってるってところ以外、全部あんたの勘違い!!」

「え…?えぇえええええええ!?」


レイの言葉に、雄一郎さんは顔を青ざめさせ、驚愕の表情を見せた。


「全部、俺の勘違い…?え?だって、昨日…レイさんと一緒にバイクで…それで、夜の公園では、夏希さんと…」

「!?雄一郎さん、昨日の見てたの!?」


私は雄一郎さんの言葉を聞いて、初めてみちる以外の人にも見られていたと言う事実を知り、耳まで真っ赤に染めると、自分の傘を投げ出し、はるかに抱き付き、顔を隠した。


「みちるだけだと思ってたのに……雄一郎さんもいただなんて…ありえない…」

「…耳まで、髪と同じで真っ赤だな……可愛い…」


そう言って小さく笑ったはるかは、ポケットに突っこんでいた手を出すと、私の腰にその腕を回し、私を抱きしめた。

一方でレイに怒られながら、大人しく説明を聞いている雄一郎さんは、レイの話を聞けば聞く程、顔を青くさせ、今にも倒れそうになっていた。そして、レイの説明が終わり、全てを理解したところで、雄一郎さんはその場で私達に向かって土下座した。


「すいませんでしたぁあああ!!!!!全部俺の勘違いで、愛し合ってる2人の仲を裂こうと…!本当に、すいませんでしたぁあああ!!!!」

「い、いや…わかってくれたなら、それでいいんだけど…」


雄一郎さんの勢いに、若干引きつつもはるかは彼に向かってそう言った。レイに関しては、呆れた表情で雄一郎さんを見下ろしていた。


「夏希さんも、その…偶然とは言え、2人の、その…キッ、キキ…っ…キスシーンを見てしまって、その…すいません!!」

「いやー!!お願いだから、もう何も言わないでー!!!!」


雄一郎さんのそんな言葉に、私は羞恥に耐えられず、はるかに抱き付いたままそう叫んだ。そんな私を見て、はるかはクスクスと笑いを漏らした。そして、はるかは何かに気付いたように空を見上げた。


「おっ……雨、止んだみたいだな…」


はるかの言葉に、私以外の人間がはるかと同じく、空を見上げた。そんな彼らの目に映ったのは、いつの間にかどこかへと流れて行った雨雲の後ろから、ひょっこりと顔を覗かせた、雨上がりの綺麗な空と、キラキラと輝いて見える、綺麗な夕陽だった。
to be continued...

歌詞 映画「マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜」より
タイトル:ホシキラ
アーティスト:ランカ・リー=中島愛
作詞:Gabriela Robin
作曲:菅野よう子キ
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