深夜、僕は夢の中の愛しい彼女の姿を追い掛け、目を覚ます。


「ハァ…ハァッ……夏希……っ」


僕は彼女を想い、シーツを強く握り締めた。

ここ最近、毎日同じ夢を見る。遠い昔、太陽の宮殿でエリカと過ごしていた頃の夢…

夢の中の僕は、エリカを抱きしめそっと耳元で愛を囁く。それに彼女も綺麗な笑顔を僕に向けて答えてくれる。しかし、彼女が答えた直後、彼女は僕の腕の中から姿を消し、少し離れた所に立って「お願い、私を見付けて…」そう僕に言い残し消えてしまう。

この夢が何を示しているのかはわからない…
エリカもこの時代に転生し、夏希として生きる彼女と僕が再び出逢い、恋をしたのはもう一年程前の話だ。

その時彼女も既に戦士として覚醒し、世界を沈黙に包もうとする敵、デス・バスターズと戦っていた。

そのデス・バスターズとの最後の戦いで、彼女は友の為に、未来の娘の為にと、自分の身を犠牲にしてまで、ほたる…沈黙の戦士、セーラーサターンを守り、新たに、破滅と誕生の戦士として転生させ、死んだ。

もしもこの夢が、彼女…夏希もまた、ほたるのように転生し、この星のどこかにいる事を示すのなら、もう一度夏希に逢いたい…愛してると伝えたい。そう願わずにはいられない。


「(いるわけない、か…)」


小さく自嘲を漏らす。


「(あの時、赤ん坊のほたるはいても、夏希の姿はどこにもなかった…。前世でエリカがプリンセスとして、太陽王国を守った時と同じだ…)」


僕はベッドから抜け出し、ライダースーツに着替えを済ませると静かに家を出た。

バイクに跨り、海辺の道を無心で走る。
暫くバイクを走らせていると、街の中まで来てしまった。街の中心部や駅前は夜中でもそれなりに賑やかだった。

だいぶ気分も紛れて来たし、そろそろ帰ろうと向きを反転させ、走り出そうとした時、不意に聞こえて来た歌声に驚き、巨大モニターを見上げた。

よくある新曲PRのCM。だけど、そこに映っていたのは、ほたるを救い、死んだはずの彼女姿だ。


「(今のは…)」


最初は何かの見間違いか、ただの他人の空似かとも思った。しかし、それにしては夏希に似すぎている。


「(少し、調べてみるか…)」


もし、本当に彼女が夏希なら、もう二度と、彼女の手は離さない…

そう心に誓い、僕は再びバイクを走らせた。
to be continued...
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -