- ありがとう、君へ
- 今日は、大切な人がこの世に生まれた、年に一度の大切な日。
そんな大切な日が、私にとって、もっともっと、大切な日となった。
after storyU〜ありがとう、君へ〜
私がはるかと結婚して3年…。
私は今、1人の母親になろうとしていた。
「はい、呼吸楽にして」
「はぁっ…はぁ…っ……」
「もう少しで生まれますよー、あと少し頑張りましょうね」
「はい…」
助産師さんの声に、陣痛の痛みと、痛みから来る疲れ、苦しみに、荒い呼吸を繰り返しながらも、私は冷静に返事を返した。
「さあ、ラストスパート!頑張って!」
そう言った助産師さんの声に合わせ、私は最後の力を振り絞って、思いっきり力んだ。
そして次の瞬間、私の耳に届いたのは、生まれた事を報告する助産師さんの声と、とても元気な赤ん坊の産声。
「おめでとうございます!元気な女の子ですよ」
漸く解放された痛みと、無事に産む事が出来た事からの安心感、そして出産の疲れから、意識が朦朧としていた私の胸の上に、生まれたばかりの赤ん坊がそっと寝かせられた。
元気に産声を上げるその子を腕に抱き、助産師さんの「今、お父さんも呼んで来ますね」と言う声を遠くに聞きながら、私は腕の中の娘にそっと微笑んだ。
「やっと会えたね、希望…」
私がそう言って、希望の小さな手に触れれば、希望はその小さな手で私の指をギュッと掴み、つい先程まで元気に産声を上げていたのに、いつの間にか、希望は私の胸の上で静かに寝息を立てていた。
「夏希…!」
「はるか……」
希望が生まれた事で、分娩室内へと入る事を許されたはるかは、いつになく慌てた様子で、いつも冷静な彼は何処へ行ったのかと思うと、出産で疲れ果てていたはずなのに、何だか笑えた。
「夏希……無事生まれたんだな…」
「うん…。見て?やっぱり、はるかにそっくり…」
「あぁ……やっと会えたな…」
「うん…やっと会えた…」
そう言って愛おしそうに希望を見つめるはるかに、私は胸の奥が温かくなるのを感じた。
「(家族、か………温かいな…)」
「夏希…」
「ん…?」
「ありがとう…」
「うん…!」
私にとって大切なその日は、もっともっと大切な、私の宝物となったんだ。
1月27日
(私が最も愛する2人が、この世に生まれた、特別な1日)