新 生 活
風音さんに出会って早一ヶ月。この一ヶ月で、何度も彼女に助けられた。私の住む家の事、仕事の事、学校の事、いろんな事の準備や手続きを彼女は引き受けてくれた。

仕事に関して言うと、彼女は私が事務所に入ったその日から、私のマネージャーとして私を色んな所で売り込んでくれたらしく、最近少しずつだが注目されるようになって来た。

最初はそんなに知識がなくても出来そうなファッション雑誌のモデルから始まって、最近は歌やドラマの仕事も来るようになった。本当にありがたい。

プライベートに関して言うと、つい最近新居に越して来た。それまでは申し訳ないと思いつつも、風音さんの部屋に住まわせてもらっていた。風音さんは気にしなくていいって言ってくれたけど、やっぱり気になるので仕事がない日は一日部屋探しに費やした。

そして今日は高校の入学式…
私は真新しい制服に身を包み、昨日家に泊まっていた風音さんと一緒に部屋を出た。


「夏希ちゃん、今日から高校生だね!」

「はい!」

「高校楽しみ?」

「はい、すごく楽しみです!」

「そっか、仕事と学業の両立は大変だと思うけど頑張ってね?私も全力で支えるからさ!」

「ありがとう、風音さん!」


このあと私と風音さんは、風音さんの車で私が入学予定の十番高校へと向かった。風音さんは私の保護者として、入学式に参加するらしい。これから新入生として入学する私よりもずっとワクワクしてる風音さんが可愛くて、私は小さく笑った。

学校に着き、私は受付を済ませ、風音さんと一緒に入学式が行われる体育館に向かった。

体育館に着くと、張り切っている風音さんは「よし、撮るぞ〜」と言いながらビデオカメラ片手に保護者席に向かった。私も新入生の中に紛れた。

そして暫くして入学式が始まった。私は校長やPTA会長の長くてどうでもいい話を聞き流し、今日のスケジュールを思い出す。


「(えっと…今日は確か、式が終わったらすぐにファッション誌の表紙撮影で、そのあとが今度出す歌の収録か…教室行く暇ないなぁ……ま、いっか。これから3年間ここに通うわけだし!)」


そんな事を考えてる内にいつの間にか式は終盤に差し掛かり、在校生と教員が校歌を歌い始めた。

それから暫くして式が終わり、私達新入生は体育館を後にした。体育館を退場した途端、騒がしくなった体育館前の廊下。その中でも一際目立っていたのが、金髪のお団子頭の子を中心に、青いショートヘアーの知的な子と、長身で髪をポニーテールにしてる子と、長い金髪に赤いリボンがよく似合う可愛い女の子グループだった。


「(……何でだろ、あの子達の事知らないはずなのに、何だかとても懐かしい気がする…)」


何故そんな風に思ったかはわからないが、ゆっくりしている暇もないので、私は一人玄関に向かい、靴を履き替えると外に出て、風音さんを待った。

暫くして、満足気な風音さんがカメラ片手にやって来て、再び風音さんの車に乗りスタジオに移動した。

学校を出る直前に、私はさっきの子達が気になり再び校舎の方を見た。この時の私は、まさかあの子達が、自分とも、そして私が探している人とも知り合いだんて、思いもしなかった。



―――――



スタジオ内の控え室に入り、撮影用の衣装に着替え、メイクさんに髪とメイクをしてもらった。いつも思うけど、メイクって本当にすごい。メイク一つで色んな自分が出来上がる。年相応だったり、大人風だったり、はたまたちょっとだけ男の子っぽくなったりと、すごく楽しい。今度メイクの仕方教えて貰おう。

髪とメイクが終わり、準備が出来ると控え室を出てスタジオに向かう。スタジオに入ると、カメラマンさんとアシスタントの方々、編集者の方々に挨拶を済ませる。


「おはようございます、今日はよろしくお願いします!」

「お、来た来た。そんじゃ、Erikaちゃんここに立って!」

「はい、お願いします!」


撮影が始まった。最初は大変だったポーズも、回数を重ねる毎に色んなポーズをとれるようになって来た。

何パターンか撮って写真を確認する。そしてまた何パターンか撮って確認。雑誌の撮影は大体それの繰り返し。

お互いに満足のいくものが撮れるまで撮り続ける。これが結構大変なんだ、以外にね。

そうこうしてる内に今日の撮影は終わった。今日のスケジュールは残す所歌の収録だけだ。


「Erikaちゃんお疲れ!」

「今日はありがとうございました。次の仕事があるのでお先に失礼します。お疲れ様でした!」


そう言ってスタジオを後にするとすぐに控え室に向かった。今日の撮影は意外と早く終わった。いつもはもっと長い。一日掛かりとかもたまにある。

控え室に入って着替えてると風音さんがペットボトルのお茶とおにぎりが入ったコンビニ袋を持って入って来た。


「お疲れ!はい、これ。」

「あ、ありがとうございます。ちょうどお腹減ってたんです!」

「いいのよ、これもマネージャーの仕事だし!それよりちゃんとしたご飯食べさせて上げられなくてごめんね〜」

「いいえ、お仕事頂けるだけでありがたいですから!それに、家に帰ればいくらでも食べられますからね!」


私がそう言うと風音さんは何が面白かったのか笑った。私は着替えを済ませると荷物を持って風音さんと控え室を出た。

風音さんの運転する車に乗り、さっき貰ったお昼ご飯を食べながら私は次の現場に向かった。

収録スタジオに着き、スタッフさん、作詞作曲者の方に挨拶を済ませるとすぐにブースに入り、収録が始まった。

最初に曲のデモを聞いた時、何故か胸が苦しくて、切なくて泣いた。わからないけど昔も、本当に遠い昔、こんな事が本当にあった気がする。

ブースに入って収録している間も、私は胸が切なさと愛しさでいっぱい、締め付けられるみたいに苦しくて、涙を流しながら収録していた。

そのおかげか、とても感情が入っていて良かったとの事で、一発OKをもらった。

その日、収録が終わっても、私の涙は暫く止まる事はなかった。
to be continued...

イメージ曲:浜崎あゆみ HEAVEN
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