- 新たな星の息吹
- 玄関から聞こえたインターホンの音に、私は足元を確認しながら、ゆっくりと玄関へと向かった。
来客者をドアののぞき穴から確認し、鍵を開けると、客人を家の中へと迎え入れた。
「「「「「こんにちわー!」」」」」
「いらっしゃい、皆!」
訪問して来たのは、嘗て同じセーラー戦士として、幾つもの戦いを切り抜けた仲間達だった。
「「「「「お邪魔しまーす!」」」」」
私は皆をリビングへと招き入れると、すぐにお茶の準備に取り掛かろうと皆に背を向けた。
「あ、夏希ちゃんは座ってて!お茶の準備はあたしがやるからさ!」
「え…?でも……」
「いいから、いいから!ほら、座った座った!」
そう言うと私は、まことに強制的に座らせられた。
「お茶の準備はまこちゃんに任せて、夏希ちゃんは安静にしてて!」
「安静にって……私、別に病気も怪我もしてないんだけど…」
相変わらずな美奈に、私は小さく苦笑を漏らした。そんな私に、レイは少し呆れた表情で言う。
「怪我や病気してなくったって、その体じゃ、誰でも心配になるわよ!」
「ふふ……そうね。でも、心配だからって過保護にし過ぎると、かえってストレスになったりしてよくないのよ?」
「うわー……その言葉、はるかに聞かせてあげたい…」
私の呟きに亜美は小さく笑いを漏らすと、私に尋ねて来た。
「はるかさん、相変わらずなの?」
「相変わらずって言うか……予定日が近付くに連れて、どんどん過保護が酷くなってる気が…」
「予定日って確か、来月の末だっけ…?」
私の言葉に、うさぎが首を傾げ問い掛けた。
「うん!このまま順調にいけば、来月のはるかの誕生日前後に生まれると思う…」
「それじゃあ、もうすぐ希望ちゃんに会えるんだね!」
「うん!」
うさぎの言葉に、私は大きくなった自分のお腹を優しく擦りながら微笑んだ。
高校を卒業して早2年、はるかと結婚して3年、混沌との戦いが終結してから、4年の月日が流れた。私のお腹の中には今、はるかとの子供…希望がいる。
あの戦いが終わって以来、宇宙の彼方…自分達の故郷へと帰って行ったギャラクシアや、火球、スターライツのメンバーとは、一度も会っていない。
「…スターライツの皆とか、今頃どうしてるのかなー……」
私が小さくそう呟いた時、玄関の扉が開く音と共に、はるかの声が玄関から聞こえて来た。私はその声に、ソファーから立ち上がると玄関まではるかを迎えに行った。
「はるか、おかえ……!」
私ははるかの姿を目に捉えると共に、そこにあった光景に、驚きの表情を隠せなかった。
「ただいま戻りました。」
「ただいま、夏希。」
「夏希お姉ちゃん、ただいま!」
「よっ!」
「久しぶり。」
「お久しぶりです。」
「こんにちわ、夏希。」
「お久しぶりです、セーラーシャイン…」
「…皆……」
はるかと共に玄関に立っていたのは、はるかと共に買い物に出掛けていた外部戦士達と、以前より少し大人になったスリーライツ、相変わらず優しい雰囲気を纏った火球、そして、旅立つ前よりも、随分と明るい表情を見せるようになったギャラクシアだった。
「買い物帰りに、偶然街で会ったこいつに捉まってね…」
そう言うとはるかは、小さく笑いながら星野を差した。
「仕方ないだろ?俺達、夏希ん家知らなかったんだし…」
「…って言うかさ、夏希いつ結婚したの?」
「3年前だけど…」
「3年前と言うと…」
「僕が高校卒業してすぐさ。それで今、夏希のお腹の中にいるのが、僕達の娘の希望だ……」
そう言うとはるかは、私を抱き寄せ、優しい表情を浮かべ、私の大きくなったお腹に、そっと手を当てた。
「お子さんは女の子なんですか…?」
「うん。はるかにそっくりな女の子…ね?みちる、せつな?」
「ふふ……そうね…」
「確かに、瓜二つですね…。見た目も、性格も……」
「?まだ生まれてないのに、何でそんな事がわかるんだ…?」
「ふふっ……秘密!」
「…何はともあれ…夏希、元気なお子さんを産んで下さいね…」
「うん…!ありがとう、火球!」
私がそう笑顔で火球に言ったその時、はるかを出迎えに行ったまま、なかなか戻って来ない私を不思議に思ったのか、リビングへと繋がる扉から、うさぎが顔を覗かせた。
「夏希ちゃーん?何やって……!!星野!?」
「!よぉ!お団子じゃねーか!!相変わらずお団子頭なんだな!」
「煩いわね!別にいいで……うぐっ!」
「星野君!?」
「嘘!?どこどこ!?」
「こんにちわ。」
うさぎの言葉に、リビングのソファーに座っていたメンバーが、うさぎを押し退け、次々と顔を覗かせ、玄関へとやって来た。
「はぁ……相変わらず騒がしい奴ら…」
「まあまあ、夜天…」
「ふふ…お久しぶりです、皆さん。」
「こんにちわ。」
「皆、久しぶりだな!」
それから一言ずつ、皆が挨拶を交わした所で、キッチンでお茶の用意をしていたまことが騒ぎを聞き付け、廊下に顔を出した。
「皆、何騒いでるんだい?お茶の準備出来たよ!」
「ありがとう、まこと!今行く!」
私はまことの声にそう声を返すと、皆を家の中に招き入れた。それから皆がリビングへと入って行ったのを見て、私はその後を追おうと、ゆっくりと歩き出した。
「夏希」
「ん?」
しかし、歩き出してすぐ、私ははるかに呼び止められ、はるかの方へと振り返った。するとはるかは、私が振り返った瞬間、私の不意を付いてそっと口付ける。
「!な…っ…」
「今の内にしとかないと、暫くは出来そうにないからな…」
顔を真っ赤に染める私に対し、はるかは余裕のある笑みを浮かべると、そっと私の腰に手を回し、私の体を支えた。
「行こう、皆待ってる…」
「…バカ…」
それから私達は、2人並んで、嘗ての仲間達が、大切な友人達が待つリビングへと向かって歩き出した。
fin...