- 未 来 へ(3/3)
- 私が完全に地面へと倒れた時、うさぎ達を取り囲むように、消えて行った戦士達が、再びうさぎ達の前に次々と姿を現した。
「……っ…」
「うさぎ…」
「「「うさぎちゃん…」」」
うさぎは名前を呼ばれ、顔を上げた。
「レイちゃん、亜美ちゃん、まこちゃん、美奈子ちゃん…っ…」
そこにあったのは、こちらを向いて、優しく微笑む仲間の姿だった。
「終わったんだな…」
「よく頑張ったわね…」
「はるかさん、みちるさん、ほたるちゃん、せつなさん…っ……!」
大切な仲間であった皆が戻って来てくれたのは嬉しいが、戻って来た彼女達の姿を見て、うさぎは更に悲しみの涙を溢れさせた。
「うさこ…」
「!まも、ちゃん…?」
「この子が、うさこの元へと導いてくれたよ…」
「ちびちび!」
「まもちゃん……っ…まもちゃん…!!やだよ……せっかく、戦いが終わったのに…結局あたし……何も守れなかった…。大切なもの、守れなかったよぉ…!!」
そう言ってうさぎは、ちびちびを腕に抱き戻って来た衛に、縋るように抱き付き、声を上げて泣いた。そんなうさぎの姿に、何か只事ではない事があったのだと瞬時に感じ取った皆は、声を上げて泣くうさぎに、一体何があったのか尋ねた。
しかし、深い悲しみの中にいるうさぎは、皆の質問に答える事が出来ず、ただ泣きじゃくるばかりだった。そんな中、スターライツの3人が、うさぎの代わりに、涙を流しながらも、ゆっくりとその口を開き、戦いの後にあった事を話し始めた。
「!?そんな……それじゃあ、夏希は……!!」
「…あなた達を再びこの時代に転生させる為に、力を解放して……」
「…そん、な……」
ウラヌスの質問に答えたファイターの言葉を聞いて、ウラヌスとネプチューンは、力なく地面に崩れ落ちた。
「結局私達は…一番守りたかったものを、守れなかった……」
「…前世でも、そしてこの時代でも……どうして神様は、いつも僕達から彼女を奪って行くんだ……!」
「私達はただ…あの子と、あの子の笑顔を守りたい…。あの子の側で、一緒に笑い合っていたいだけなのに……!それなのに…っ……そんな願いさえ、私達には叶える事を許さないと言うの…?」
深い絶望と悲しみに包まれたウラヌスとネプチューンは、悲痛な声を上げ、その綺麗な顔を歪め、いくつも涙を流した。
「ウラヌス…ネプチューン……」
ファイターが小さく彼女達の名前を呟いたその時、ウラヌス達の背後から、彼女達に向かって声が掛けられた。
「まだ間に合います。」
「「「!!火球プリンセス…!」」」
彼女は倒れている夏希の体をそっと抱き上げると、僕達の元へと運んで来た。そして僕は、彼女から夏希の体を受け取ると、変身が解けてしまった夏希の体を強く抱きしめた。
「夏希…っ……!」
「…皆さん、セーラーシャイン……夏希を助ける方法が、1つだけあります。」
「!それは本当なの…!?」
「はい。ただそれには、皆さんの協力が必要なのです…。ギャラクシア、あなたの協力も…」
「どんな方法なんだ!?頼む!教えてくれ…!!」
「…これを見て下さい。」
そう言って彼女は、ある一輪の花の蕾を取り出した。
「!それは、生命(いのち)の花…!」
「この華そのものに宿るエナジーだけでは、傷を治す程度の事は出来ても、夏希のスターシードを元に戻すだけの力はありません。…しかし、私達全員のエナジーを注ぎ込んだ花の蜜を飲ませれば…」
「!夏希は助かるのか!?」
僕の問い掛けに、彼女は静かに頷いた。
「ただし、その人を想う心……夏希を助けたいと言う強い思い、夏希への愛がなければ、この花は効果を発揮しない。それどころか、毒となり、蜜を与える人物の命さえも奪うでしょう…。それでもあなた方は、夏希を助けたいと思いますか…?」
「当たり前だ!!夏希が僕達の元へ戻って来るのなら…!」
「私達はいくらだって、どんな犠牲だって払ってみせるわ!」
「……あなた方も、彼女達と同じ気持ちですか?」
「当たり前だろ?」
「夏希ちゃんは、あたし達の大切なお友達だもの…」
「せっかく生き返ったって、」
「夏希がいないんじゃ、意味ないものね!」
「うん…!夏希お姉ちゃんだって、幸せになったっていいよね?」
「そうですね…。世界の為に、星の為に、皆の為に……自分を犠牲にしてまで、誰かの為に頑張る子が、幸せになれないなんて…そんなのおかしいですから…」
「夏希は、あたし達を受け入れてくれた…。敵対していた私達を、仲間として、友達として…」
「そして守ってくれた…。私達も、星も、銀河も、皆の未来も…」
「それだけじゃない…。あたし達に、プリンセスを取り戻してくれた…。色んな事を、大切な事を、あたし達にたくさん教えてくれた……」
「1人が辛いなら、自分達と一緒にいればいい…。ずっと孤独だった私に、彼女は優しくそう言って下さいました…」
「ほんの少しでも、彼女が生き返る可能性があるのなら…」
「あたし達は皆、協力するよ?だって、あたし達皆…夏希ちゃんが、大好きだもん…!」
「ちびちび!」
彼女の尋ねた問いに、全員が言葉を返すと、彼女は小さく、優しい笑みを浮かべた。
「……わかりました。では、皆さん…この花に意識を集中させて下さい。」
彼女の言葉に、その場にいた全員が、生命の花へと意識を集中させた。その瞬間、生命の花の蕾が光りを帯び始め、蕾だった花は、見る見る内に美しく華開いて行った。
「…さあ、早くこの花の蜜を夏希へ…」
僕は差し出された花の蜜を口に含むと、すぐにそれを夏希に飲ませた。それから数秒して、僕はゆっくりと口を離した。
「…頼む、目を覚ましてくれ…!」
僕が神に祈るように、小さくそう呟いた瞬間、夏希の体が温かい光に包まれた。そして、その光が一点に集中すると、粉々に砕け散ったはずのクリアトパーズが、元の姿を取り戻した。
「!!クリアトパーズが…!」
「夏希…っ…!」
「夏希…!!」
「「夏希(お姉ちゃん)!!」」
「「「「夏希(ちゃん)…!」」」」
「「「「夏希…!」」」」
「シャイン…!!」
「「夏希ちゃん…!」」
ウラヌスを始めとする皆が、不安気に、だけど何処か力強く、私を呼んだ。その声に、私は全員が見守る中、ゆっくりとその目を開いた。
「…っ…ん……」
「!夏希…っ…」
「……はる、か…」
「夏希…!」
「…みちる……泣かない、で…?」
そう言って小さく微笑んだ私を、ウラヌスとネプチューンはきつく抱きしめた。
「「夏希……っ…!!」」
「…もう……苦しいよ、2人とも…」
「我慢なさい…っ…!私達に、心配を掛けた罰よ…」
そう言うと2人は、更に私を強く抱きしめて来た。そんな2人の背に、私もそっと手を回し、彼女達を抱きしめた。
「…心配掛けてごめん…。おかえり、はるか、みちる……」
「「…ただいま…夏希…」」
そうして抱き合う私達を見て、私達を取り囲むように立っていた戦士達は、皆一斉に安堵の笑みを見せた。
「セーラーシャイン…」
その時、ギャラクシアの私を呼ぶ声に、私達は一斉にギャラクシアへと視線を向けた。
「あなたは、その美しい輝きを消してはいけない…。あなたの光は、この暗い銀河を照らす、唯一の希望の光…。あなたにもしもの事があれば、悲しむ人が大勢いる事を忘れないで…?」
「ギャラクシア…」
「夏希…これから先、あなたに何か困った事があったら、私達はいつでも駆け付けます。だからもう、あなたの愛する人を、大切な人達を…私達を、悲しませないで下さい…」
「火球…」
私は2人の顔を交互に見つめ、彼女達の真剣さに、彼女達の目に浮かぶ涙に、彼女達にもたくさん心配を懸けてしまったのだと思うと、何だか申し訳ない気持ちで一杯になった。
「…うん、わかった…」
「約束、してくれますか…?」
私が言葉を返せば、ギャラクシアがそう尋ねて来た。それに私も黙って頷くと、真っ直ぐ彼女を見て言った。
「うん、約束する…。心配掛けてごめん……皆も、ごめんなさい…」
私がそう言って頭を下げれば、皆は優しく微笑んで、「おかえり!」そう声を掛けてくれた。
「!ただいま!皆…!!」
to be continued...