- 未 来 へ(2/3)
- 「はぁああああ!!」
「っ……お願い、ギャラクシア!もう止めて!!」
ギャラクシアの攻撃を何とか受け止めたうさぎは、尚もギャラクシアの説得に試みる。しかし、完全に混沌に支配されてしまったギャラクシアは、そんなうさぎの説得になんて、耳を貸そうとすらしなかった。
混沌の一方的な攻撃に、うさぎは戸惑い、説得しながらも、何とかそれを受け止め続けた。しかし、その激しい剣の交じり合いの中で、うさぎの持っていた剣が、ついにギャラクシアの背中から生えていた羽に刺さり、うさぎは軽いパニック状態に陥った。
「!」
「っ…おのれ……はぁ…っ!」
自らの体の一部を傷付けられ怒った混沌は、うさぎが軽いパニックに陥っている隙に、うさぎの持つ封印の剣を、己の暗黒に染まった剣で粉々に打ち砕いた。
「っ…!」
「!そんな…封印の剣が…っ…」
「…終わったな…お前達の信じていた希望の光も砕け散った…!」
封印の剣は元の姿、ちびちびちゃんの姿へと戻り、うさぎは震える手でそっとちびちびちゃんを抱きしめた。
「!ちびちび……ごめん……ごめんね…っ…」
そしてちびちびちゃんは、皆と同様光となり、私達の前から姿を消した。そんな光景を見ていた混沌が、自分の脅威となりえる光を消した事により、至極楽しそうな声を上げて笑った。
「これで私を止めるものはいなくなった!」
「…こうなったら、やっぱり私が…!」
「「「シャイン…!!」」」
「っ…でも、私が何とかしなきゃ…!」
「……やっぱり、ダメだよ……」
「!……うさぎ…?」
私を止めるスリーライツを振り切り、混沌へと向き直ったその時、悲しみに震えたうさぎが、静かに声を漏らした。
「戦いからは、何も生まれない…!!」
「ふんっ…結局、貴様には戦士としての勇気も誇りもないのだな!」
悲しみに震えるうさぎに、混沌はそう言った。
「…戦い、傷付け合う事だけが、戦士の誇りなら、私はいらない…。…戦うだけが、解決の方法じゃない…」
そう言うとうさぎは、再び銀水晶を輝かし、エナジーを解放した。
「諦めたか、セーラームーン!」
「諦めてなんかないよ…。…あたし好きだもの、この世界が…」
「うさぎ…」
「悲しい事や辛い事もいっぱいあるけど、皆と出逢えたこの世界が大好き…!あなただって知ってるはずだよ?この世界の素晴らしさを…」
誰よりも優しい心で、その全てを包み込もうとする彼女は、尚もギャラクシアの良心に向かって問い掛け続けた。
「世迷い言を…!」
うさぎの言葉に苛立った混沌は、うさぎに向かって負の波動を放った。
「!…ぅ…っ…」
「!うさぎ…!」
「「「セーラームーン!!」」」
混沌の攻撃に、少し後ろへと後退したうさぎに、私達は心配の声を掛ける。それに続くかのように、混沌がうさぎへと言った。
「戦いを捨てたお前に、この星は救えん!…お前達の非力さ故に、お前達の仲間は全て消えたのだぞ!!」
「…消えてなんかないよ…」
「何…?」
うさぎの言葉に、混沌は眉を寄せ、疑問の言葉を漏らした。その声に私は、うさぎの言葉を続けるように、静かに語り出す。
「…そう、例え姿が見えなくたって…はるかは…私達の仲間は、いつでも私達の側にいる。もしも、皆が本当に消えてしまう時があるとすれば、それは、私達が諦めた時だって……スターライツが、私達の大切な仲間が…友達が、そう教えてくれた!」
「「「シャイン…」」」
「だから、あたし達は諦めない…。皆が託してくれた、未来を…希望を、必ず守ってみせる!!」
私はロッドを天に掲げ、うさぎは目を閉じ、銀水晶へと意識を集中させた。
「コスモイノセントパワー!」
「シルバームーン・クリスタルパワー!」
私達の言葉に反応し、クリアトパーズと銀水晶が、今までより強く輝き出した。
「!貴様達…っ…何をするつもりだ…!?」
「ギャラクシア!いや…混沌!!今こそ、我が太陽の闇を照らす光と!」
「月の破魔の光で!」
「「お前を、浄化する!!」」
「っ…やれるものなら、やってみろぉおおお!!」
混沌は最後の足掻きか、私とうさぎに向かってそれぞれ技を放って来た。しかし、光の力で守られた私達に、混沌の技が利く事はなく、私達に当たる前に、混沌の放った技は、私達の光によって消えて行った。
「「ギャラクシアを解放し、今すぐこの星から消え去れ…!!」」
「っ…止めろ…!っ…ぅあ…っあぁああああああ!!」
混沌が雄叫びに近い叫びを上げたその時、漆黒の闇に包まれていた姿にひびが入り、そして間もなく、ギャラクシアは本来の姿へと戻る事が出来た。
―――――
あれから少しして、地上へと降りて来た2人は、私とスリーライツの下へとやって来た。
「セーラーシャイン、セーラームーン…ありがとう。あなた方のおかげで、私は本来の姿を取り戻す事が出来た…」
「どういたしまして…」
「同じセーラー戦士だもん…困ってる仲間がいたら、助けるのは当然だよ。」
「…ありがとう…」
うさぎの言葉に、ギャラクシアは嬉しそうな笑みを零した。それにつられ、私とうさぎも、彼女に向かって微笑んだ。
「…混沌は、本当に消えてしまったのでしょうか…?」
「人間が存在する限り、人の負の感情の塊である混沌が消える事は、決してない…」
「!それじゃあ、また…!」
私の言葉に、ギャラクシアは警戒の色を強めた。しかし、そんなギャラクシアに向かって、うさぎは言った。
「信じましょう?」
「え…?」
「信じましょう?この世界の人々を…。大丈夫、だって希望の光は、皆の心の中にあるんですもの…」
うさぎの言葉に、私は小さく頷くとギャラクシアの手をそっと握り、言った。
「もしもまた混沌が現れたとしても、また倒せばいい…。今度は、私達も付いてる。…もう、1人で戦わなくったっていいんだよ?孤独が寂しいのなら、私達と一緒にいたっていいんだから…」
「!…ありがとう、セーラーシャイン、セーラームーン…。あなた方は、強いのですね…」
ギャラクシアのそんな言葉に、うさぎが否定の言葉を呟いた。
「…そんな事ないよ…。皆がいてくれたから、頑張れた…。私1人じゃ、何にも出来ないもの…」
「……すみません…。混沌に支配されていたとはいえ、私のしてしまった事は、取り換えしの付かない……。あなた方の、大切な人達も皆…」
ギャラクシアはそう言って俯いてしまった。
「大丈夫。消えてしまった人達は、私が取り戻す…」
そう言って微笑むと、私は皆から少し離れ、雲の隙間から太陽の光が差し込む場所へと立った。
「(タリスマンに封じた力がない今、私の命を懸けて、皆は、取り戻す…!)我が守護、太陽、そしてクリアトパーズよ。ネオ・クイーンの名の下に、今こそその真の力を解放せよ!眠れる星の戦士達に、再び命の輝きを…!」
私はそう言うと、手にしていたロッドを天に掲げた。
「!ダメ!止めて、夏希ちゃん…!!そんな事したら、あなたが死んじゃう…!!」
「!?何ですって…!?」
「!そんな…っ…」
「死ぬなんてダメよ…!!シャイン…!!」
「お願いですシャイン…!!止めて下さい!!」
そう口々に叫び、力の解放を止めさせようと説得する皆の方に振り向くと、私は一度だけ微笑んだ。
「…ありがとう、皆。だけどこれは、私にしか出来ない事なの…。クリアトパーズの真の力を解放するしか、皆を取り戻す事は出来ない…」
「そんな事ない!絶対他にも、何か方法があるよ…!!」
「……他に方法はない…。星の記憶を、姿形をそのままに、皆をこの時代に転生させるには、この方法しか…。言ったでしょう?皆の幸せな未来は、どんな手を使っても、何を犠牲にしても守るって………コスモイノセントパワー!」
「ダメぇええええええ!!」
私の声に反応し、ロッドの先のクリアトパーズに太陽の光が集まり、クリアトパーズは、今までで一番強い輝きを放った。そして間もなく、その強い輝きと共に、私の命でもあるクリアトパーズは、無残にも粉々に砕け散った。それに伴い、私はゆっくり、地面へと倒れて行った。
「嫌…っ…せっかく、戦いが終わったのに……こんなの………っ…夏希ちゃああああん!!」
ゆっくりと倒れて行く私を見て、うさぎが私の名を呼び、泣き叫んだ。スターライツやギャラクシアも、倒れ行く私を見ながら、静かに涙を流した。