- 未 来 へ(1/3)
- 私達は瓦礫の陰から、ギャラクシアの前へと姿を現した。
「…漸く出て来たか、虫けらども…」
「あたし達は、絶対に諦めない!」
「あなたなんかに、この星は渡さない…!!この命に代えても、必ずお前を倒す!!」
「まだそんな事を言っているのか…!!」
「いつまでだって言うわ!あたし達は、この子達を信じているもの!」
「そうよ!希望の光がなくったって…この子達の光なら…!」
「あなたを包み込むその闇も、浄化出来るかもしれない…!」
「セーラーギャラクシア!今こそ、お前の中の混沌(やみ)を、私達2人の力で、浄化してみせる!!」
「ふん…出来るものなら、やってみるがいい!この銀河最強にして伝説のセーラー戦士、セーラーギャラクシアを倒してみるがいい…!!」
私達の言葉に逆上したギャラクシアは、天に手を翳し、暗黒に染まった剣を取り出すと、私達に向かって斬りかかって来た。
「はぁ…っ!」
私はセーラームーンを連れそれを避け、スターライツはそれぞれギャラクシアに向かって攻撃をしかける。
「スター・シリアス・レイザー!」
「スター・ジェントル・ユーテラス!」
「スター・センシティブ・インフェルノ!」
「ふんっ…甘い!!」
ギャラクシアは片手を前に出すと、スターライツの攻撃を片手で受け止める。
「あんたなんかに…!」
「この星は、渡さない…!」
「あの子達の輝きは、私達が守ってみせる…!!」
「「ファイター!ヒーラー!メイカー!」」
「「「はぁああああ!!!」」」
そう言うとスターライツは、残った全ての力を、ギャラクシアへの攻撃に乗せた。
「!何だと…!?この私が、こんな奴らに…!」
3人の今までに感じた事のない星の輝きに、ギャラクシアは戸惑い、そしてついに、彼女達の力がギャラクシアの力を上回った。
「バカな…!っ…ぐぁああああ!」
スターライツの攻撃により、傷を受けたギャラクシアは、剣を地面に突き立て、片膝を着いた。
「やった…!」
「ギャラクシアに、一矢報いた…!」
「相手だって、不死身じゃないのよ!力を合わせれば、勝てる…!」
ギャラクシアは片腕から血を流し、少しふら付きながらもゆっくりと立ち上がると、怒りに身を任せ、己のエナジーを高め始めた。
「おのれ…っ…よくも、この私を……はぁっ!」
ギャラクシアは持っていた剣を地面へと突き立て、私達を睨み付けて来た。
「お前達のスターシードも奪おうと思ったが、最早許せん!私を傷付けた罪、万死に値する…!」
そう言うとギャラクシアが地面に突き立てた剣から、とてつもないエナジーが溢れ出し、地面は割れ、スターライツは後方へと吹き飛ばされてしまった。
「「「きゃあああああ!!」」」
「ファイター!メイカー!ヒーラー!!」
スターライツの3人は、吹き飛ばされた衝撃で全身を強く打ち付け、そのまま倒れてしまった。
「ふ…っ…他愛もない…止めだ!」
ギャラクシアがスターライツに向かって、剣を振り上げたその時、セーラームーンがスターライツとギャラクシアの間に立ちはだかった。
「お願い…もう止めて…?」
「止めて、だと…?」
セーラームーンの言葉に、ギャラクシアは眉を寄せた。
「ダメよ…っ…セーラー、ムーン…!」
「そいつは…スターシードすら持たない…っ…冷たい、悪魔なのよ…!」
「話の…っ…通じる相手、じゃないわ…!」
そんなスターライツの声に、セーラームーンは微笑んで彼女達に言った。
「そんな事ないよ…」
「え…?」
「私達、同じセーラー戦士だもの。傷付けば、同じ赤い血が流れるし、体だって、心だって痛いんだよ…」
「!」
ギャラクシアはセーラームーンの言葉に苛立ち、握っていた拳を震わせた。
「同じだと…?この虫けら共が!私はこの銀河に新たな未来を築く、神にも等しき存在なのだ…!」
「違うよ、そんなの…」
「何…?」
「それを望んでるのは、あなたじゃない…!シャイン!!」
私はセーラームーンの合図に頷くと、セーラームーンはエターナルティアルを、私はロッドを取り出し、それぞれギャラクシアに向かって構えた。
「あたし達が、」
「お前の中の混沌(やみ)を浄化し、」
「「元の姿に、戻してみせる!」」
私達のその言葉と同時に、辺りは温かい光に包まれた。
「!この光…」
「シルバームーン・クリスタルパワー!」
「コスモイノセントパワー!」
「…温かい…」
「この光が、あの子達の、本当の力…!」
「プリンセス…!」
私達の光が、ギャラクシアを包み込んだその瞬間、ギャラクシアは呻き声を上げ、混沌は浄化されたかと思った。しかし、私達の浄化技は、ギャラクシアには利いてはおらず、ギャラクシアは私達に向かって、再び剣を振り上げて来た。
「はぁ…っ!」
「「きゃああああああ!」」
「セーラームーン!」
「「セーラーシャイン!!」」
セーラームーンのティアルは、今の斬撃によって、2つに切り落とされてしまった。
「そんな…っ…」
「わかっただろう?何人たりとも、私を倒す事は出来ぬ!二度と輝きを放てぬように、貴様達のスターシード、切り裂いてくれる!死ねぇええ!」
そう言うとギャラクシアは剣を構え、私達に向かって来た。それにいち早く気付いたファイターが、私達の前に立ちはだかり、ギャラクシアから再び私達2人を守ってくれた。
「きゃああああ!」
「「ファイター!」」
「…っ…消させやしない…!この子達だけは…この子達の光だけは、絶対に守る!命に代えても…!」
「守る?笑わせるなぁああ!!」
ギャラクシアは再び剣を振り上げ、私達へと攻撃を仕掛けて来た。それを今度は、ヒーラー、メイカーの2人が、私達の前に立ちはだかり、庇ってくれた。
「ヒーラー!」
「メイカー!!」
「どいつもこいつも私の刃の前に飛び込み、死を選ぶと言うわけか…!」
私達の前に飛び出し、ギャラクシアの攻撃を受けるスターライツを、ギャラクシアは楽しそうな笑い声を上げながら見ていた。
そんなギャラクシアに、ヒーラーが静かに呟いた。
「…あなたにはわからない…」
「!何…?」
「こんなに優しい光を持っている子達が、消えていいはずないじゃない…!」
「希望の消えた世界なんか、見たくないものね…!」
「「ヒーラー!メイカー!!」」
「好きだったわ、あなた達の光…。…あなた達になら託せる!あたし達の希望、全てを…!」
「「ファイター…!」」
そう言うとスターライツは、ギャラクシアを強く睨み付けた。
「天翔ける、三つの流れ星が燃え尽きる…!これが最後の煌めきよ…あなたに見せてあげる!」
「ならば、その煌めき…漆黒の闇に変えてくれる!」
「ダメ!」
「お願い!危険な真似は止めて…!」
「「「はぁあああああ!」」」
しかし彼女達は、私やセーラームーンが止めるのも聞かず、ギャラクシアへと向かって行ってしまった。
「(お願い…銀河に希望の光を…!)」
「ダメ…ダメだよ……ダメぇえええええ!!」
セーラームーンの叫びも空しく、スターライツの3人は吹き飛ばされ、再び地面へと叩きつけられてしまった。
「止めだぁああ!!」
ギャラクシアが一番近くにいたファイターに向かって、剣を突き立てようとしたその時、セーラームーンが涙を流しながら、ファイターの前に立ちはだかった。
「!っ…スターシードが…」
「…エナジーを、解放するつもり…?」
「ギャラクシアの闇は、あたしが…照らして見せる!!」
セーラームーンがそう言うと、銀水晶は更にその輝きを増した。
「ほう…流石は、月のプリンセス…。銀河に類を見ぬ、美しい輝き……だが!はぁっ!」
「!きゃあああああああ!」
ギャラクシアがセーラームーンに向かって放った波動により、セーラームーンのスターシードは砕かれた。それにより、変身が解けてしまったうさぎは、ゆっくりと地面へと倒れて行く。
「!セーラームーン!!」
「「セーラームーン!!」」
「うさぎぃいいいい…!!」
「その程度の輝きしか持たぬスターシードで、私に対抗出来ると思ったのか!馬鹿め!!」
ギャラクシアは倒れ行くうさぎの姿を楽しそうに見ながら、彼女のスターシードである銀水晶をその手に奪うと、更に粉々に砕いた。
そんなギャラクシアの姿に、私を始めとする残された仲間達は、怒りと悲しみに震えた。
「!そんな…っ…」
「何て事を…!」
「私達皆で力を合わせているのに、何故勝てないの…!!」
「…っ……よくも…!」
私はゆっくりと、ふら付きながらも立ち上がり、ギャラクシアを睨み付けた。
「…何だその目は…?虫けらの分際で、生意気な!はぁ…っ!」
「!きゃあああああ!」
「「「シャイン!」」」
私の目付きが気に入らないギャラクシアは、私を後方へと吹き飛ばす。しかし、私は再び立ち上がり、ギャラクシアを睨んだ。
「っ…許さない…。あんただけは…っ…絶対に、許さない…!!」
「許さない、だと…?そんなボロボロのお前に何が出来る!愛する者も、この星も、何一つ守れぬお前に、何が!!!」
「っ…確かに、何も守れなかった…。私にはもう、何にも残ってない…。…それでも、私は諦めない…諦めたくない!!」
そう言うと私は、クイーンの格好へと姿を変え、己の中のエナジーを解放させた。
「!?何だと…!?」
「この星は…皆の未来は、私が守る…!!」
私は手に持っていたロッドを天高く掲げ、叫んだ。
「コスモイノセントパワー!」
その瞬間、私の力に連動するかのように、ちびちびちゃんから膨大な量のエナジーが溢れた。
「!?この光…」
「何て温かい…」
「優しい光…」
「体の底から…力がみなぎって来る…」
「!?何だ、この輝きは…!っ…まさか、遥か太古に放った希望の光が、目覚めようとしているのか…!」
「!!(と言う事は、ちびちびちゃんが…!)」
私はギャラクシアの放った言葉により、私の中でずっと燻っていた疑問が、ある結論へと達した。もしもちびちびちゃんが、遥か昔、混沌に呑み込まれる前に、ギャラクシアが宇宙に放った希望の光ならば、ちびちびちゃんの不思議な力も、彼女を包む謎の温かいオーラの理由も、全てに納得がいく。
「(お願い…!ちびちびちゃん、うさぎを助けて…!!)」
私が心の中でそう願ったその時、私達へと地面を伝い流れて来たエナジーが逆流を始め、ちびちびちゃんとうさぎの体を光が包んだ。
「!!…希望の光が、目覚める…」
「「「!?」」」
私の言葉に、スリーライツのメンバーは驚きの表情を見せた。
「そうはさせぬ…!」
そう言ってギャラクシアは、うさぎとちびちびちゃんを包んだ光へと斬りかかって行った。私は寸の所で、それをロッドの柄で受け止めた。
「っ…邪魔はさせない…!」
「退け!!この忌々しい光を、消し去ってくれる!!」
「させないって、言ってるでしょ…!!」
私はギャラクシアを跳ね返し、すぐに技を放った。
「フレイム・バースト!」
「利かん!!」
ギャラクシアは私の放った技を切り捨てると、再び斬りかかって来た。光を守る為に、それを避けるわけにはいかなかった私は、ギャラクシアの剣を再びロッドの柄で受け止めた。
「ちっ…小賢しい真似を…!」
「言ったでしょ…っ…希望の光は…消させやしない…!」
私がギャラクシアを睨み付けながらそう言ったその時、うさぎとちびちびちゃんを包んでいた光が消え、プリンセス姿のうさぎと、一本の剣が現れた。
「!あれは、封印の剣…!退けぇえええ!!」
「!!っきゃああああ!」
「「「シャイン…!!」」」
うさぎと共に現れた剣をその目に止めた瞬間、ギャラクシアは私をとてつもない力で吹き飛ばし、うさぎの元へと飛んだ。
「大丈夫、シャイン…?」
吹き飛ばされた私を受け止めてくれたスターライツは、心配そうな顔で私を見つめた。
「っ…うん、平気…。ありがとう、受け止めてくれて…」
そんな彼女達に、私は小さく笑い、お礼と共に大丈夫だと伝えた。それに安心した彼女達も、安心からか、ほんの少しだけ笑顔を見せてくれた。
その時、うさぎの下へと飛び立っていったギャラクシアが、すごい速さと音を立て、地面へと落ちて来た。
「!?何事…!?」
ギャラクシアが落ちた音に驚き、私達は音のした方を見つめた。煙が晴れ、漸く目にしたそこには、今までよりも更に強い暗黒のエナジーを纏ったギャラクシアがいた。
「……そう言うわけなのだな…。結局貴様も、剣と言う力を持って、私を封印しようと言うのだな…。しかし、力で私を倒す事は出来ぬ!この体は銀河系最強の戦士、セーラーギャラクシアのものだからな…!!」
「!!」
そう言うとギャラクシアの体は完全に闇に包まれ、漆黒に染まった。
「!何…!?この凄まじい、負のオーラは…」
「っ…混沌が…完全にギャラクシアの体を、支配した…!」
「「「!!何ですって!?」」」
私の言葉に、スターライツのメンバーは驚き、目を見開いた。
「覚悟しろ…セーラームーン!!」
「!うさぎ!避けてぇええ!!」
ギャラクシアがうさぎへと向かって飛んだ瞬間、私はうさぎに向かって叫んだ。しかし、うさぎはそれを避けず、持っていた剣で受け止めると、ギャラクシアを説得し始めた。
「っ…もう止めて…!戦う事に、意味なんてない…!」
「うるさい!!私は遍く星々のスターシードを手に入れ、全銀河を混沌(カオス)の名の下に支配する!」
「そんな事…っ…絶対にさせない!」
「まだ、そのような戯言を…!」
そう言うとギャラクシアの体を支配した混沌は、うさぎを圧倒的な力の差で押し負かし、うさぎは後方へと後退った。
「私がピリオドを打つのだ!銀河創世の昔より続いた、セーラーウォーズにな!その為に、全ての星の輝きには消えてもらう…!お前にも、セーラーシャイン!貴様も!そして、その忌々しい希望の光もだ!!」
「そんな事、誰がさせるもんですか…!シャインフレイム・レイザー!」
「無駄だぁああ!!」
私は混沌に向かって技を放つ。しかし、混沌は簡単にそれを消し去ると、今度は私へと向かって剣を振り、負の波動を放って来た。
「シャイン・シールド!」
私は混沌の放って来た波動を、技によって何とか凌いだ。
「っ…さっきまでのギャラクシアより、強い…!力が数段アップしてる…!」
「そんな…!」
「それじゃ、あたし達は、ギャラクシアには勝てないと言うの…!?」
「シャイン…!!」
スターライツのメンバーは、不安を宿した目で私を見つめて来た。
「…まだ、希望はある。希望の光がうさぎに託したあの封印の剣で、再び混沌を封じるか…もしくは、私が命懸けで、混沌を浄化するか……」
私の言葉に、スターライツは大きく目を見開くと、私の肩を掴んで言った。
「!?そんなのダメよ!!」
「そうよ…!あなたが死んだら、あの子は…!」
「それに、私達だって…!」
「っ……だったら、今はうさぎの剣に、賭けるしかない…!」
興奮する彼女達に落ち着いた声でそう言うと、私は空中でギャラクシアを説得しながら戦ううさぎを、ただ静かに見上げた。