最 終 決 戦(2/2)
「これで、終わりだ…」


ブレスレットを私達に向け構える2人を見て、ギャラクシアは勝ち誇ったような顔をした。


「はるか!みちる!」


その瞬間、私は2人の名前を呼んだ。その声に、ウラヌス、ネプチューンは再びその目に光を取り戻すと、ギャラクシアに向かってブレスレットの光球を放った。


「!?っ、あぁあああああ!」

「「「「!!」」」」


ウラヌス、ネプチューンの行動に、その場にいた私以外の全員が驚きを隠せずにいた。


「一体、どう言う事…?」


ファイターは驚きのあまり、ポツリと疑問の言葉を零した。


「…今までのは、全部彼女達の演技だったの。この時の為のね…」

「「「「え…?」」」」


その場にいた4人が、私に聞き返そうとしたその時、ギャラクシアの体を包んでいた光が消えた。しかし、ギャラクシアの体からスターシードは現れず、ギャラクシアは再び勝ち誇ったような表情を私達に見せた。


「!?」

「そんな…」

「スターシードが、現れないなんて…」

「直撃したはずだ…!」


スターシードがなくても平然とその存在を現しているギャラクシアに、私達は戸惑いを隠せずにいた。


「…まさか、私のブレスレットに支配されない者がいたとは…。この広い宇宙で、貴様らのような戦士には初めて会ったぞ…!」


そんな戸惑う私達に、ギャラクシアはそう言うと、ウラヌス、ネプチューンの2人を睨んだ。


「…奴には、スターシードがないのか…?」

「そんな……っ!まさか、過去にギャラクシアが、宇宙の彼方へと放った希望の光と言うのは…!」

「「「「!?」」」」

「ギャラクシアの、スターシード…?」

「!?…それじゃあ、僕達は一体何の為に…!」


ネプチューンはショックのあまりその場に座り込んだ。


「…仲間のスターシードを奪い、自らも死を覚悟して私の配下に下り、愛する者に刃を向けてまで、反撃の気を窺っていたと言うのか…。くっ…まんまと騙されたぞ!全く、この星の連中は私を楽しませてくれるな…!」


そう言うとギャラクシアは、私達を見下すようにして高笑いを漏らした。そんなギャラクシアに、ウラヌスは握った拳を震わせた。

「……これまでね…」

「…僕達にはもう、青空を飛ぶ翼はない…。あるのは、裏切りの血で汚れた手…」

「…わかってるわ…」

「全ては無駄な足掻きだったわけか…」


そう言うとギャラクシアは、何の迷いもなく、2人から己のエナジーを封じ込めたブレスレットを奪った。


「…それと、己を啄む、嘴か…」

「!!はるか…!みちる…っ…!!」


ブレスレットを奪われ、力なく倒れたウラヌスとネプチューンの元へ、私はすぐに駆け寄り、はるかの体を抱き起こし、みちるの手を強く握った。


「はるか!みちる!しっかりして…!!」


今にも消えかけている2人に、私達の方へと駆け寄って来たセーラームーンは問い掛けた。


「どうして、こんな事…」

「……それが僕達の…っ…やり方、だから…」

「私達に課せられた…戦士の、十字架……」


苦しそうにそう答える2人に、セーラームーンは泣きながら言った。


「そんな…っ…酷いよ…。ちゃんと言ってくれないからあたし…2人はもう、友達じゃないんだって……最後まで信じる事が、出来なかったよ…っ…」


そんなセーラームーンの背後から、ファイターがウラヌス達に声を掛ける。


「っ…何よ…散々偉そうな事言って……あたしは許さないわよ!あなた達が消えたら、セーラームーンとセーラーシャインはどうなるの!?」


ファイターの問い掛けに、ウラヌスが苦しそうに呼吸しながらも答える。


「っ…ファイター……お前が、守ろうとしてるものは…っ…宇宙でも…未来、でも…平和でも…っ…ないんだろう?」

「!…っ……」

「…だったら…っ…今度は、お前が…守ってやれ…」

「ウラヌス…」


それからウラヌスは、そっと私の頬に手を添え、言った。


「…っ…すまない、夏希……」

「…ずっと、側に…いられ…っ…なくて…」

「そんな事言っちゃやだよ…!2人共、今度はずっと一緒だって…今度こそ、幸せになろうって、約束したじゃない…っ…!」


私は泣きながら、2人にそう言った。はるかは、そんな私の涙をそっと拭うと、苦しそうにしながらも、小さく微笑んだ。


「…泣き顔まで…っ…可愛いな、夏希は…」

「当然、でしょ…?っ…私達の…夏希は…どんな、表情…だって…世界一、なんだから…」

「…っ…そう、だな…」

「もう…っ……こんな時に、何言ってんの…?」


こんな時にまで、私を甘やかす2人に、私は涙を流しながらそう言った。そんな私に、みちるが苦しそうにしながらも、小さく微笑み言った。


「バカね…っ…こんな時、だからよ…」

「みちる…っ…!」


私はみちるの手を強く握り締め、彼女を見つめた。


「…夏希…」

「っ…何…?はるか…」


はるかの呼び掛けに答えた私は、涙を流しながらも、精一杯の笑顔で見つめた。


「…最期に、夏希に…触れたい…っ…」

「っ…うん…」


はるかの言葉に、私は皆が見ているのにも構わず、そっとはるかに口付けた。


「はは…っ…しょっぱい、な…」

「…誰のせいで…っ…!」

「…っ…僕達、だな…」

「…夏希…私達は…っ…あなたが、大好きよ…?」

「…いつかまた…どこかで、会えたら……っ…その時は、一緒に…なろう…」

「うん……っ…約束、ね…?」

「あぁ…っ……愛してる……夏希…」


今にも消えそうな声でそう言い残すと、はるかとみちるは光となり、私達の前から消えてしまった。


「…っ…ぅ、あぁああああああ!!」


誰よりも大切だった人達が目の前で消された私は、この時生れて初めて、誰かの前で大声を上げ泣き叫んだ。



―――――



はるかとみちるが消え、深い悲しみの中にいた私を、ヒーラーとメイカーがそっと抱きしめた。


「シャイン…」


そんな私達になど構わず、ギャラクシアは見下すような目で私達を見ながら言って来た。


「残るスターシードは貴様らだけだ。ここまで手こずらせた褒美に、私が直々にスターシードを抜いてやろう!」


そう言ってブレスレットを構えるギャラクシアに、誰よりも早くファイターが反応し、ギャラクシアに向かって技を放つ。


「スター・シリアス・レイザー!」


しかし、やはりギャラクシアに彼女の技が通じる事はなく、呆気なくファイターの技は打ち消され、ギャラクシアは天に向かって指を差すと、黒い雷を呼び、私達がいる場所へとそれを落として来た。


「!!シャイン!」


力なく項垂れる私をヒーラーとメイカーが抱きかかえ、その場から飛び去り、崩れた瓦礫の陰へと身を隠した。


「諦めろ。大人しく出て来て私の前に跪け!だが…今暫く猶予をやろう…。仮にもプリンセスとクイーンならば、無様に無理矢理奪われる前に、自分から姿を現せ!」


姿の見えない私達に向かって、ギャラクシアはそう言った。


「……ギャラクシアの言う通りにすれば、まもちゃんや皆に、また会えるのかな…?」


セーラームーンは、そんな弱気な言葉を口にした。


「「え…?」」

「セーラームーン!この星を、未来の為に、大切なものの為に、守るんじゃなかったの!?」

「っ…この星にもう、大切なものなんてない…!!…皆、消えちゃった…まもちゃんも、亜美ちゃんも、レイちゃんも、まこちゃんも、美奈子ちゃんも、ほたるちゃんも、せつなさんも…そして、はるかさんと、みちるさんも……もう、皆いないんだよ!?」


はるかと言う名に、私は敏感に反応した。それに続けて、私はファイターの言葉に耳を傾けた。


「セーラームーン!!プリンセスのあなたが、そんな弱気な事を言ってどうするの!?消えて行った人達は、皆あなたとシャインを信じて…あなた達にこの星の未来を託して消えて行ったのよ…!?」

「(私達に、この星の未来を、託して…)」

「そんな事言ったって…!1人じゃ、戦えないよ…」

「…あなたは1人じゃない…」

「え…?」

「あなたには、あたしが…あたし達が付いてる…」

「もちろん、シャインの側にもね…」


そう言ってヒーラーは、私の手をそっと握り、微笑んだ。


「ヒーラー…」

「大切なものを奪われたのなら、また取り返せばいい…。いつものあなたなら、そう言うんじゃないかしら?」


そう言ってメイカーも、ヒーラーとは反対の私の手を優しく握った。


「メイカー…」

「あなた達は1人じゃない…。あたし達が側にいる。…それに、消えて行った皆だって、姿は見えなくても、ずっとあなた達の側にいるわ…」


ファイターはそう言うと、そっとセーラームーンを抱きしめた。


「……皆が本当に消えてしまう事があるとすれば、それはあなた達が諦めた時…。…最後まで諦めなければ、いつかきっと…また彼女達に会えるわ…」

「ファイター…………うん…守ろう…。この星を…この星の未来を…!」


セーラームーンの言葉に、その場にいた全員が頷き、立ち上がった。


「(…絶対に諦めない…。はるかとみちるが…皆が信じた未来を…!この命に代えても、必ずこの星を、皆を救ってみせる…!)…行こう!ギャラクシアとの…いいえ、混沌との最後の戦いへ…!!」
to be continued...
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