最 終 決 戦(1/2)
ウラヌスの手によってスターシードを抜かれてしまったサターン、プルートが消え、悔しさと悲しみで俯いたまま震える私に、ウラヌスは問い掛けた。


「こんな風に消えたくはないだろ?だったら、さっさとスターシードをギャラクシアに渡し、このブレスレットの力で、僕達と一緒に生きよう…」

「そうすれば、私達とあなたは、永遠に一緒にいられるわ…」

「……そうだね…」

「!?シャイン…!?」


私は俯いたまま、少しふら付きながらも何とか立ち上がった。そんな私を、セーラームーン、スターライツが不安そうな目で見つめる。


「スターシードをギャラクシアに渡して、そのブレスレットをすれば、ウラヌスやネプチューンとずっと一緒にいられる…」

「そうだ。誰にも邪魔させない…。僕達はずっと一緒だ…」

「…出来る事なら、そうなりたいな…」

「出来るわ…。あなたがギャラクシアにスターシードを渡し、忠誠を誓いさえすればね……簡単でしょ?」


ウラヌスに続き、ネプチューンも私をギャラクシア側に付かせようと言葉を掛ける。


「うん…すごく簡単。はるかやみちると、ずっと一緒にいたい…」

「なら…」

「でも、私はギャラクシアに忠誠なんて誓わない。私は諦めない!最後まで戦い続ける!それがどんな結果になろうとも、辛く悲しい犠牲を生もうとも、私は全てを受け入れる!私には、太陽系を守ると言う使命があるの!だから絶対に最後まで諦めたりしない!どうせ死ぬのなら、最後まで太陽系を守るクイーンでありたい…!」

「!シャイン……うん…。私も戦う…!最後まで、諦めたりしない!必ずこの星を、未来を救ってみせる!」


私はウラヌスの言葉を遮り、自分の気持ちを彼女達に伝えた。そんな私の言葉に、セーラームーンは頷き、立ち上がった。


「…そうか。残念だな…」

「悲しいけれど、シャイン達とはここでお別れのようね…」

「そのようだな…。せめて最期は、僕達の手で、苦しまないようにスターシードを奪ってやろう…」

「ええ…。シャイン!セーラームーン!あなた達のスターシード、頂くわ!」

「待て。」


ウラヌスとネプチューンがブレスレットを構えた瞬間、ギャラクシアが2人に制止の声を掛けた。


「…セーラーシャイン、セーラームーン。貴様達、まだこの星を救おうと言うのか…?いや…救えると思っているのか?」

「…思ってるよ。」

「それが何か…?」

「こんな星を救ってどうする?もうここには、貴様達の愛する者も、大切なものも、何一つ残っていないのだぞ?」

「そんな事ないよ…」

「…確かに、私達の一番大切な人達は、もう側にはいない。でも…!」

「この星には、皆と一緒に過ごした想い出が、たくさん残ってる!」

「はっ…想い出だと?そんなもの、何になると言うのだ!!」

「何にもならないよ。でも、大切なものには、変わりないから…」

「私達は、その大切なものを守る為に戦う。どんなに不利な状況でも、どんなに相手が強かろうと、絶対に諦めたりしない!」

「世迷言を……セーラーウラヌス!セーラーネプチューン!スターシードは後だ!こいつらに現実と言うものを教えてやれ!」


ギャラクシアはそう言い残し、この空間から出て行った。


「寿命が少し伸びてよかったな、シャイン、セーラームーン…」

「でも、本気で来ないと、どちらにしろ死んじゃうわよ…?」

「嘗めないで欲しいわね…。私を誰だと思ってんの?太陽系最強の戦士、セーラーシャインよ!ウラヌスとネプチューンがいくら強くたって、あなた達が私に勝つなんて、絶対に無理なんだから…」

「ふっ……流石、僕達のシャインだな…。こんな時まで威勢がいいとは……ワールド・シェイキング!」

「ディープ・サブマージ!」

「フレイム・バースト!」

「スター・シリアス・レイザー!」


ウラヌス、ネプチューンの技と、私、ファイターの技がぶつかった。その瞬間、大きな力のぶつかり合いにより、力の暴発が起き、私達は全員、その場から吹き飛ばされてしまった。



―――――



『夏希…!夏希…!!』

「!ここ……あれ…?戦いは?ギャラクシアとの戦いは、どうなったの!?」

『何言ってるんだ…。そんなの、もうとっくの昔に終わっただろう…?』

「…あ、れ…?」

『パパ、ママ起きた?』

「!希望…!?どうして……あなた、未来に帰ったはずじゃ…?」

『?未来…?何言ってるのママ…?のんは、ずっとここにいるよ?』

「え……?」

『まだ寝ぼけてるのか…?早く目を覚ましてくれよ…僕のお姫様…』

『あー!!パパったら、またママにちゅーしてる!!ママはのんのだって言ったでしょ!!』

『悪いが、夏希は誰にも譲れないな…。例え相手が、自分の大切な娘だとしても……僕達の愛は、永遠だ。な、夏希…?』

「はるか…」


そう言ってはるかは、希望が見ているのにも関わらず、再びゆっくりと顔を近付けて来た。それに対し私も、ゆっくりと目を閉じ、はるかが来るのを待った。しかし、いくら待ってもはるかの唇が触れる事はなく、私は閉じていた目を開いた。


「はる、か…?希望…?2人とも、どこ…?」


私は先程まで眠っていたベッドから抜け出し、部屋の中を見回せど、どこにもはるかと希望の姿はなくて、部屋には私と家具だけが、静かにポツリと存在していた。



―――――



「はるか…!…ぃ…っ……」


飛び起きた瞬間、体中に走った激痛に私は顔を歪めた。


「…夢、か……そっか…希望も、はるかも…もう……っ…」


私は落ちていた気分を、無理矢理切り替えると、回りをざっと見まわし、現状を確認する。


「ここは……スタジオの、中…?さっきまでいた場所では、ないし……っ!皆は…!」


私は何とか立ち上がり、暗いスタジオの中を皆がいないか辺りを探した。しかし、痛む体と、真っ暗な視界の中では、探すのにも限界があって、皆の姿を見付ける事は出来なかった。


「!…ぅ…っ……」


それから私は壁に寄り掛かり、体を少し休ませた。そして私は、さっきまで見ていた夢の事を思い出す。


「…さっきの夢…何であんなにリアルだったのかな……っ……はるか…」

「僕を呼んだかな?お姫様…」

「!!」


私はその声に反応し、痛む体に鞭を打ち、声の方へと体を向け、少し距離を取ると即座に構えた。


「…悲しいな。誰よりも愛してる君に、そんなに警戒されるなんて…」

「仕方ないでしょ?今のウラヌス、何するかわかんないもの…。私一応、あなたに命狙われてるわけだし?」

「…それもそうだな……。それで、大人しくスターシードを渡し、僕達と生きる決心は付いた?」

「誰が…。ウラヌスが一番良くわかってるでしょ?私が頑固だって事…」

「ま、そうだな…」

「っ…ん……」

「!?」


ウラヌスが小さく笑ったその時、私は背後から突然聞こえた声に、後ろを振り返った。


「…ここは…」

「!セーラームーン!?ちびちびちゃんも…!」


私が振り返った先にいたのは、ちびちびちゃんを腕に抱きかかえたセーラームーンだった。セーラームーンは、私の姿を見付けるなり、心配そうな顔で私の元へと駆け寄って来た。


「!シャイン!よかった…無事だったのね!」

「まあ、一応はね。体は傷だらけだけど…」


セーラームーンの言葉に、私は苦笑を漏らしながらそう答えた。


「…感動の再会は、終わったかな?」

「!ウラヌス!ねぇ、本当の事言って?何か考えがあって、こんな事してるんでしょ?わかってるんだから、これが全部お芝居…」


セーラームーンの言葉を遮るように、ウラヌスはセーラームーンの頬を叩いた。


「!ウラヌス…!」

「これは現実だ!夢でも芝居なんかでもない…甘い幻想なんて捨てろ!」


叩かれた頬に手を当て、セーラームーンはウラヌスの言葉を大人しく聞いた。


「……信じないよ…あたし…。2人は絶対、あたし達を…夏希ちゃんを裏切ったりしない…!」

「それはどうかな…」

「私達、目的の為なら、何だってするのよ?」


ウラヌスの言葉に、どこから現れたのか、ネプチューンが続けた。


「!ネプチューン…!お願い2人共!こんな事、もう止めて…!」

「そうだな…。もう、終わりにしよう…」

「そうね…。これ以上やったって、結果は同じですもの…」


そう言うとウラヌス、ネプチューンの2人は、技を出そうと構えを取った。


「ワールド」

「ディープ」

「「シェイキング!(サブマージ!)」」


2人の声が重なり、技が放たれた瞬間、私達2人の前にスターライツの3人が現れ、ウラヌス、ネプチューンの技から私達を庇ってくれた。


「「「きゃああああああ!」」」

「ファイター!メイカー!ヒーラー!」


ファイター、メイカー、ヒーラーの3人は、痛みに悲鳴を上げながらも、私達を離す事なく、身を呈して2人の攻撃から守ってくれた。


「そんな…ファイター!メイカー!ヒーラー!しっかりして…!」


ギャラクシアの力によってパワーアップした2人の攻撃によって、私達は建物の外へと、再び吹き飛ばされてしまった。


「ファイター!メイカー!ヒーラー!」

「お願い!目を覚まして…!」


私とセーラームーンは、私達を庇って気を失ってしまった彼女達に必死で声を掛けた。


「!…ぅ……っ…」

「!ファイター!!」


私達の必死の呼び掛けに、ファイターが意識を取り戻す。それに続いて、メイカーとヒーラーも意識を取り戻した。


「よかった…っ…!」

「っ…2人、共…大丈夫、だった…?」

「それはこっちの台詞よ…!」

「…どうやら…っ…」

「っ…大丈夫、そうね…」

「皆が守ってくれたおかげだよ…ありがとう…」


セーラームーンは、スターライツの3人に小さく笑ってお礼を言った。そんな彼女に、スターライツの3人も小さく笑みを零した。その時、私達を見下ろすように立っているウラヌス、ネプチューンの後ろから、ギャラクシアが姿を現した。


「ギャラクシア…!」

「どうだ…この星を救えるかもしれないなどと言う、甘い夢からは醒めたか?」

「夢なんかじゃない!絶対…!」

「愚かな…。周りの街を見るがいい!」


ギャラクシアの言葉に、私達は建物の下に広がる街を見下ろした。


「!そんな…」


私達の眼に映ったのは、空だけではなく、暗黒に包まれた街だった。スターシードを抜かれてしまった街の人々はファージと化し、街中を暴れまわっていた。


「どうだ!この素晴らしい光景は!」


街の状態に戸惑いを隠せない私達に、ギャラクシアは楽し気に言った。


「こんな…」


私はその場に立ち尽くし、セーラームーンは地面に膝を着き、変わり果ててしまった自分達の街を見て絶望を感じた。


「最早全銀河は私の手に落ちたも同然…。どう足掻いた所で、貴様らに勝ち目はない!」


そんな私達を守るように、スターライツの3人が再び私達の前に立ちはだかった。


「驚いたな…まだ諦めていないと言うのか…」

未だに星を救えると信じ、立ち向かう彼女達を見て、ギャラクシアは馬鹿にしたような笑いを漏らした。


「…何が出来ると言うのだ!今の貴様らに、何か出来る事があると言うのか…!!馬鹿め!」


ギャラクシアの言葉に、何も返す事が出来ず、スターライツの3人は黙り込んでしまった。そんな3人に変わって、私がギャラクシアの言葉に答えた。


「…出来るよ…。私は、最後まで諦めない…。きっとこの星を救えるって信じてる!ううん…この命に代えても、絶対に救ってみせる!」

「「「!!」」」

「!シャイン…」


私の言葉に、ギャラクシアは気分を害したのか、私を強く睨み付けた。


「くどい!貴様ら程度の力では、私には到底敵わん!!セーラーウラヌス!セーラーネプチューン!奴らのスターシードを奪うのだ!!」


ギャラクシアの言葉に、光の宿っていない目をしたウラヌス、ネプチューンは私達の方へと体を向けた。
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