- 使命の為に
- あれからギャラクシアの元へと向かった私達を、ギャラクシアは玉座に座り、亜美達から奪ったスターシードを眺めながら待っていた。
「…漸く来たか、虫けらども…。さあ、貴様達のスターシードも渡せ!」
「誰があんたなんかに渡すもんですか…!」
私達は、ギャラクシアのブレスレットから放たれた光球を避け、私と外部戦士達がすぐにギャラクシアへと攻撃を仕掛ける。
「スペース・ソード・ブラスター!」
「ディープ・サブマージ!」
「デッド・スクリーム!」
「フレイム・バースト!」
「ふん、小賢しい!」
しかし、私達4人の技を、ギャラクシアはいとも簡単に消し去り、ブレスレットから光球を放って来た。
「サイレント・ウォール!」
光球が当たる直前、サターンがバリアを張り、私達を守った。
「っ…まるで刃が立たないなんて、切れ味が鈍ったかな…」
「あら、刃物のせいにするつもり?」
「刃物じゃなくて、ウラヌス自身の切れ味が落ちたんじゃないの?」
「僕の切れ味は、落ちてないつもりだけど…?」
「本当に?」
「試してみる?」
「…また今度、ゆっくりとね…」
そんな冗談交じりの会話をしながらも、私達は再び構えた。そんな私達を余所に、スターライツの3人も、それぞれギャラクシアに向かって技を放つ。
「スター・シリアス・レイザー!」
「スター・ジェントル・ユーテラス!」
「スター・センシティブ・インフェルノ!」
「無駄だ!はぁ…っ!」
「「「きゃああああああ!」」」
ギャラクシアに跳ね返された攻撃により、スターライツは後方へと吹き飛ばされた。
「ファイター!メイカー!ヒーラー!」
セーラームーンは、ちびちびちゃんを抱えたまま、後方へと吹き飛ばされてしまった彼女達へと駆け寄った。
「っ…ウラヌス!」
私は彼女達を心配しながらも、ウラヌスに指示を出し、私自身もロッドを取り出し、ロッドの先をギャラクシアに向けた。
「ワールド・シェイキング!」
「シャインフレイム・レイザー!」
「甘い!」
そう言うとギャラクシアは、再び私達の技をいとも簡単に打ち消してしまった。
「ちっ…やはりダメか…」
「ふん…貴様らが束になって掛って来ようとも、私に指一本触れる事すら出来ぬ!」
「ならば、太陽系の平和を乱す者は、この命に代えても消去する…!」
サターンの言葉に、突然ギャラクシアは笑い出した。
「何がおかしい!?」
「何も知らぬのだな……お前を復活させたのは、誰だと思っているのだ…?」
「!何ですって…?」
「思い出してもみろ…。転生して間もない貴様が、戦士として復活したわけを……」
「!?まさか…!」
「そうとも…!闇の女王、ネヘレニアを復活させ、貴様に覚醒を促し、そしてセーラーシャイン!!死の世界で次の転生の時を待ち、眠っていた貴様を呼び起こし、再びこの世界に戻してやったのはこの私だ!」
「な…っ…!?」
ギャラクシアの言葉に、その場にいた全員が驚愕の表情を見せた。
「ネヘレニアを復活させ…」
「ほたるの覚醒を促し…」
「この時代に、再び夏希をそのままの姿で甦らせたのは…」
「全部、ギャラクシアだと言うの…?」
「…そんな…っ…」
混乱する私達に構わず、ギャラクシアは言葉を続けた。
「私の狙いは、全銀河のスターシードを収穫する事。…その為には、熟していないスターシードがあっては、困るのでな…。災いを与え、貴様達を覚醒に導いたというわけだ…。闇の女王は喜んで協力してくれたぞ…?お前達に復讐する為にな!!」
「っ…嘘よ!あなたが誑かしたんでしょ!?妬みや嫉みを煽りたてて…!」
「…っ…黙れ!!」
サターンの言葉に、ギャラクシアは怒り、私達に向かって攻撃を放って来た。突然の攻撃に反応が間に合わなかった私達は、スターライツ同様、後方まで吹き飛ばされた。
「「「「「きゃあああああ!」」」」」
「シャイン!ウラヌス!ネプチューン!プルート!サターン!!」
セーラームーンはちびちびちゃんをスターライツに預け、吹き飛ばされた私達の元へと駆け寄って来た。
「…ぅ……っ…」
「皆…!!」
セーラームーンは私の体を抱き起こし、傷だらけになり、倒れている戦士達を心配そうに見つめた。
「全銀河はこの私のものだ!!どう扱おうと、私の自由だ…!」
「…っ…なるほど…。流石はギャラクシア…銀河制覇を語るだけの事はある…」
ウラヌスは、痛む体を何とか起こし、彼女を見つめた。
「やっと私の強大さがわかったか…だがもう遅い。お前達はスターシードを抜かれ消え去る運命……。もっとも、別の道もない事もない…」
「…是非、聞きたいね…」
ウラヌスのその言葉に、誰よりも早く私とネプチューンが反応した。
「「!!」」
「簡単な事だ……私の配下になれ!」
「な…っ…」
「何ですって!?」
「お前達のスターシードを差し出し、私への忠誠を誓うのだ!私のエナジーを封じ込めたこのブレスレットがあれば、スターシードを抜かれても、生き続ける事が出来る…」
「あれが、ギャラクシアのエナジーの源…」
「っ…はる、か…(まさか…)!」
私は体に鞭を打ち、セーラームーンに支えられながらも、何とか起き上った。
「さあ、降伏か、死か、どちらを選ぶ!」
「誰があなたなんかに…!」
「私達は、私達のプリンセスにのみ忠誠を誓う!」
「バカにしないで!!」
「あなたに従うくらいなら、死んだ方がマシです!」
「そうよ!あなたなんかに、私達のスターシードは渡さない…!」
ファイター、メイカー、ヒーラー、プルート、サターンがそれぞれ否定の言葉を口にした。そんな中、ウラヌス、ネプチューンだけは、皆と違う答えを導き出した。
「おもしろい。」
ウラヌスのこの発言に、その場にいた私以外の人間は、驚愕の表情を見せた。
「ウラヌス!?」
「そのブレスレットをすれば、生きていられるんだろ?」
ウラヌスの問い掛けに、ギャラクシアはただ黙って頷いた。
「ギャラクシアの配下になり、暴れまわるのも悪くない…。シャイン、僕は君と一緒にいられるなら、悪魔に魂を売り渡す事にだって、躊躇いはないさ…。それに、ギャラクシアは、僕達に大切なお姫様を取り返してくれた恩人でもあるしな…」
「…そうね…」
ウラヌスの言葉に、ネプチューンは小さく笑うと同意の言葉を口にした。
「な…っ…」
「あなた達、本気で言ってるの!?」
「ギャラクシアに降伏したら、あなた達の大切なシャインはどうなるのよ!?」
「もちろん、誰よりも早くスターシードを頂き、ギャラクシアのブレスレットで、3人一緒に生きながらえるさ…」
「そんな…っ…ウラヌス、ネプチューン、どうして…!?私達と一緒に、ギャラクシアと戦ってくれるんじゃなかったの!?」
「共にこの世界を、輝かしい未来を守ると言ったのは、嘘だったのですか!?」
「ウラヌス!ネプチューン!!」
私以外の戦士達が、ウラヌス、ネプチューンの2人を問い詰める。その問いに、ウラヌスが口を開いた。
「うるさい!もう疲れたのさ…この戦いに…。ギャラクシアの強さは、お前達も痛感したはずだ…」
「この戦いから確実に生き残り、これからもシャインと共にいられるようにする為の方法は、これだけなのよ…」
「さあ、取れよ。」
ウラヌス、ネプチューンは両手を広げ、目を閉じた。
「賢い選択だな……貰うぞ!貴様達のスターシード!!」
「ウラヌス、死ぬまで一緒よ…」
「あぁ…地獄で会おう。」
「ウラヌス!ネプチューン!!」
セーラームーンが2人の名前を叫んだと同時に、光球が彼女達の体を貫き、彼女達からスターシードを抜き取った。
「「っ、あぁあああああ!」」
「(はるか…みちる…っ…!)」
「そんな…っ…ウラヌス!ネプチューン!!」
セーラームーンは叫ぶように彼女達の名前を呼び、私は誰にもバレないようにそっと拳を握った。
ギャラクシアは彼女達から奪ったスターシードを満足げに見つめた。
「なるほど…素晴らしい輝きだ。…受け取るがいい、我がエナジー!!」
ギャラクシアのその言葉と同時に、ウラヌス、ネプチューンの両腕には、ギャラクシアと同じブレスレットが装着された。
「「!!」」
「感じる…これが、ギャラクシアのエナジー…!」
「なるほど…想像以上のエナジーだ…」
「立ち上がれ、セーラーウラヌス!セーラーネプチューン!手始めに、その者達のスターシードを奪うのだ!!」
「まさか…」
「そんな…っ…!」
「っ…シャイン!」
セーラームーンが、私を縋るような目で見つめた。そんなセーラームーンを横目に、私は立ち上がると、何の迷いもなく皆に言い放った。
「…っ…どんな犠牲を払っても、どんな辛い結果が待っていようとも、この星を守る為、未来を守る為に戦うって言ったはずよ…。太陽系のクイーンの名の元に、星を裏切り、敵に落ちた者は排除する!!」
私の言葉に、その場にいた全員が驚きを隠せずにいた。
「シャイン!本気なのですか!?」
「きっと、他にも方法が…!」
「そんな方法はない。あったとしても、2人のスターシードはギャラクシアが持ってる…。もう、ウラヌスとネプチューンを倒すしか、方法はない…!」
私はついさっきまで共に戦って来た、大好きな2人を睨むように見つめた。
「いいね…。久しぶりだな、シャインのそんな目を見たのは…」
「本当…。ぞくぞくするわね…」
「ウラヌス!ネプチューン!本気で来ないと、怪我だけじゃ済まないわよ…!」
「それはこちらの台詞よ…!」
「楽しみだな…。君と手合わせなんて、一体何年振りかな…!」
「…さあ?最後に戦ったの、何年前だっけね…っ…!」
私はウラヌスの拳をしゃがんで避けると、彼女の足元を掬おうと、地面に手を着き回し蹴りを繰り出した。
「余所見してると、痛い目に遭うわよ?」
そう言うとネプチューンは、サターン、プルートに向かって技を放った。
「「!!」」
2人はそれを避け、私と戦っているウラヌス、そして構えを取るネプチューンに向かって再び問い掛ける。
「何故です!何故、私達が戦わなければならないのです!?」
「わかってるはずだ…!」
「これが、私達の戦い方なのよ…っ…!!」
そう言うとネプチューンは再び2人に向かって攻撃を仕掛けた。
「!まさか…っ(ウラヌス!ネプチューン!)」
「っ…彼女達は、本気…!!」
ネプチューンの攻撃を避けたサターン、プルートは、互いにアイコンタクトを取ると、それぞれ武器を構えた。
「それならば!」
「私達も本気でお相手致します!」
「「何を犠牲にしても、プリンセスと、この星を守る為に…!」」
そしてサターン、プルートの2人は、ネプチューンに向かって行った。
「っ…止めてぇえええ!!」
「…どうして、こんな事が…」
「同じ星の戦士なのに…」
「星を裏切り、愛する人とまで戦うなんて…」
セーラームーンは叫び、スターライツは、ただ茫然と戦っている私達の姿を見ていた。
「はぁ…っ!!」
「おっと、どうした?今日は切れがないな…切れ味落ちた?」
「ちょっと!私の台詞、パクんないでよね…っ!」
「たまにはいいだろ?はっ…!」
私はウラヌスの蹴りを避け、後方に下がると、彼女との距離を取った。
「…もうそろそろ、夏希のスターシードを貰えるとありがたいんだけど?」
「は…っ…誰があげるもんですか!」
「そうか…それは残念…。それなら、力尽くで頂く!!」
ウラヌスは私にブレスレットを向けると、迷わず光球を放って来た。
「!しまった!!」
「「シャイン!」」
光球が私の体を貫く直前、サターンとプルートが私の体を突き飛ばし、私の代わりにスターシードを抜かれてしまった。
「「あぁあああああ!!」」
「っ…サターン!プルート!」
「「「!!」」」
「!ほたる!せつな!!」
地面へと崩れ落ちた2人に、私はすぐに駆け寄った。
「無事で…よか、た…」
「あなたの、光で…っ……彼女に、巣食う…闇を……!」
「ほたる!!せつな!!」
「っ…泣かない、で…?夏希…お姉、ちゃん…」
「あなたは…1人、じゃ…ない…っ…」
「いつも、側には…っ…あたし…達が……」
そう言うと2人は、今までの皆と同じく、光となり、私達の前から姿を消した。
「ゃっ…嫌…嫌ぁああああああ!!!」
サターン、プルートが消え、残された私達の間には、セーラームーンの悲痛な叫びが響き渡った。
to be continued...