- 別 れ
- 火球が消えて、少し経った。黒い雷が街を破壊し、人々を恐怖のどん底へと誘い、世界は今、ギャラクシアの手によって、確実に終焉の時へと向かっていた。
「同じだわ…あたし達の星と!」
「この星も、もうすぐ滅びる…」
「…そうはさせない。」
ヒーラーとメイカーの呟きに、私は言った。その声に反応して、3人が私の方へと顔を向けた。
「そんな事、私が絶対にさせない。この星も、太陽系の星々も、銀河も、未来も全部、私が守る!どんな手を使って、何を犠牲にしてでも、必ず…!!」
「無理よ!いくらあなたが強くたって、あなた1人の力じゃ…!」
私の言葉に、メイカーが言う。しかし、私は笑って彼女に言った。
「1人じゃないよ…」
「そう。シャインの側には、いつも僕達がいる…」
「この子を守り、共に戦うのが、私達の使命だから…」
「何言ってるの…使命じゃなくても、ピッタリくっついて離れない癖に…」
「あら、当然でしょ?」
「僕達は、シャインの事が好きで好きで仕方ないんだから…。な、ネプチューン?」
「ええ…」
ウラヌスとネプチューンはそう言うと、そっと私の肩を抱き、私に向かって優しく微笑んだ。
「だとしても…!」
「大丈夫、私達を信じて…?」
私はスターライツの3人に向かって微笑んだ。
「…マーキュリー、敵のアジトの場所掴めた?」
「もう少し待って…この電波の発信源は……銀河テレビよ!!」
「わかった。ありがとう、マーキュリー。」
マーキュリーに敵のアジトの場所を聞いた私は、皆に背を向け歩き始めた。それに続き、ウラヌス、ネプチューンも皆に背を向けた。そんな私達に、ファイターが制止の声を掛ける。
「…待って!」
「ん?」
私達は一度立ち止まると、後ろを振り返った。
「…お願い!私達も、あなたと一緒に行かせて!」
ファイターが真剣な目で私を見つめる。そんなファイターを見たメイカー、ヒーラーの2人も、同じく真剣な表情で私を見つめ言った。
「プリンセスの仇を取りたいの…!」
「あたし達だけじゃ無理だけど、シャイン…あなたと…あなた達となら…!お願い、あたし達にも協力させて…!」
3人の真剣な目に、私は小さく笑みを浮かべると言った。
「…うん、いいよ。一緒に行こう?」
「ありがとう、セーラーシャイン…」
「ウラヌス、ネプチューン、いいよね?」
私がそう2人に聞くと、2人は諦め混じりの少し困ったような顔で、小さく笑った。
「…もう決めたんだろ?」
「だったら、何も言わないわ。嫌だって言ってシャインを説得する方が、骨が折れるもの…」
「だよね!それじゃあ、6人で…」
「シャイン!」
「私達の事もお忘れなく…」
私が行こうと言おうとした瞬間、名前を呼ばれ、私は後ろを振り返った。
「サターン!プルート!」
「私達も一緒に」
「外部太陽系戦士として戦わせて?」
「うん!ありがとう、2人とも!それじゃ、今度こそ行こう!銀河テレビへ…!」
私達8人は顔を見合うと、頷き、銀河テレビへと向かって歩き出した。
―――――
それから暫くし、銀河テレビの前に着いた私達は、入り口の前で一度立ち止まった。
「いい?どんな事があっても、絶対にギャラクシアを倒して、この世界に…銀河に平和を取り戻す!」
私は皆にそう言い、皆は私の言葉に静かに頷いた。その時、ギャラクシアが私達を招き入れるかのように、テレビ局への入り口の扉が開かれた。
私達は互いにアイコンタクトを取ると頷いた。
「行こう!」
私の言葉に、全員が頷くと、私達は揃ってテレビ局の中へと入った。
「一体、どっちに行けば…」
“捕まえた…”
「!しまった…!」
「「シャイン!!」」
「「スターライツ!」」
「「「「きゃあああああ!!」」」」
私が呟いた瞬間、私とスターライツの3人は、足元から出て来た黒い蔦のようなものに掴まり、ウラヌス、ネプチューン、プルート、サターンの4人と引き離されてしまった。
―――――
「ここは一体…」
私達4人が飛ばされて来たのは、とてつもなく広い、別空間の部屋だった。
「…どうやら、閉じ込められてしまったようね…」
メイカーの冷静な判断に、ファイターが声を上げた。
「そんな…!こんな所でぐずぐずしている暇はないのよ!早くギャラクシアを見付け…!!」
その時、ファイターの言葉を遮るようなギャラクシアの笑い声と共に、ギャラクシアが姿を現した。
「その必要はない。私はここだ…」
「「「!!」」」
「ギャラクシア…!」
「お前達は二度とこの部屋から出る事はない…永久にな…」
そう言うとギャラクシアは再び高笑いを始めた。
「何がおかしいの…!!」
「ふん…お前達など、私の前では塵に等しい…」
ファイターの言葉に、ギャラクシアは鼻で笑うと、余裕の笑みを浮かべそう答えた。
「っ…ギャラクシア!あなたの野望は、あたし達が打ち砕いてみせる!!」
「お前達は何の力もない無力な存在なのだ…」
「そんな事はない!あたし達の力を見せてあげるわ!!スター・センシティブ・インフェルノ!」
ヒーラーはギャラクシアに向かって技を放った。しかし、ギャラクシアは、玉座に座ったままで動かずとも、それをいとも簡単に跳ね返してしまった。
「!シャイン・シールド!」
跳ね返された技が、スターライツに当たる直前に、私はシールドを張り、彼女達を守った。
「!ほう…お前は…」
「ギャラクシア!お前なんかに、この星は…銀河は絶対に渡さない!!」
私は彼女達の前に立つと、構えを取った。
「いいだろう…貴様の挑戦、受けてやろう!」
そう言うとギャラクシアは玉座から立ち上がり、構えた。
「行くぞ!」
その声と同時に、ギャラクシアの攻撃が、私目掛けて飛んで来た。
一方、私達と逸れたウラヌス、ネプチューン、プルート、サターンの外部太陽系戦士達は、テレビ局の中を進み、モニタールームの前に来ていた。
「!これは…!」
モニタールームのモニターに映し出されているのは、既にボロボロになったスターライツと、息を切らしながらも、何とかギャラクシアの攻撃を避け、ギャラクシアと対峙している私の姿だった。
「シャイン!!」
「くそ…っ!こんな時に、側にいられないなんて…!」
「焦る気持ちも解りますが、ここは落ち着いて下さい…」
「焦った所で、私達にはどうする事も出来ない。」
「しかし…!いや…そうだな……一刻も早く、ギャラクシアの居場所を突き止めよう!」
ウラヌスの言葉に、3人は頷くとモニタールームを出た。
「(待っててくれ、夏希…今、助けに行く!)」
―――――
「はぁっ!」
「きゃあああああ!」
私は、避け切れなかったギャラクシアの攻撃によって、後方へと吹き飛ばされてしまった。
「シャイン!!」
そんな吹き飛ばされてしまった私を、ボロボロになったスターライツの3人が受け止めてくれた。
「っ…大丈夫…?」
「はぁ…はぁ…っ…大丈、夫…受け止めてくれて、ありがとう…」
私がスリーライツの3人に向かって微笑むと、3人も小さく笑い返してくれた。
「ふん…この程度か…。太陽系のクイーンと言えど、大した事はないのだな…」
ギャラクシアはそう言うと再び玉座へと戻り、そのまま腰を下ろした。
「っ…(…覚醒して強くなったと思えば、覚醒して日が浅い事が、こんなに裏目に出るなんて…!)」
ギャラクシアの言葉に苛付きながらも、私は、攻撃を繰り出さず、確実に奴にダメージを与える方法を考えた。
「(技を出しても跳ね返されてしまうし…直接的な接近戦も、力の差があり過ぎて、大して効果がなかった…。かと言って距離を取ると、今度はあのブレスレットから……)」
「何だ…もう、攻撃して来ぬのか?」
「うるさい!今考え事してんの!!」
「はっはっはっ!この状況下で考え事とは……いいだろう、何を考えているかは知らんが、貴様の度胸に免じて、考える時間をくれてやろう…」
ギャラクシアはそう言うと、足を組み、考え事に耽る私を面白そうなものを見るような目で見つめた。
その時、私達とギャラクシアの間に現れた光の中から、マーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナス、そしてセーラームーンと、戦士姿のちびちびちゃんが現れた。
「ここは…」
「!!あなた達…!」
「!ファイター、メイカー、ヒーラー、シャイン!!」
私達の姿を見付けるなり、彼女達は私達の側に駆け寄って来た。
「ファイター、メイカー、ヒーラー、シャイン…」
「っ…皆、気を付けて…」
「そこに、ギャラクシアが…!」
「え…?」
メイカーの声に、彼女達は後ろを振り返り、ギャラクシアの姿をその目に捉えた。
「!!ギャラクシア!」
「…どうやって、この部屋に入って来られたのかは謎だが、ここまで来れた事を褒めてやろう…。…さて、セーラーシャイン!スターライツ!もう時間だ…。貴様達のスターシード、この私が貰う!!」
そう言うとギャラクシアは、私達4人に向かって光球を放って来た。しかし、既にボロボロのスターライツと私は、その光球に対しての反応が遅れてしまい、動く事が出来なかった。
「こんな所で…っ…(はるか…!)」
私は光球が当たる寸前、咄嗟に目を閉じた。しかし、いくら待っても光球が当たる事はなく、代わりに聞こえて来たのは、マーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナスの悲鳴だった。
「「「「きゃあああああ!」」」」
その声に、私は閉じていた目をすぐに開いた。
「!皆…っ…!!」
「そんな……っ…亜美ちゃん!まこちゃん!美奈子ちゃん!レイちゃん…!!しっかりして…!!」
セーラームーンは、泣きながらも地面へと倒れたレイの体を抱き起こす。
「…どうして…」
「だって…大切な、仲間…だから…」
メイカーの言葉に、ヴィーナスが苦しそうにしながらも答えた。
「仲間…?」
「そう…あなた達も、セーラームーンも、セーラー…っ…シャインも…私達の、大切な…人、だから…」
ヒーラーの問い掛けに、ヴィーナスに続き、マーキュリーも苦しそうに呼吸しながらもそう言った。
「お願い…うさぎちゃんと、夏希ちゃんを…っ…あたし達のプリンセスを、守って…」
そう言うと、苦しそうにしながらも、まことはスターライツに向かって微笑んだ。
「泣き虫、うさぎ…何、泣いてんのよ…」
「レイちゃん…!」
「最後まで…っ…一緒に戦えなくて、ごめ…っ…」
「レイちゃん!レイちゃん!!」
そして、マーキュリー、マーズ、ジュピター、ヴィーナスの4人は、火球と同じく、光となり消えてしまった。
「っ…いやぁああああああ!!」
「亜美…まこと…美奈…レイ……っ…(…私がもっと強ければ…!)」
セーラームーンは泣き叫び、私は自分の弱さを恨んだ。
to be continued...