開 戦(2/2)
あれから少しして、うさぎがスリーライツの楽屋へとやって来た。星野の希望で、私達は星野とうさぎの2人を楽屋に残し、楽屋を出た。私はちびちびちゃんを抱き、はるかに寄り添って2人の話が終わるのを待った。そんな私達の姿を見て、火球さんはクスッと小さく笑みを零した。


「…?あの、私達が何か…?」

「いえ…申し訳ありません。何だか、そうして寄り添っているのを見ると、皆さんが親子のように見えてしまって…」

「それって、つまり…」

「僕が父親で…」

「夏希が母親って事かしら?」

「そう言う事です。」


火球さんの肯定の言葉に、私は耳まで真っ赤に染め上げた。いつもは侵入者だなんだって言うはるかも、この言葉には少し嬉しそうに笑っていた。みちるは、そんな私達2人を見て小さく笑っていた。


「いつか、お2人の間に、本当のお子さんが出来た時は、是非ご挨拶させて下さいね…?」

「そ、そんな!こ、子供なんて…!結婚だって、まだまだ先の話なのに…」


私は顔を真っ赤にしたまま火球さんにそう言った。


「そうでもないさ…式の準備期間の事を考えれば、遅くとも来年の今頃には、もう動き始めなければいけないんだから…」

「まあ…!お二人の結婚式には、是非私も…」


火球さんがそんな事を言った時、大気が火球さんへと言葉を掛ける。


「プリンセス、お言葉ですが、今はそんな悠長な事を言っている場合では…!間もなくこの星も戦場になる!そうなれば、この星だけでなく、私達だって…!」

「…大気、こう言う時こそ落ち着いて、普段と変わらぬ行動を取る事が大切なのです。怒りや焦りは、大きなミスを生み易い…」

「しかし…!」

「この星は僕達が救う…お前達には関係ない。戦いが嫌なら、今すぐに故郷の星に帰るんだな…」

「僕達だって、帰れるものなら帰ってるさ!こんな星、どうなろうと僕達の知った事じゃないしね…」

「私達はただ、プリンセスの意志に従ってるだけです。それこそ、あなた方には関係ない。私達に構うのは止めていただきたいですね…」


そう言って、はるかと夜天、大気の睨み合いが始まった。それを見た私と火球さんが、3人を宥める。


「はるか…!」

「夜天、大気、少し落ち着きなさい。」

「「しかし…!」」


宥められた内の2人、言葉を向けた相手こそは違うが、はるかと夜天の声が偶然にも重なり、2人はやる気が逸れたのかそのまま大人しくなった。


「すみません、火球さん…」

「いえ…こちらこそ、大変失礼致しました。あ、それから…」

「はい…?」

「どうか、私の事は火球とお呼び下さい。」


そう言うと火球さんは微笑んだ。それに私も微笑み返すと、彼女に言った。


「わかりました。では、私の事も呼び捨てにして下さい。夏希でも、エリカでも、どちらでも呼びやすい方で…」

「わかりました。それでは、私も皆さんと同じく夏希と…」


火球の言葉に、私は微笑んだ。その時、話が終わったのか、うさぎと星野が楽屋から出て来た。


「もう良いのですか?」

「はい。これで、コンサートに集中出来ます。」

「そうですか…」


星野の晴れやかな顔を見た火球は安心したのか、ホッとしたような表情を見せた。


「今日のファイナルコンサートで、必ず希望の光を見付け出してみせます…!行くぞ!」


そう言うと、星野を先頭に、スリーライツの3人はステージへと向かった。それに合わせ、私達も客席の方へと移動した。しかし、私達は席には座らず、会場の隅の方から、ステージに立つ彼らの姿を見守った。

そんな彼らを、少しだけ不安そうな顔で見つめるうさぎに私は声を掛けた。


「希望の光…見付かるかな…」

「ねぇ、うさぎ、彼らを信じよう…?私達とスリーライツの3人はさ、友達…でしょ?」

「!…うん、そうだね!ありがとう、夏希ちゃん!」


私の言葉に、うさぎは笑顔を取り戻し、ステージを見つめた。



―――――



コンサートが始まって、数十分が経過した。スリーライツの歌からは、今までにないくらい、大きくて、強い力の波動を感じた。


「…何て力強い力の波動なの…」

「…これに釣られて、本当に希望の光が現れてくれるといいんだが…」

「大丈夫だよ、きっと…。万が一ダメでもさ、その時は私が命に代えても、太陽系の星々を守ってみせる…」

「そんな事はさせない…!夏希もこの星も、僕達が守る。」

「そうね…あんな苦しみ、もう二度と味わいたくないもの…」


そう言うと、はるかは私の肩を抱き寄せ、みちるは、そっと私の手を握った。



―――――



あれから時間が経ち、彼らのファンと、私達に見守られながら、スリーライツのファイナルコンサートはついに最後の曲を迎えた。


「…私達は、今までメッセージを送って来ました。」

「僕達の思いが伝わって欲しい…。このファイナルコンサートで…!」

「これが俺達からのラストメッセージだ…!受け止めてくれ!この思いの全てを!!」


星野がそうファンに向かって叫ぶと、彼らの代表曲である流れ星の演奏が始まった。




(Search for your LOVE)
(Search for your LOVE)

きみはいつも かがやいてた
笑顔ひとつ ちいさな星

大切にしてたよ
(永遠のStarlight)

あの日ぼくは 守れなくて
くやしなみだ こらえただけ

痛みが残るよ
(忘れない Sweet heart)

Search for your LOVE
宇宙の水晶

Search for your LOVE
なかないでくれ

Search for your LOVE
ほんとうは だきしめたいのさ

きみの香りずっと(さがしてる)
ぼくの声よとどけ(あいしてる)

いまどこにいるの
(Moonlight Princess)
ぼくのプリンセス

こたえて (Answer for me)
いますぐ (Answer for me)

こたえて (Answer for me)
やさしく (Answer for me)




スリーライツの3人が一番を歌い終え、間奏に入った所で、会場だったドームの屋根が完全に開き終えた。


「!何だ!?」

「にゃああああ!」


ドームの屋根が完全に開くと同時に、敵のブレスレットから放たれたと思われる光球が、会場にいた私達戦士に向かって飛んで来た。


「うわっ!何!?」


会場がパニックになる中、私達は何とかその光球を避け、飛んで来た方角に視線を向けた。


「セーラーティンにゃんこ!」


セーラーティンにゃんこは、ステージの上に着地すると、高笑いしながら言った。


「銀河は全てギャラクシア様のもの!」

「そうはさせない!」


にゃんこの言葉に、ウラヌスとネプチューンが私達を守るように前に立ち、いつでも攻撃出来るように構えを取る。

しかし、にゃんこは攻撃をしかけて来るどころか、逆にウラヌスの言葉に賛同して来た。


「そうよね、ギャラクシアなんかに支配されてはダメよ!」

「え…?」

「いや、大人しくスターシードを渡しなさい!…っ…皆、気を付けて!スターシードを奪われたら大変よ…!うぅ…っ…」


いつもと様子がおかしい敵に、私達は警戒しながらも少しだけ戸惑った。


「何か変よ!」

「一体、何がどうなってるの!?」


うさぎと私の疑問に答えたのは、その様子を冷静に見ていた火球だった。


「ギャラクシアのブレスレットに操られているんです。善人だったセーラー戦士が…」

「!セーラー、戦士…?」

「ブレスレットが1つになった分だけ、セーラー戦士としての意識が、覚醒しているようです。」

「!それじゃ、残っているもう1つのブレスレットを何とかすれば…!」

「セーラー戦士としての意識が、完全に覚醒するでしょう…。しかし、それなら急がねば……このままでは、彼女の心が壊れてしまう!」


そう火球が話し終えた時、悪の意識を取り戻したにゃんこが、私達に向かって攻撃を仕掛けて来た。


「スター・シリアス・レイザー!」


ファイターが放った技によって、光球は消え、一瞬の隙が出来た。その間に、私とうさぎは急いで変身を済ませた。


「解散するのは残念だけど、スリーライツからファンへの熱いメッセージ、ファイナルコンサートを邪魔するなんて許せない!愛と正義のセーラー服美少女戦士、セーラームーンと!」

「業火と光の戦士、セーラーシャインが!」

「「月と太陽に代わって、お仕置きよ!」」

「そうね、お仕置きされてもしょうがないわね…っ、いいえ!お仕置きされるのはあなた達の方よ!」


にゃんこの言葉に、スターライツの3人が構えた。


「待ちなさい!」


彼女達が構えた瞬間、ネプチューンが彼女達に向かって珍しく声を上げた。それに反応して、彼女達はウラヌスとネプチューンに視線を向ける。


「この地球は、僕達が守る!」

「あなた方は、下がっていなさい!」

「いいえ、コンサートを邪魔した奴は、あたし達が倒すわ!」


ネプチューンのとウラヌスの言葉に、ファイターが言い返したその時、再びにゃんこの攻撃が、今度はスターライツの3人に向かって放たれた。


「危ない!」

「「「!!」」」


私の声でそれに気付いたスターライツの3人は、ギリギリの所で何とかそれを避けた。


「あなた達は、見ていて下さい!彼女は、あたし達で元に戻してみせます!」


攻撃を避けた3人の前に、いつの間に現れたのか、マーズ、マーキュリー、ジュピター、ヴィーナスの4人が、彼女達を庇うように立ちはだかった。それが気に障ったのか、今度はメイカーが声を荒げた。


「私達の敵です!」


メイカーのこの言葉に、ウラヌス、ネプチューンの2人が彼女達を睨んだその時、この状況を黙って見ていた火球が声を上げた。


「止めなさい!」


火球のこの一言で、言い争っていた戦士達は、皆一斉に彼女の方へと向いた。


「ダメです…。皆がそんな気持ちでは…」

「「「プリンセス…」」」

「そうよ、1つにならなくちゃ…」

「「「「セーラームーン…」」」」

「愛する人を守りたいなら、尚更ね…」

「「シャイン…」」


私達がそう言い、戦士達が落ち着きを取り戻した瞬間、突然現れた黒い影に、空は覆い尽くされ、世界は暗黒へと包まれた。


「!これは…!」

「何、この憎悪に満ち溢れた波動は…?」

「まさか…っ…!」

「ギャラクシア…!!」


ファイターがそう呟いたのとほぼ同時に、ギャラクシアが私達の前に姿を現した。


「!あいつが…」

「今回の、私達の敵…!」


そう言うと、ウラヌスとネプチューンは警戒を強め、構えの姿勢を取った。


「ギャラクシア様!只今、スターシード…っ…いえ、代わりにこのセーラーティンにゃんこ…!」

「もう良い…ご苦労だった。」


ギャラクシアはそう言い、にゃんこからブレスレットを奪い、彼女をいとも簡単に消し去ってしまった。そして火球の姿を見付けると、彼女を睨らみながら言った。


「キンモク星のプリンセス……私に対抗する力を目覚めさせようとしているのは、お前か…?」


ギャラクシアは火球を強く睨むと、波動を彼女に向かって飛ばし、火球を吹き飛ばした。


「!プリンセス!!」


ギャラクシアに吹き飛ばされた彼女を、ファイターが何とか抱き留め、彼女を守るように、ヒーラー、メイカーが彼女の前に立ちはだかった。

火球を守ろうと、自分と彼女の間に立ちはだかるヒーラーとメイカーを見たギャラクシアは、彼女達を鼻で笑うと、今度はブレスレットを構え、光球を連発で放って来た。

それに対抗しようと構えるヒーラーとメイカーを退け、火球は3人の前に立つと両手を前に翳し、ギャラクシアに対抗した。


「…今のあなた達の力では、ギャラクシアは倒せません。ここは私が食い止めます。今の内に逃げなさい!」

「プリンセス!!」

「早く…!」

「はぁ…っ!!」


対抗する火球を見て、ギャラクシアは更にたくさんの光球を彼女に向けて放った。

ギャラクシアが放った光球で、火球から逸れたものが、コンサート会場だった場所をどんどん崩して行く。そんな崩れて行く建物や、少し苦しげな火球をを見て、ギャラクシアは楽しげに笑った。


「プリンセス!!」

「(…どうして…)」

「!貰った!!」


ギャラクシアがそう叫んだ瞬間、シールドが壊され、火球にギャラクシアの光球が直撃した。


「止めてぇええ!」

「嫌ぁあああ!!」

「プリンセスー!!!!」


ギャラクシアにスターシードを奪われてしまった火球の姿を見たスターライツが、泣きながら悲痛な叫びを上げた。


「これこそ、真のスターシード……美しい…」


火球からスターシードを奪ったギャラクシアは満足そうに笑う。


「っ……許さない…!!セーラームーン!!」


私の声にセーラームーンは頷くと、エターナルティアルを取り出した。


「シルバームーン・クリスタルパワー・キッス!」

「イノセントハート・シャイン・リザレクション!」


私達は、ギャラクシアに向かって浄化技を放った。しかし、ギャラクシアはそれを物ともせず、余裕の表情を見せた。


「「!!」」

「次は、お前達全てスターシードを頂く!最後に空しい抵抗をしてみるがいい!」


ギャラクシアはそう言い残し、高笑いをすると私達の前から姿を消した。


「プリンセス!」

「!!火球…!」


メイカーの声に、私達はすぐに火球の側へ行った。

私達が側に行くと、変身したちびちびちゃんが彼女の手を握り、ファイターが倒れた火球を抱きかかえていた。


「プリンセス…!!」


ヒーラーの悲痛な声に、目を閉じたままだった火球が、ゆっくりと目を開けた。


「……っ…希望の、光…」


火球は弱々しく笑って、今にも消えそうな声でそう言うと、光となり、私達の前から消えてしまった。


「プリンセス…!プリンセスー!!!!!」


残された私達の間には、彼女を想うスターライツの悲痛な叫びが木霊した。
to be continued...
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