sister!
私の誕生日から数日経ったある日、私は風音さんに呼ばれ、学校が終わってから事務所に向かった。事務所の中に入ると、ちょうど社長室に戻ろうとしていた風音さんと会った。


「お、ちょうどいいところに!」

「風音さん、話ってなんですか?」

「まあ、とりあえず社長室来なさい。落ち着いて話しましょ。」

「はーい。」


私は風音さんに招かれ、社長室へと足を踏み入れた。するとそこには、どことなく、風音さんと似た雰囲気を持つ女性がお茶を飲みながら座っていた。

風音さんが私にも座るよう言ったので、私は女性の向かいのソファーに座った。それを確認した風音さんが話し始める。


「夏希、このお茶飲んでる女は、私の実の妹で宝生伊織。これでもプロのメイクアップアーティストよ。」

「え!?風音さんの妹さん!?」

「そ!そんで、伊織!この子が今話題のアイドル、Erika改め、日向夏希!」


風音さんは一気に私達にお互いを紹介した。


「メイクアップアーティストの宝生伊織です。よろしくね、夏希ちゃん?」

「あ、日向夏希です!こちらこそ、よろしくお願いします!」


伊織さんに続き、私も慌てて自己紹介をした。そして私と伊織さんが握手を交わすと、風音さんが再び話し始めた。


「夏希、何であなたに伊織を紹介したかと言うと、明日から伊織に、あなたの専属メイクやってもらう事になったからよ。」

「え…?私の、専属…?」

「そう。夏希はデビューしてまだ日は浅いけど、うちの事務所で一番売れっ子のアイドルだからね…専属のメイクさんくらい、付けてあげなきゃね?」

「と、言うわけよ。改めてよろしくね、夏希ちゃん。」

「はい!よろしくお願いします!風音さんも、ありがとう!」

「よし、お互いの紹介も終わったし、伊織はもう帰っていいわ。夏希は今度出すアルバムの話しよう!」

「はいはい。全く…姉さんは、昔から人遣い荒いんだから…。またね、夏希ちゃん!」

「はい、さよなら!」


伊織さんは席を立ち上がると、私に手を振り帰って行った。私も伊織さんに手を振り返し、それを見送った。

その後、私は風音さんと2人でアルバムのコンセプトはどうするか、タイトルはどうするかなどいろいろ話し合った。そして気が付けば、時計の針は、夜の8時を回っていた。


「あら?もうこんな時間…?」

「本当だ…。言われてみれば、お腹空いたかも…」


時間を意識した途端、お腹が空いて来て私は苦笑を漏らした。


「よし、じゃあ今日はここまでにして、ご飯食べに行こっか?」

「はい!」


私と風音さんは資料を片付けると、鞄を持って事務所を後にした。そして風音さんの車に乗り込むと、はるかにメールを送った。

数分後、はるかから返信が返って来た。私ははるかからのメールを見てニヤける。


「何、はるかくん?」

「はい!今から風音さんと2人でご飯食べに行くんだって言ったら、いくら風音さんが相手でも2人っきりは妬けるなって…」

「あはは、悪いね〜はるかくん。今日は夏希貰うよ!って言っといて!」

「わかりました!」


私は風音さんの言葉にクスクス笑いながら、はるかにメールの返事を返した。

それから暫くして、今日は風音さんお勧めのお好み焼き屋さんに連れてってもらった。お腹を空かせていた私は、このお店で一番ボリュームのあるお好み焼き定食をぺろりと平らげてしまった。


「いや〜、今日もいい食いっぷりだったわね〜。」

「そうですか?」

「うん!最高!夏希って、本当にご飯を美味しそうに食べるのよ。だからこっちも奢り甲斐があるわ〜。」

「それ、一応褒めてます?」

「褒めてる褒めてる!」

「じゃあ、ありがとうございます…?」

「何で疑問系なのよ…まあ、いいわ。家まで送るから、車乗って?」


食事と支払いを済ませ、店を出た私達は、風音さんの車の前でそんな会話を交わした。それから車に乗り込み、私は風音さんに家まで送ってもらった。



―――――



翌日、今日は休日で学校も休みな為、私のスケジュールは一日仕事で埋まっていた。午前中いっぱいは雑誌の撮影。午後からはテレビ番組の収録が1本と、公開ラジオ番組の収録があった。

今日は大忙しの、超過密スケジュールだ。こんな日こそ、はるかに側にいて癒して欲しいと思うが、そんな時間はない。


「あー…はるかに会いたい…」


私が仕事に向かう準備をしながら、ボソッと呟いたその時、玄関の方から来客を知らせるチャイム音が聞こえた。


「あれ…?風音さんもう迎えに来たのかな?時間までまだちょっとあるのに…」


私は不思議に思いながらも、来客者の招待を確かめるべく、玄関に向かった。そして覗き穴から来客者の正体を確認するとすぐに玄関の鍵を開け、来客者を迎え入れた。


「はるか!」

「やあ、おはよう。僕の可愛い子猫ちゃん…」

「あ、おはよう……じゃなくて!何でここにいるの…?」

「今日は一日仕事で、夏希に会えないって言われたら、逆に夏希に会いたくて仕方なくなってね…」

「はるか……私も会いたかった!」


私は玄関なのにも関わらず、はるかに思いっきり抱き付いた。そんな私をはるかはしっかり抱き留めてくれた。

私ははるかを家の中に招き入れ、はるかにコーヒーを出すと仕事へ行く準備を再開した。


「今日は何の仕事?」

「今日はファッション雑誌の撮影と、テレビ番組の収録と、公開でラジオ番組の収録!」

「それ、僕も同行していいかな?」

「え?私は別に構わないけど、私が仕事してる間はるか暇じゃない…?」

「平気だよ。夏希が頑張ってる姿、影からずっと見てるから…」

「いやだから、ただ見ててもつまんないだけだと思おうけど…」

「そんな事はないさ。僕は、いろんな表情の夏希が見れて楽しそうだと思うけど?」

「そうかなぁ…」


準備をしながらはるかとそんな会話をしてると、再び来客を知らせるチャイムが鳴る。はるかは僕が出るよと言って、玄関へと向かって行った。

そして暫くして、はるかは風音さんを連れてリビングへと戻って来た。


「おはよ、準備出来た?」

「はい、出来ました!」

「よし、それじゃ行こっか!はるかくんも一緒に来る?」

「はい、是非。」

「OK!それじゃ、時間もあんまり無いし行きましょう!」

「「はい。」」


私達は揃って家を出ると、風音さんの車で一緒に移動した。

今日最初の現場である、フォトスタジオに着くと受付の人に挨拶をすると、すぐに用意されていた楽屋に向かった。

楽屋に入ると、昨日会った風音さんの妹の伊織さんが既にメイク道具の準備をして待っていた。


「おはよう、夏希ちゃん!あと、ついでに姉さんも!」

「おう、おはよう!」

「おはようございます!」


そして伊織さんは私の隣に立つはるかを見て首を傾げた。


「…姉さん、そちらのイケメンくんは?」

「あぁ…そう言えば、あんたは最近まで海外にいたから知らないのか…。このイケメンくんは、夏希の婚約者の天王はるかくんよ。」

「なっ…もう、風音さん…!!私達まだ婚約してない!!」


私は風音さんの言葉に顔を赤くして反発した。すると風音さんとはるかは、どうせいつか結婚するんだから、別に婚約者でもいいじゃないかと笑っていた。

そして伊織さんははるかに近付き、手を差し出すと自己紹介を始めた。


「メイクアップアーティストで、そこにいる宝生風音の妹の宝生伊織よ。今日から夏希ちゃんの専属メイクになったの。よろしくね?」

「天王はるかです。こちらこそ、よろしくお願いします。」


それにはるかも伊織さんの手を握って答え、2人の自己紹介は終わった。


「さ、夏希!ゆっくりしてる時間は余りないんだから、あんたは急いで着替えて来なさい!」

「はーい!」

そして私は衣装を持って着替えスペースに入ると、急いで着替えを始めた。



―――――



急いで着替えを済ませた私は、カーテンで仕切ってあった着替えスペース出ると、鏡の前の椅子に座り、伊織さんのメイクとヘアアレンジを終えるのを待った。

その間にも、伊織さんは私達に色んな質問をして来た。例えば…


“2人はいつから付き合ってるの?”

“どっちが先に好きになって、告白したの?”

“2人はどこまで進んでるの?”


と言った質問から、私達自身の事についての普通の質問まで、本当にいろいろ聞かれた。おかげで暇しなくて済んだけど、すごく恥ずかしくなった。


「はは、夏希ちゃん顔真っ赤!」

「…だって〜!!」

「いいじゃないか、僕は本当の事しか言ってないんだから…」

「そうだけど……それが恥ずかしいんじゃない!」

「まあ、落ち着きなさいって!これくらい、ドレスの撮影の時と比べたら大した事ないでしょ?」


その瞬間、私はあの撮影の事を思い出して、更に顔を赤くした。


「風音さん、これ以上弄るとまたあの時みたいに夏希固まって、暫く仕事出来なくなりますよ?」

「おっと、それはまずいわね…」

「さ〜て、ヘアメイクはこれで完成よ!」


そう言って伊織さんは私の髪に飾りを付け、メイクとヘアアレンジを終えた。


「ありがとうございます、伊織さん!」

「どういたしまして。」

「それじゃ、スタジオ行くわよ!」

「はーい!」

「はるかくんも着いて来てね?」

「はい、わかってます。」


私とはるか、そして伊織さんは、風音さんの後に続いてスタジオに向かった。

スタジオに入るとスタッフ陣に挨拶を済ませ、すぐに撮影に入る。その様子を風音さん、はるか、伊織さんはスタジオの隅から見守った。

撮影が始まって暫く経って、私は次の衣装に着替えに伊織さんと一緒に一旦楽屋に戻った。そして着替えを終えると、伊織さんにさっきとはまた違った簡単なヘアアレンジをしてもらい、軽くメイクを直すとスタジオに戻った。

スタジオに戻るとすぐに撮影が再開する。何枚か写真を撮って、確認、それがOKなら次の衣装、そしてまた撮影の繰り返しを午前中いっぱい続けた。


「お疲れ様でしたー!」


撮影が無事終わって、私達は楽屋に戻った。


「夏希、お疲れ様。」

「お疲れ夏希!次の仕事まで2時間あるし、着替え終わったらどこかで食事にしましょ。」

「はい!それじゃ、急いで着替えてきますね!」


そして私は今朝と同じように、カーテンで仕切られたスペースで着替えを始めた。


「伊織も一緒にランチ行く?どうせ目指す場所は一緒なんだし…」

「うん、私も一緒でいいかな?はるかくん、夏希ちゃんも!」


伊織さんは着替え中の私に、カーテン越しに声を掛ける。


「もちろん!」

「僕は彼女と一緒なら、誰がいようと構いませんよ。」

「ははは!イケメンは言う事が違うね〜。」


はるかの返答に伊織さんは笑った。そして着替えを終えた私は、カーテンを開け、皆の所に向かった。


「さて、それじゃあ行こうか。伊織、あんたも車でしょ?私の車の後付いて来なさい。」

「はいはーい!」


それから私達4人は楽屋を後にし、私とはるかは風音さんの車、伊織さんは自分の車に乗って皆でご飯を食べに行った。



―――――



あれからテレビ局近くのファミレスで私達は食事を済ませ、テレビ局内に用意された楽屋に向かった。

私は楽屋に着いてすぐにスタイリストさんが用意してくれた衣装に着替え、伊織さんにメイクと髪をセットしてもらった。

メイクと髪のセットを終えると、私ははるかの隣に座り、漸く一息吐いた。


「ん〜……っ…はぁ…ちょっと休憩…」

「お疲れ様…」


はるかは私を抱き寄せ、髪型を崩さないようにそっと頭を撫でた。まだ収録開始には少し時間があるし、撮影で疲れていた事もあって、私は風音さんや伊織さんがいるにも関わらず大人しく撫でられていた。


「あらまあ…見せ付けてくれちゃって…」

「これがこの2人のデフォルトなのよ…」

「そうなの?」

「そうなの!」


宝生姉妹がこんな事を話してるとも知らず、私ははるかの腕の中ですやすやと小さく寝息を立てていた。

それから暫くし、収録を始めるとの事でADさんが楽屋まで呼びに来た。それを聞いていたはるかが私を優しく起こす。


「夏希、起きて。収録始まるよ?」

「んん…もうそんな時間…?」

「もうそんな時間!ほら、寝ぼけていないで行くわよ!」

「ふぁ〜い…」


私は小さく欠伸を漏らすとはるかの腕から抜け出し、一度伸びると収録があるスタジオまで風音さんと一緒に向かった。その後を、はるかと伊織さんも追う。

スタジオに入ると私はセットの内側へ、そしてはるか、風音さん、伊織さんはセットの裏側から収録風景を見守った。

今日収録するのは最近人気の動物番組で、いろんな動物の映像を見たり、番組の企画で動物をある一定期間飼ってみたり、スタジオで実際に動物と戯れたりするものだ。私はこの番組のゲストとして今日は呼ばれた。

そして収録が始まり、観客の拍手の中、メインMCとサブMCがゲスト席とは反対のセット裏から出て来た。
それから順調に収録は進み、私は可愛い動物達に癒されながら、楽しく収録を終える事が出来た。

暫くして収録が無事終わり、私ははるか達の所に戻った。


「お疲れ様、夏希ちゃん。」

「はぁ〜…あの子猫可愛かったな〜…」

「何、動物でも飼いたくなった?」

「はい…でも、家のマンションペット禁止だし、学校と仕事で家を空ける時間長くて可哀想だから飼えないんですけどね…」


私が残念そうな顔をすると、それを見たはるかは私の耳元である事を囁いた。


「夏希には、僕がいるから寂しくなんかないだろう?」

「ばっ…はるか!!」


私は耳まで真っ赤にしてはるかを睨んだ。しかし、はるかは笑っているだけで、顔を真っ赤にした私の睨みは全然効果がないようだった。


「ほらほら、こんな所でじゃれてないで楽屋戻るよ?」

「風音さん!私達別にじゃれてなんか…!」

「あーはいはい、わかったから行くよー?」


私は先に行く風音さんを追い、はるかもそれに続いた。伊織さんは私達のやり取りを見て肩を震わせて笑いながらも私達と一緒に楽屋に戻った。

楽屋に戻った私は、衣装から私服に着替えた。今日の私服は、公開ラジオ収録に合わせて、いつもよりちょっとおしゃれなものを選んだ。はるかとのデートの時のが断然力が入ってるが、今日の服もそれなりに頑張ったつもりだ。


「着替えたんなら公開ラジオ行くわよ!今度はあんまり時間ないから急いでね!」

「はい!」


私達は急いでテレビ局を後にし、ラジオの公開収録に向かった。現場に着くとそこには人だかりが出来ていた。抽選で当たった人しか中には入れないはずなのに、そこには当選者よりはるかにたくさんの人がそこには屯っていたように感じた。



―――――



あれから暫くし、公開収録が始まった。私は台本通りにパーソナリティーと会話を進め、リクエスト葉書を読んだり、ファンからの質問に答えたりした。そして番組の最後には、エリカのアルバムの発売が決定した事をファンに伝え、無事収録を終える事が出来た。


「終わった〜!!」

「お疲れ様」


私がブースから出ると、はるかと風音さんが笑顔で迎えてくれた。


「あれ…?伊織さんは?」

「あぁ、風音さんに頼まれて飲み物買いに行ってる。」

「そっか。…それにしても、今日は疲れた〜…それにお腹も空いた〜…」


私が苦笑を漏らした瞬間、階段下から伊織さんの悲鳴が聞こえた。それを聞いた私とはるかは風音さんにここにいるよう言い残し、伊織さんに何が起こったのか様子を伺いに行った。

そして伊織さんが敵に襲われ、スターシードを抜かれてしまった事を確認すると、私とはるかはアイコンタクトを取り、物陰に隠れるとすぐに変身した。


「ウラヌス・クリスタルパワー!メイクアップ!」

「ブライトイノセンスパワー!メイクアップ!」


変身を終えた私達はすぐに敵の所に向かった。


「あらぁ、またハズレ〜?もう、時間外労働だって言うのに…嫌になっちゃう!」


伊織さんから抜き取られたスターシードは、すぐに光を失い、黒ずんでしまった。


「嫌になるのはこっちの方よ!」

「!何者!?」

「新たな危険に誘われて、セーラーウラヌス!華麗に活躍!」

「同じく、セーラーシャイン!優美に活躍!」

「あいつらの他にも、まだいたの!?もう〜、お邪魔虫はすっこんでなさい!」

「あんたがすっこみなさいよ!!人が仕事で疲れてんのに…余計な仕事増やさないで欲しいわね!」

「そんな事知らないわよ!セーラーメイク、あのお邪魔虫共の片付けは任せたわよ!」


そう言い残し、セーラーアイアンマウスはとっとと退散してた。そしてスターシードの輝きを失った伊織さんは、ファージへと変化してしまった。


「セーラーメイク!綺麗にお化粧してあげるわ〜!」

「っ…伊織さん!!」

「無駄だシャイン!今の彼女に何を言っても通じない!」

「くっ…!」


ファージ化してしまった伊織さんは、私達に攻撃を仕掛けて来た。それを避けながらも、私達は素手で応戦する。


「ダメだ!素手じゃまるで攻撃が利いてない…!」

「っ…仕方ない…技で攻撃しよう…!」

「!いいのか…?」

「ちょっと心苦しいけど…でも、伊織さんを早く元の姿に戻してあげなきゃ!」

「わかった!」

ウラヌスと私は再びアイコンタクトを取ると、それぞれ技を放つ。


「ワールド・シェイキング!」

「フレイム・バースト!」


私は攻撃を放った後すぐに、爆発に備えてシールドで自分とウラヌスの身を守った。そして、私達の放った技がファージに当たり、ファージが動きを止めた。


「シャイン!今だ!」

「うん!!」


私はクリアトパーズの付いたロッドを取り出し、ファージに向けた。


「シャイン・ハート・キュア・エイド!」

「ビューティフォー!!」


私が放った浄化の力で、伊織さんはファージから元の姿に戻り、スターシードは輝きを取り戻し、彼女の中へと戻って行った。



―――――



あれから変身を解いた私達は、気を失っている伊織さんをはるかが抱え、心配しているであろう風音さんの元に戻った。

私達が風音さんの元に戻ると、彼女はすぐに駆け寄って来た。


「伊織!!」

「大丈夫、気を失ってるだけです…」


私が風音さんにそう言うと、彼女は安心したのかほっとした表情を見せた。


「よかった…」

「風音さん、今日はもう帰りましょ?」

「ええ…そうね…」


私は風音さんを支え、自分と彼女と伊織さんの荷物を持つと車を停めていた駐車場まで向かった。

駐車場に着き、車の鍵を開けると私は風音さんを助手座席に座らせ、その後ろの席にはるかがそっと伊織さんを寝かせた。

それから少しして、伊織さんが目を覚ました。


「ん…っ…あれ…?私、どうしてここに…?」


伊織さんは体を起こすと現状を確認しようと、辺りを見回した。


「階段の踊り場で倒れてたのを私達が見付けて、はるかがここまで運んでくれたんですよ。」

「そうなの…?ごめんなさい、迷惑を掛けてしまったわね…」

「いえ、気にしないで下さい。」


私の言葉に伊織さんがはるかに迷惑を掛けたと謝ると、はるかも微笑んで気にしなくていいと彼女に伝えた。


「…ったく、伊織!心配させんじゃないわよ!!」

「はぁ?心配してたの?」

「当たり前でしょ!!」


思っていたより元気な伊織さんを見て安心したのか、風音さんも元気を取り戻したようだった。それに安心した私は、はるかに寄り添い、はるかは私の肩を抱きながら宝生姉妹の言い合いを見ていた。

暫く続いた言い合いが漸く終わり、私達はそれぞれ車に乗り込んだ。そしてその日はそこで解散し、私とはるかは風音さんにマンションの前まで送ってもらった。


「それじゃ、明日はオフだから、一日ゆっくり休むのよ?」

「わかってますよ、風音さん。」

「それじゃあね!」

「はい、おやすみなさい!」


風音さんと別れた私達は、彼女の車を見送ってから2人で仲良く、手を繋いでマンションの中へと入って行った。
to be continued...
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