- 華麗で優雅な3人組
- 昨日あの後、私はせつなの作ってくれたご飯を皆と一緒に食べ、約束通りみちる、ほたる、私の3人でお風呂に入って、はるかのベッドではるかに抱きしめられながら一緒に眠った。
そして今、朝の6時半…私は昨晩と同じくはるかの腕の中で目を覚ます。私は起動するまではるかの寝顔をぼーっと見つめる事数分。漸く動き出した頭で、若干寝ぼけながらもベッドから抜け出すと顔を洗いに部屋を出た。
そして顔を洗い、いつものようにベースだけ整えるとはるかの部屋に戻る。するとはるかは寝起きで、まだ少し眠いのか欠伸を漏らす。はるかのこんな姿を見られるのは、彼女である私だけの特権だ。
「おはよ、はるか。」
「あぁ…おはよう…」
「眠い?」
「少しな…」
そしてはるかはベッドから出ると体を伸ばし、顔を洗いに部屋を出て行った。その隙に私は制服に着替える。
着替えを終え、パジャマを綺麗に畳んで鞄の中にしまった所ではるかが戻って来た。
「目覚めた?」
「あぁ、一応ね…」
はるかのその言葉に微笑むと、私ははるかに一言残し、部屋を出た。それからリビング、ダイニングを通過しキッチンに向かう。そこにはエプロンを着け、朝食を作っているせつなと、十番高校の制服に身を包み、人数分のコーヒーを淹れているみちるがいた。
「おはよう、みちる、せつな!」
「おはようございます。」
「おはよう、夏希。」
「みちる、無限学園の制服も似合ってたけど十番高校の制服もすごく似合ってるよ!やっぱり、美人は何着ても似合うのね…」
「あら、ありがとう夏希。」
さすが、みちるだ。私が着るとただの制服なのに、彼女が着るとお嬢様学校の立派な制服に見える。まあ、そう言ってもただのセーラー服なんだけど…
それでも彼女自身から溢れる気品のせいか、感じられる雰囲気みたいな物が他の生徒とは違った。
「コーヒー淹れ終わったら、夏希の髪とメイクしてあげるわね。」
「え?あ、うん、ありがとう!」
ぼけーっとしてたから間抜けな返事になってしまったが気にしない事にした。気にすると恥ずかしいから。
「夏希、すみませんがほたるを起こしてきて下さいませんか?」
「あれ…ほたるまだ起きてないの?」
「はい、まだ姿を見ていません。」
「わかった、起こしてくるね!」
「すみません…」
「いいの!気にしないで?」
せつなにそう言うと、私はほたるの部屋まで向かった。一応部屋に入る前にノックをして確認するが、まだ起きていないようだったので部屋の中に入った。
「ほたる、ほたる起きて?朝だよー…」
「ん〜…まだ眠い〜……」
「ダメ!起きなさい!」
私はほたるの側まで行き、体を揺すってほたるを起こす。ほたるはまだ眠そうな顔をしていたが、遅刻させるわけにも行かないので無理矢理起こした。
「ふぁ〜…夏希お姉ちゃんおはよう!」
「おはよう、ほたる。早く顔洗って着替えて着なさい?早く来て席取らないと、ご飯食べる時、私の隣にはるかが座っちゃうよ〜?」
「!ダメ!!夏希お姉ちゃんの隣はほたるが座るの!」
私がそう言うとほたるは急いで顔を洗いに行った。それを見た私はクスクス笑ってほたるの部屋を出てリビングに戻った。
リビングに戻ると、みちるがいない代わりに十番高校の制服に身を包んだはるかがソファーに座って優雅にコーヒーを飲んでいた。まあ、この間衣替えしたから、制服っていっても黒い学ランのズボンに白いワイシャツ姿なだけなんだけど…
私はみちるを探しながらもはるかの隣に腰を下ろす。
「あれ?みちるは?」
「メイク道具を取りに行ってる…夏希を私の手でもっと可愛くするんだって張り切ってたよ。」
「簡単なのでいいのに…」
「いいじゃないか、たまには手の込んだのも…それより、ほたるは無事起こせた?」
「うん、早く来ないとはるかが私の隣に座ってご飯食べちゃうよって言ったら、慌てて顔洗いに行っちゃった。」
「って事は、今日も君の隣には座れないのか…残念だな…」
「まあ、いいじゃない。今日から一緒に学校に通って、一緒にお昼食べて、一緒に帰るって考えたら、ほたるよりずっと長く一緒にいられるんだから…」
「そうだな…今は我慢するよ。」
「うん、今は我慢してね?」
そう言って私ははるかの頬に、ごめんねって意味も込めてキスをした。
それから数分、みちるがメイクボックスを持って戻って来た。その数分後には、ほたるもダッシュでリビングに飛び込んで来た。
「今日は早かったな、ほたる。」
「あー!!はるかパパもみちるママも夏希お姉ちゃんの隣に座ってる!!狡い〜!!」
「狡なんてした覚えはないんだけどな…」
「そうですよ、ほたる。あなたがもう少し早く起きてくればよかっただけの話です。」
「うぅ…だって〜…」
せつなに怒られてしょぼんとしてるほたるがおかしくて、ついつい笑ってしまった。すると今度は、私がみちるに動くなと怒られてしまった。
みちるによる脣を除いた部分のメイクが終わり、私達は朝食を食べる為にダイニングに移動した。私の隣はもちろんほたる。
さっきは座れなかったが、今度は私の隣を取れたのが嬉しいのか、ほたるはニコニコしながら朝食を食べていた。
「そうだ、はるか、みちる、夏希、お弁当を用意しておいたので忘れずに持っていって下さいね?」
「ありがとう、せつな。」
「忘れずに持って行くわ。」
「やった!せつなのご飯いつも美味しいからすっごく嬉しい!!ありがとう!」
「どういたしまして。」
そして朝食が終わると、私とみちるで食器を片付け、せつなは準備しに一旦部屋に戻り、ほたるとはるかは歯を磨きに部屋を出て行った。
食器を片付け終えると、私とみちるも歯を磨き、その後にみちるによる私のヘアメイクが再開した。ちなみにはるかは私の隣で仕上がりを待っている。
私はまた怒られるのも嫌なので、大人しくテレビを見ながら終わるのを待った。
ちょうどヘアアレンジが終わる頃に、ほたるとせつなは揃って家を出て行った。出て行く寸前に、ほたるは夏希お姉ちゃん、また来てね!って玄関から叫んでた。だから私もはいはい、って返事を返した。
それからちょっとしてヘアアレンジが終わり、みちるは私の唇にリップグロスを塗るとメイクを終えた。
「さ、出来たわ。」
みちるに鏡を手渡され、私は鏡を見た。そこにはプロ顔負けの仕上がりのヘアアレンジが施された私が映った。
「うぉっ!?…すごーい…」
「気に入ったかしら?」
「うん!ありがとう、みちる!」
「はるかもどう?夏希、すごく可愛らしくなったわよ?」
はるかは後ろから抱きしめるようにして、鏡越しに私を見た。
「うん、すごく可愛い…いつものキリッとしたのもいいけど、たまにはこう言う、柔らかいメイクも新鮮でいいと思うよ。」
「そう…?じゃあ、たまにはこう言うのもするね?」
「あぁ……まあ、夏希は素顔が一番可愛いけどね。」
「そうね、夏希はメイクなんてしなくても充分可愛いわ…でも、これだけ可愛いと色々試してみたくなるのよ。」
「そうだな……さ、そろそろ行こう。初日から遅刻は、さすがに不味いからな。」
私達は家を出ると、はるかの車で学校近くの駐車場に行くと、そこから3人で歩いて学校まで向かった。
3人並んで歩いていると、何故か同じ道を歩く人達は道の端に寄って立ち止まり、私達に道を譲る。そして立ち止まった人達は皆必ず私達を凝視して来た。中には小さく黄色い悲鳴を上げる子もいた。
学校に着いても同じで、皆普通に歩けばいいのに、一度立ち止まっては私達に道を譲る。………何なんだろう、この現象…
「……ねぇ、はるか、みちる…」
「なーに?」
「どうした?」
「何かさ、さっきから皆変じゃない…?」
「確かにおかしいけれど…別に妖気なんて感じないし、そんなに気にしなくてもいいんじゃないかしら?」
「そう、かな…?」
「そうさ。きっと夏希があまりにも可愛いから、皆立ち止まって見てるだけさ……さ、もう行こう。」
はるかの一言で、私達は再び校舎に向かって歩き出した。
校舎の中に入ると、私達は靴を履き替え、別れた。はるかとみちるは職員室へ、そして私は自分の教室へと向かった。
教室に向かう途中、いつものようにお弁当を受け取り、作ってくれた女の子にお礼を言う。
「Erika様!今日のお弁当です!」
「ありがとう、大切に食べるね?」
「はい!それでは、失礼します!!」
ファンの子は今日も素敵だったと、彼女の友達らしき子達に向かって叫びながら戻って行った。
「(朝から元気だなー…)」
なんて暢気に考えながら、私は軽い足取りで教室へと向かった。今日は朝から機嫌がいいから、今なら何でも許せる気がする。
「おっはよー!」
そう言って教室に入り、自分の席に向かう。すると亜美とまことが席を立ち、こっちにやって来た。
「夏希ちゃん、今日は偉く機嫌がいいね。何かいい事でもあったのかい?」
「うん、まーね!今日はお弁当2つも貰っちゃった!」
「ふふ…よかったわね、夏希ちゃん。」
「うん!」
亜美の言葉に私は笑顔で頷く。
「しっかし夏希ちゃん、うさぎちゃん程じゃないけど、よく食べるよな〜。」
「そうね……夏希ちゃんは食べても食べても全然太らないし、羨ましいわ…」
「本当だよな〜……あたしなんか、食べたら食べた分確実に太るから、夏希ちゃんみたいな体質が羨ましいよ…」
「そう?無駄に食費掛かるだけだよ?」
「夏希ちゃん、お嬢様なんだろ?アイドルで一杯稼いでるんだし…ちょっとくらい無駄に掛かっても全然平気だろ?」
「まーねー……お金あるにはあるけどさ、将来の事とか考えたら、やっぱり今の内から出来るだけ貯金しておきたいじゃない?」
「何言ってんだい、夏希ちゃんは将来はるかさんに養ってもらうんだろ?見たよ〜?この間の記者会見!」
「あの時のはるかさん、すごかったわよね〜…記者の質問に対して、あっさり結婚宣言しちゃうんだもの…」
「!2人とも観てたの!?」
「あたし達だけじゃないよ?うさぎちゃんも、レイちゃんも、美奈子ちゃんも…皆一緒に、レイちゃんの部屋で観てたんだ。」
「えぇ!?」
記者会見なのだから、知り合いが観ている可能性は十分に予測していた筈なのに、こう面と向かって観てましたと言われると、私の中に羞恥が芽生え、私は顔を真っ赤にさせた。
「夏希ちゃんのはるかさんに対する愛と、はるかさんの夏希ちゃんに対する愛が、テレビ越しでもちゃんと伝わって来て感動したわ…」
「2人の絆、って言うのかな……うさぎちゃんや衛さんもそうだけど、やっぱり、前世から繋がってる恋人同士だと、堅くて強い絆で結ばれてるんだなって、改めて思ったよ…」
「そうね……私達皆、これからも夏希ちゃん達を応援するから、はるかさんと幸せになってね?」
「うん…ありがとう、亜美、まこと。」
私が恥ずかしそうにしながらも、私達の幸せを願ってくれた2人にお礼を言って微笑んだその時…
「「セーフ!!ハァ…ハァ…ッ…」」
遅刻ギリギリで、美奈とうさぎが教室へと入って来た。ちなみにスリーライツの3人は、まだ学校に来ていない事から、仕事で休みなんじゃないかと思われる。
「おはよう、うさぎ、美奈。」
「「おはよー…」」
私が2人に声を掛けると、一応2人は返事をしてくれたが、酷く疲れているようだった。
「…2人とも、もうちょっと早く来れないのかい?」
「そうね…そんなに疲れてちゃ、お勉強に身が入らないわよ?」
「あはは…」
私は亜美らしいその台詞に苦笑を漏らした。何故なら、この2人は例え疲れていなくとも、勉強に身が入らない事がわかってるから…
私が苦笑を漏らしたその時、チャイムの音と共に先生が教室に入って来た。それを合図に、亜美とまことは自分の席へと戻って行った。
それからHRが始まり、今日の連絡事項として今日は先生の出張の都合で、1限目の授業と3限目の授業が入れ替わると言われ、クラス中から不満の声が響いた。
無理もない、月曜の1限目から体育だなんて普通なら憂鬱過ぎる。だけど、何度も言うが今日の私は機嫌がいい。だから1時限目から体育でも全然構わなかった。むしろ今日の私なら、一日中体育でも乗り切れる気がした。
HRが終わり、先生が教室を出ると、嫌だ嫌だと駄々を捏ねるうさぎを引き連れ、更衣室に向かった。
「そう言えば皆知ってる?」
「「「「何を?」」」」
私達4人は、美奈の突然の言葉に首を傾げた。珍しく、美奈以外の4人の声と動きが重なった瞬間だった。
「あのね、ちらっと女の子達が話してるの聞いたんだけど…今朝ね、道行く人々が足を止めて、進んで道を空けちゃうくらい綺麗な3人組がこの学校に入って行くのを見たんだって!しかもしかも、その内の1人は金髪で長身のイケメン!!」
「あー…多分、それ…(今朝の私達の事だと思うな…)」
「!夏希ちゃん何か知ってるの!?その謎のイケメンについて!!」
「……美奈、何でイケメン限定なの…?」
「だって、別に女の子に興味はないもーん。」
私は美奈の発言に苦笑する。もうここまで来ると、呆れを通り越して笑うしかない。
「それで、夏希ちゃんは何か知ってるの?」
私達は更衣室に着き、着替えながら話を続ける。
「知ってるも何も、綺麗かどうかは置いといて……その3人組の1人って、私の事だもん。」
私は女子しかいないと言う事で、特に気にもせずセーラー服を脱ぐ。すると横から美奈が私の下着姿を見て変態発言をする。
「おっ、夏希ちゃん相変わらずいい体つきしてる〜!」
「…美奈、言い方がおっさん臭いよ…」
「あら、失礼☆」
美奈は軽く舌を出し、自分の頭を軽く拳骨する素振りをしながら可愛く言った。
「…で、3人組の1人が夏希ちゃんって…一体どういう事だい?」
「今朝ね、はるかとみちると3人で登校したのよ。」
「へぇ〜…はるかさんとみちるさんと……そりゃ、確かに足止めて見たくなる気持ちもわかるわ。」
うさぎが体操服に着替えながら、うんうんと首を縦に振った。
「……ちょっと待って、はるかさんとみちるさんと一緒に登校って…」
「2人とも、この高校に転入して来たの。今日が登校初日。」
「「「「えぇええええ!?」」」」
「え……そんな驚く事?」
着替え終えた私は、驚きの声を上げるうさぎ達へと視線を向けた。
「いや…確かに、無限学園がなくなった今、転入は別段おかしい話じゃないけど…」
「…まさか、うちの高校に来るなんて……」
「それもこんな時期に…」
「暇潰しと、普段仕事で中々会えない私に会う為だって。はるか達らしいでしょ?」
私がそう言えば、うさぎを除く3人が苦笑を漏らしていた。
―――――
それから少しして、私達は体育館へと向かった。今日は体育館で、男女混合チームのクラス対抗のバスケ試合をやるらしい。
「(あ〜あ……スリーライツの3人がいれば、うちのクラスの勝ちは確実だったのに…残念。まあ、スリーライツがいなくても、亜美達がいるし全然勝てるけど。)」
私はバスケの試合と聞いて気合をいれる。例え勝負の内容が何であっても、基本的には負けず嫌いな性格を持ち合わせている私は、勝負と聞くといつも全力投球で一切手加減しない。
先生に寄ってどんどんチームが分けられていく。私のチームには亜美とまことがいたが、残念な事にうさぎと美奈は別のチームに振り分けられてしまった。
「(美奈は別のチームか……でもま、このチームなら優勝はもらった…!)」
「頑張りましょうね、夏希ちゃん。」
「どうせなら優勝目指すよ!」
「違うよ、まこと。目指すんじゃなくて、私達の優勝は既に決まってるの!」
「あはは、頼もしいな夏希ちゃんは!」
「まーね!これでも結構バスケは得意なんだから!」
「ふふ…期待してるわね。」
準備運動を軽く済ませると、先生の合図で試合が始まった。
―――――
試合が始まって暫く経った。残す所は、決勝、準決勝戦のみとなった。そして準決勝の試合が、2つのコートで同時に始まる。
「まこと、パス!」
「はいよ!」
私達は亜美の指示を受けながらコートの中を動き回り、どんどん点数を加算させていく。もちろん、私とまことがいる限り、相手チームにボールは触らせない。
「(セーラー戦士嘗めないでよね!伊達に、危険な敵と命懸けで戦ってないんだから!)」
「キャー!Erika様素敵〜!!」
「木野さんも頑張ってー!」
「ちょっと男子!もっとやる気を見せなさいよ!」
「まこちゃん、右に5歩!夏希ちゃんは左に2歩動いて!」
様々な声が響く中、私とまことは亜美の指示通りそれぞれ動いた。
「まこちゃん、夏希ちゃんにパス!夏希はそこからシュート!」
まことから受け取ったボールを、私はジャンプして3ポイントラインからゴールに向かって投げる。ゴールが決まった瞬間、試合時間終了のブザーと共に、2クラス分の女子の歓声が体育館中に響き渡る。
「ナイスパス、まこと!」
「夏希ちゃんこそ、ナイスシュート!」
試合が終わり、コートから出ると亜美が近付いて来た。
「お疲れ様、次はついに決勝戦ね…頑張りましょう!」
「「もちろん!」」
準決勝が終わり、コートを移動すると決勝戦が始まる。決勝戦は余り時間もないと言う事で3on3で行う事になった。こちらからは私、亜美、まことの3人が試合に出て男子は見学と言う事になった。相手チームは逆に女子3人が見学で、男子3人が試合に出て来た。例え相手が男だろうと、私は負ける気がしなかった。
「亜美、まこと、私達のチームワーク見せてやろう!」
「「ああ(ええ)!」」
そして試合開始のブザーが鳴り響き、試合が始まった。相手はバスケ部の男子が混ざっているのか、さっきのチームとは動きが違い、ちょっとは強かった。本当にちょっとだけ…。それでも私たち3人の敵じゃなかった。
私達が相手からボールを奪い、ゴールを決めるたび、女子の黄色い声と共に歓声が響き渡る。
「夏希ちゃーん、亜美ちゃーん、まこちゃーん頑張れー!!」
「それにしても、すごいわね〜…夏希ちゃん達。男の子相手に圧勝じゃない…どんどん点数差開いていくわよ?」
「かっこいいよね〜……はぁ…あたしも夏希ちゃんみたいに動ければいいのになぁ……」
「うさぎちゃんには無理よ〜!私だって真似出来ないんだから!」
「そうだよね〜……はぁ…」
またゴールが決まる。今ゴールを決めたのはまことだ。亜美は器用に指示を出しながらプレーをする。それを私とまことが聞き、確実にゴールを決める。
残り時間30秒。私達はラストスパートを掛ける。そしてブザーが鳴る直前に私は高く飛び上がるとダンクを決めた。それと共に試合終了のブザーと女子の歓声が響いた。
「ハァ…ハァ……2人とも、お疲れ様…!」
「ハァ…ハァッ…夏希ちゃんも…最後の、すごかったわ!」
「ハァッ…はは、本当だよな。まさか最後にダンク決めるなんてさ!」
私達が相手と握手をしてコートを出ると、あっという間に女子に囲まれてしまった。その時ちょうど授業終了のチャイムが鳴ったので、先生も解散〜と一言を掛けて体育館を出て行った。
「バスケ部の男子相手に圧勝なんてすごい!」
「Erika様、よかったらこのタオル使って下さい!」
「木野さんも、とてもかっこよかったわよ!」
「水野さんの敵の動きを見ての確実な指示もさすがだわ〜。」
「ありがとう、皆…でも着替えに行かなきゃ次の授業に間に合わなくなるよ?ここで話してるのも何だし、一緒に着替えに行こう?ね?」
「「「「「はい!是非!!」」」」」
亜美、まことは苦笑を浮かべ、うさぎと美奈は呆然とこちらを眺めていた。
「すっご〜い……これでまーた夏希ちゃんの人気に拍車掛かったんじゃない?」
「そうね……男子顔負けな、正真正銘のイケメンだわ…。まあ、夏希ちゃん女の子だけど……。あー、女の子なのが勿体ない…!」
「うさぎー、美奈ー!着替えに行くよー?」
「「ああ!!待って〜!!」」
そして私は、取り巻く女の子達を連れ皆で着替えに更衣室に戻ったのだった。
to be continued...