休 日
今日は久しぶりに、学校も休みの休日に1日オフがもらえた私は、はるかとデートの約束をしていた。

はるかに会うのも、デートも久しぶりで、昨日の夜は今日が楽しみ過ぎてあまり眠れなかった。更にデートに関して言えば、私が生き返ってから初のデートだ。

私はこの間の雑誌の撮影の時に買い取った可愛い、春らしいワンピースを着て、カーディガンを羽織り、髪もメイクも気合を入れて仕上げた。

久しぶりの恋人と会うのだ、ちょっとでも可愛く見えるように頑張ってしまうのが乙女心ってやつだ。


「(はるか何て言ってくれるかな〜…)」


私はまだ見えない、愛しい恋人の姿を思い描く。はるかの事を考えてたら早く会いたくなっちゃった…

その時、私の携帯が着信を知らせる。この音楽ははるか専用の音だと瞬時に理解した私は、すぐに電話を取った。


「もしもし?はるか?」

『おはよ。電話の相手が僕だってよくわかったな…』

「だって、はるかだけ着信音の設定変えてあるもん。すぐわかるよ。それより、どうしたの?」

『あぁ…実は、昨日からずっと夏希に会えると思ったら何だか落ち着かなくて。それでもずっと君の事を考えてたら、少しでも早く君に会いたくなって…』

「え…?(はるかも同じ事思っててくれたんだ…何か嬉しいな、こう言うの…)」

『それで、約束の時間よりだいぶ早いんだけど、今から夏希に会いに行ってもいいかな?』

「!うん!いいよ、私もはるかに早く会いたい!!」

『そうか、よかった…』


その時、マンションの入り口に来客を知らせるチャイムが部屋に鳴り響く。まさかね…
そう思いながらもモニターフォン来客者を確認する。ちなみに、携帯はまだ繋がったまま…


『僕の愛しいプリンセス…中に入れてくれるかい?』

「ふふ……どうぞ、私の王子様…」


そこにいたのはやっぱりはるかで、はるかが花束なんか持ってたから本当に王子様がいるのかと一瞬思った。

それから私はモニターと電話を切り、エントランスへの扉を開けた。そしてこれから来る素敵な王子様の為に、お茶の準備をしようとやかんを火に掛け、お茶菓子の用意を始めた。

数分後、今度は玄関から来客を知らせるベルが鳴る。私はやかんの火を止め、すぐに玄関に向かった。

玄関に着くと閉めっぱなしにしていた鍵を開け、扉を開きはるかを迎え入れる。小さなモニターで見た通り、はるかは花束を持ってそこに立っていた。


「やあ、僕の子猫ちゃん…今日は一段と気合いが入ってるね…。僕とのデートだから、頑張ってくれたのかな?」

「そうだよ?はるかの為に、今日は髪もメイクも頑張ったんだから…」

「ありがとう、夏希…。いつも可愛いけど、今日は一段と可愛いよ…」

「……ありがと、はるか…。入って?」

「あぁ…ありがとう。」


はるかはいつもキザな台詞を恥ずかしげもなく言う。それでも、はるかが言うと全然キザに聞こえなくて、愛しさが込み上げて来るから不思議だ。

私ははるかを家の中に入れ、玄関の扉を閉めた。するとすぐに、はるかが私を抱きしめて来た。


「会いたかった…」

「私も…毎日メールとか電話してたけど、ずっと会えなくて寂しかったよ…?」


私は会えなかった寂しさを埋めるように、はるかに抱き付いた。そのまま暫くの間抱き合ってから、はるかと一緒にリビングへ向かった。

「ちょっと待ってて?今お茶淹れて来るから。」


そうはるかに言い残し、私はキッチンでこの間風音さんに貰った茶葉で美味しい紅茶を煎れ、2人分の紅茶とお茶菓子を持ってはるかの所に戻った。

リビングに戻ると、はるかは着ていたコートを脱ぎ、ソファーに座って私を待っていた。


「お待たせ、はるかみたいに上手には淹れられないけど、飲めない事はないから…よかったら、これも食べて?」


そう言って紅茶と甘過ぎない程よい甘さのケーキをはるかに出した。


「ありがとう、夏希。」

「ううん、いいの。それより、はるかのコート貸して?皺になるといけないから、ハンガー掛けとくね?」

「あぁ、すまない…お願いするよ。」


私ははるかからコートを受け取り、ハンガーに掛けると、漸くはるかの隣に座った。

そしてさり気無く、はるかに寄り掛かる。するとそれに気付いたはるかは私を抱きしめてくれた。私は彼の腕の中で大人しくする。


「今日は、ずっと一緒にいてね…?」

「もちろん、最初から放すつもりなんてないさ…」

「よかった…」
「今日は家に泊まるんだろう?」


はるかの質問に対し、私はある提案をした。


「うん、そう思ったんだけど…はるか達の家じゃ、なかなか二人っきりになれないと思うの…」

「まぁ、確かにな…」

「それでね、はるかが家に泊まったらどうかなって、思ったんだけど……どうかな?」

「そうだな……前回みたいに、ほたるに夏希との時間を邪魔されても困るし…そうしようかな。今夜1日、僕をこの部屋に泊めてくれるかい…?」

「もちろん!今夜1日と言わず、いつでも来て?いつだって、私ははるかに会いたいもん…」


はるかの返答が嬉しくて、私は彼に笑顔を向け、いつでも会いに来て欲しいと伝えた。


「僕だってそうさ…出来ることなら、このまま君を僕の腕の中に閉じ込めておきたいくらいだ…」

「私も、このままはるかの腕の中にいたい…」


でも、そんな事は出来ないってわかってる。だからこそ、今この時を愛おしく、大切に思う…



―――――



あれから1時間くらい、はるかと部屋の中でいちゃついてから、私達は揃って部屋を出た。ちなみにはるかから貰った花束は花瓶に入れて、玄関に飾った。

私達はエレベーターで駐車場まで降り、そこからはるかの車に乗ってデートに出掛けた。

車を走らせてからはるかは私に問い掛けた。


「どこか行きたい所は?」

「はるかと一緒にいられるなら、私はどこだっていいよ?」

「…嬉しい事を言ってくれるな…」


はるかは微笑むと、街まで車を走らせた。

暫く車を走らせ、街の中に入ると近くの駐車場に車を停め、私達は車を降りた。

するとはるかはすぐに私の手を取り、指を絡めて繋いだ。俗に言う恋人繋ぎ、ってやつだ。それが何だか嬉しいような、照れ臭いような…とにかく私は、微かに頬を染めはるかの隣を歩いた。

普通、アイドルってこう言うの隠すべきなんだろうけど、一応社長の風音さん公認の関係だから、私は隠そうとは思わない。まぁ、私たちの場合は、例え公認じゃなくても、隠さず堂々と付き合って、きっとはるかが世界中の人間に私達の事を認めさせていたと思う。

少し歩いて、漸く路地から表通りに出た。休日とだけあって、表通りにはたくさんのカップルや家族連れがいた。


「さて、どこに行こうか…」

「?考えてなかったの?」

「あぁ、僕も夏希と一緒ならどこでもいいと思ってたからね…」

「そう、なんだ…」


私はまさか自分がこんな事を言われると思っていなかったので、嬉しい反面、すごく恥ずかしかった。


「そうだな…これからちょくちょく夏希の家に泊まる為に、僕専用のお泊りセットでも買いに行こうかな。選ぶの、手伝ってくれるか?」

「うん、いいよ…」


私は頬を赤く染め、俯いたまま、はるかの質問にYESと答えた。

それから二人でデパートに行き、着替え、歯ブラシセット、はるか専用の茶碗や箸など色んなものを買い揃えた。

そういえば家具コーナーでベッドも買った。今私が使ってるベッドじゃ、大人2人が入るには狭い過ぎるから、少し大きめの、大人3人くらい並んで眠れそうなサイズのベッド。もちろん選んだのははるかだ。何だか他の物より、ベッド選びが楽しそうに見えたのは気のせいと言う事にしておこう。

一通り買い物を終え、私達は最上階にあるレストランでランチを食べた。はるかと一緒の食事は、何だかいつもより美味しく感じた。


「次はどこに行こうか?一通り買ったし、お泊りセットはもういいだろう…」

「うーん……あ、そうだ!鍵!はるか専用の合鍵作りに行こう?」

「合鍵くれるの?」

「うん、はるかは特別だから…だから、はるかにだけあげる。」


微かに頬を染め、微笑みながらはるかにそう告げた。するとはるかも微笑みながら言った。


「それは光栄だな…ありがとう、夏希…」

「どういたしまして…」


そして私達は合鍵を作りに行った。合鍵は10分も掛からない内に出来、出来たばかりの合鍵をはるかに渡した。


「無くさないでね…?」

「もちろん、大事にするよ…」


それから私達はまた手を繋いで、はるかの車が停めてある駐車場まで歩いた。

駐車場に着くと、荷物を車の後部座席に乗せ、私達も車に乗り込み、車を走らせた。


「どこに行くの?」

「海までドライブ、なんてのはどうかな?僕のプリンセス…」

「海?行きたい!」

「じゃあ、決まりだ。」


そしてはるかの運転する車で、海までドライブデートを楽しんだ。海についてからは砂浜を裸足で走り回った。久しぶりにはるかと競争もした。もちろんはるかには適うはずもなかったけど、久しぶりにこんなにはしゃいだ。

思う存分はしゃいで満足した私は、砂浜に寝転んだ。するとはるかも私の横に寝転び私を見た。


「何?どうしたの?」

「いや、こんなに可愛い夏希を見たのはいつ以来かなって思って…」

「な、何言ってんのか意味わかんない……確かに今日はデートだから気合いは入れたけど、私別に可愛くないもん!」


そう言って精一杯の照れ隠しをする。はるかに可愛いって言われて嬉しいのに、恥ずかしくて素直になれない自分が嫌になった。

でも、はるかにとってはそれすらも可愛く見えたらしく、私をきつく抱きしめ、そっと唇を重ねた。


「っ……バカ…ここ外だよ?誰かに見られたらどうするの?」

「そんなの、見せ付けておけばいい…」


そう言って何度も何度も、はるかは私に口付けた。それに私も、はるかの首に腕を回し応える。

離れていた分の距離を埋めるように、私達はお互いを求め合った。
to be continued...
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