蔵 馬
放課後、誰もいない静かな図書室。

その図書室の一番奥にある窓際の席。そこが、私のお気に入りの場所。

そんなお気に入りの場所で、私は遠くから聞こえる、部活に励む生徒達の声をBGMに、昨日買ったばかりの本を手に、読書に耽っていた。


「………………」

「そんなに集中して……一体、何を読んでるんですか?」

「とある星の王国のお姫様の悲劇………って…!?」


1人だったはずの空間に響いた私以外の声に、私が驚きと共に顔を上げれば、いつの間にここに来たのか、私の向かいの席には、蔵馬が座っていた。


「やぁ」

「っ、蔵馬…!!もう!びっくりさせないでよ!」

「あはは、ごめんごめん」

「もう……全然謝る気ないでしょう?」

「まぁね。こんなに近くにいるのに、本にばかり集中して、ちっともオレを見てくれないあなたが悪いんですよ?」

「はぁ……本にまで嫉妬しないでよ…」


私が溜め息と共にそう告げれば、蔵馬は立ち上がり、私の顎に指を掛けると、グッと顔を近付けて囁いた。


「残念だけど、それは無理です」



君の視線を独り占めしていいのは、このオレだけ



(だから、オレだけを見ていて下さい…)
(っ…!……バカ蔵馬…)
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