幸 せ い っ ぱ い
「姉様、まだ終わりませんか?」

「もう少しで終わりますから、少し落ち着きなさい」

「はーい…」


元旦の朝、私は姉様に振袖を着付けてもらっていた。地球に来て、初めてのお正月。私は、カウントダウンからの興奮が冷めきらぬまま今を迎えた。


「はい、出来ましたよ。あまり激しく動いてはダメよ?ドレスとは違って、着物はすぐに着崩れてしまいますからね」

「はーい!それじゃ、私夜天にこの姿見せて来るね?」


そう言うと、私はすぐに部屋を出て、夜天達がいるであろうリビングへと向かった。

リビングへと繋がる扉を、少しドキドキしながら開けると、そこには予想通り、星野、大気、そして夜天の姿があった。


「お!夜天」

「何?」


私に気付いた星野が、夜天に声を掛けた。夜天は星野が指差す方、つまりは私の方へと振り返った。


「や、夜天!ど、どう、かな…?」


早く夜天に見せたくて、急いで部屋を出て来たくせに、いざ本人を目前にすると、私は緊張からか吃ってしまった。

そんな私を、夜天は頭の上からつま先までじっくりと見る。


「いいんじゃない?可愛いよ」


私は夜天の言葉に、一気に緊張が解け、笑顔が零れた。それにつられてか、夜天も小さく笑みを零す。


「こっちおいでよ、名前」

「うん!」


私は夜天が指定した、彼の隣へと腰を下ろす。すると、星野と大気も私の振袖姿の感想を一言ずつ言ってくれた。


「馬の子にも衣装って奴だな!」

「星野、正しくは馬子にも衣装、ですよ」

「あれ?そうだっけ?」

「そうだよ…本当、星野ってバカ。何、馬の子にも衣装って?って言うか、僕の名前が可愛くないわけないでしょ?頭だけじゃなくて目も悪いんじゃない?」

「何!?」

「2人とも、年明け早々に喧嘩は止めなさい。全く…名前、よく似合ってますよ」

「ありがとう、大気!夜天も、ちょっと落ち着いて?星野がバカなのは、今に始まった事じゃないんだから」

「名前まで…!」

「事実でしょう?言われたくないのなら、少しくらい勉強しなさい」

「…大気、お前、お母さんみたいだぞ…?」

「どうやら星野は、おせちと雑煮、いらないようですね」

「な!?いる!欲しいです!すまん、大気!!」

「バカっぽい…」


3人のこのやり取りに、私は小さく笑った。


「ふふ…あなた達が揃うと、本当に賑やかですね」

「「「プリンセス」」」

「姉様!姉様も、一緒に大気のおせちとお雑煮食べようね!」

「はい…」


そう言って姉様は微笑んだ。


「名前、今年もよろしくね」

「うん!」


姉様がいて、星野と大気がいて、そして何より私の隣には夜天がいて…地球での初めての私のお正月は、とても幸せなお正月になりそうです。



A Happy new year!!



(夜天、今年も大好きだよ)
(僕も……好きだよ、名前…)
(おい!そこのリア充!新年早々イチャイチャすんな!!)
(僕達が何しようと、星野には関係ないでしょ。彼女いないからって僻まないでよね)
(てめっ…人が気にしてる事を…!!)
(全く…2人とも、いい加減になさい!)
(ぷっ…くく……大気…その台詞、お母さんみたい…)
(なっ…名前…!!)
(ふふ…あなた達が揃うと、本当に賑やかですね…)
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