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『ヴァアアアアンッ!!!』
「うわああああ!!??」
とある日の秩序の聖域に女と男の絶叫が響いて、コスモスの戦士達は溜め息をついた。
「またか…」
カインが声の出所の方を振り向きながら呟く。そこにいたのは同じコスモスの戦士であるアイとヴァン。
ちなみにアイがヴァンを物凄いスピードで追いかけ、ヴァンはそれに対して必死に逃げているという図だ。いつもマイペースなヴァンがあそこまで取り乱すのは珍しい。…逆を言えばそれほどアイが恐ろしい訳だが。
『ヴァン、何で逃げるのー!?』
「だって逃げないとアイに変なことされるじゃん!!」
『スキンシップとってるだけじゃない!』
「それは絶対スキンシップじゃない!!」
大音量で言い合いながら走り回る二人を他の戦士は生温い目で見つめる。ラグナやバッツなんかは面白がって野次を飛ばしているし、ユウナはどちらの気持ちも慮ってオロオロしている。
大半の者は何も言わず呆れ気味に見ているだけだが。
二人はしばらくいたちごっこを続けているがアイの方が足が速い為徐々に差が縮まっている。このままではいずれヴァンはアイの餌食になるだろう。
「くっそ…!」
追いつかれると判断したのかヴァンはアイに向き直って銃を構える。牽制用に撃って足を止めようとしているのだろう。
軽く後ろに跳躍し、散弾銃を撃つ。アイはタイミングを見計らって走る勢いを使い前に跳んだ。ヴァンは撃つ為に止まっている。つまり…
「ぐへっ」
一直線に落下してきたアイによりヴァンはあえなく後頭部を地面にぶつけることとなった。
『ヴァン、や〜っと捕まえたっ!』
「は、離れろって!」
『いや!また逃げるもの』
「ひっ…」
アイはヴァンを押し倒した体勢のまま遠慮無くその適度に鍛えられた身体に手を滑らせた。ヴァンは小さくうわずった悲鳴を上げる。
『はあぁ〜相変わらず素敵な筋肉!てかヴァンの顔めっちゃそそる…犯したい』
「ちょ、やめ、ろ…アイ!!いい加減怒るぞ!」
『ヴァンにヤられるほどあたし弱く無いわよ。あっでもヴァンになら抱かれても良いな…貫いて欲しい』
「アイ欲望が口からだだ漏れてる…」
ぽ、と頬を赤らめてヴァンの上で身悶えするアイに全員流石にドン引きである。
そう、アイがヴァンを追いかけヴァンは逃げる理由、それはこのアイのどうしようもない愛故にだった。
毎日のようにヴァンに抱いてだの抱かせてだの迫り、隙あらばスキンシップという名のセクハラを仕掛けてくるのだ。愛を一身に受けるヴァンにしてみれば冗談じゃない、といった感じである。
オニオンナイトなどもいるのだから自重して欲しいし、何より襲われる様子を見られるヴァンは相当参っている。
「恋は盲目、とは言うけれど…」
「少しはこちらの迷惑も考えて欲しいものだな」
ティファとライトニングは近くの岩に腰掛けながらそんなことを呟く。フリオニールはその後ろで水を紅く染めながら倒れている。
ジタンは元気な女の子もアリか?とか呟きながら曖昧に笑っているしスコールは哀れみの視線だけ向ける。
『ヴァ〜ン私の癒し〜』
「んーっ!!」
アイがヴァンの上着に手を滑り込ませて無遠慮に胸の突起を擦った。ヴァンは口を抑えて必死に抵抗を試みている。だが腰周りをがっちり固められていて逃げられない。
『ねぇヴァン、いつまで私を焦らすの?』
「はっ…オレはそんなつもりな……」
『私はこんなにも愛しているのに!!』
「愛が歪んでるんだよ!」
ヴァンが勢い良く起き上がりアイは押し返される。
『きゃん』
「め、迷惑なんだよこんな…普通に出来ないのかよ…!」
『…だって、普通になんてしてたらいつまでたっても振り向かないと思うからさ、ヴァンにぶちんだし』
「あ、それは言えてる」
アイの発言に横から賛同してきたオニオンナイトの方にヴァンは何とも形容しがたい表情で目を向ける。
「ネギボウズ裏切るのかーっ!?兄弟だろ!?」
「兄弟になったつもりは無いし裏切ったつもりも無いし、事実だし」
『という訳で付き合ってください』
「話の筋があってない!」
一向に肯定の態度を取ってくれないヴァンにアイはむー、と頬を膨らませ眉を下げる。黙ってれば顔も仕草も可愛くて悪くないのに、とヴァンは考えたがすぐに振り払った。可愛いとか、そんなことを考えてる場合ではない。
「…ていうか、オレのどこが好きなんだよ。お前可愛いんだしもっと良い人いるんじゃないの」
しかし一度湧いた考えはなかなか頭から離れてはくれなくて、気付けばそう口にしていた。
『どこ…って、もちろん優しい所だよ。戦闘で不利な時かばってくれたし、落ち込んでる時励ましてくれるし、皆のことよく見てさり気なくサポートしてる』
「…へ」
『それに今だって、悲しそうな顔してる。私が落ち込んだから、自分責めてたりしない?』
「…へぇ、ちゃんとそれらしい理由あったんだ」
ふにゃりと笑うアイを見つつ、横のオニオンが呟く。今までの行動からするとあまりにも可愛らしい理由。
「…あー…そっか」
ヴァンはどうしたものかと頬を掻いて目を逸らしつつ考えた。なんだか無下に出来ない気がする。
『私、ヴァンが好きだよ』
そして、とどめの一言。溜め息をついて、ヴァンアイに向き直った。
「…オレ、言っとくけど恋人のなんたるか、知らないからな」
『…それって』
「無闇に筋肉触ったりしなければ付き合っても良いよ」
ぱぁっとアイの目が輝き、頬が仄かに赤く染まる。
『嬉しい…!!ヴァン大好きっ!』
「うぐっ」
「アイ、ヴァンの首絞まってるよ」
『きゃああヴァンがあああ!!』
女といえどヴァンを押さえ付ける力があるのだ、そんな力で勢い良く抱き着かれれば腕を首に回されたヴァンはひとたまりもない。
「仲良しだね」
「若いってのは良いねぇ」
少し離れた所でそんなことを呟きつつ、セシルとジェクトは朗らかに笑う。因みに二人の横に立っているウォーリアはヴァンがいきなり承諾したせいで状況がよく分かっていない様子だ。
「ケホッ…良いか、変なことしたらすぐ別れるからな」
『変なこと…せっ』
「それ以上言うなよ」
かくして、秩序の戦士達の間に一組のカップルが誕生した。
――――
書いてるうちに訳が分からなくなったのと、キャラ崩壊甚だしいのと(特にヴァンとフリオ)、あまりにもアホらしかったのでボツ。しかし変態書くのは楽しかった(キリッ
さり気なく012コスモス軍フル出演(多分)。
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[mokuji]
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