弟はやめて(DDFFオニヴァンオニ)

僕は君の弟なんかじゃない。何度言っても、ヴァンの態度が修正されることは無い。
先陣きって戦おうとすると危ないから、と僕を押し退けて前へ飛んでいくし、やたらと世話を焼きたがるし、手を繋いだり頭を撫でたりしてくるし。
触れられるのは嫌じゃないけど、やめて欲しい。だってそこにはただただ「弟」への優しさしか込められていないから。

今だって、うっかり戦闘で怪我をした僕を、ヴァンが背負って歩いている。別にこれくらい、手持ちのポーションを使えばすぐに回復する。なのにヴァンはそれに気付かない。

「ヴァン、降ろして」
「駄目だ。無茶すんな、辛いなら寝てて良いからな」

ああ、また僕の話を聞いてくれない。優しい声なのに、振り向いてすらくれないヴァンにイライラする。こんなにもやもやして、イライラして、優れてる筈の頭を常時フル回転させてるのは、誰の為だと思ってるの。
戦いたいのは、ヴァンの負担を減らして、あわよくば守りたいから。背負われるのが嫌なのは、ヴァンの顔が見えないから。弟として見られたくないのは、恋人として見られたいから。
どうすれば、振り向いてくれるのさ。どうして振り向いてくれないのさ。

「僕はこんなに好きなのに」
「…ねぎぼうず?」
「っ、どうしたの、降ろす気になった?」

僕の独り言を聞いたらしいヴァンが急に立ち止まる。あーあ、僕って意外と馬鹿なのかな。本音が口から漏れるとか。

「…何?」

背負っているから横目にだけど、じーっと僕を見つめるヴァンにイライラと、ちょっとドキドキ。何を言うつもり?

「…ねぎぼうずは、オレのことどう思ってる?」
「どう、って…」

ヴァンは黙って僕の言葉を待ってる。さっき聞いたでしょ、なんでわざわざ訊いてくるのさ。

「…僕は、ヴァンの弟になんかなりたくない。対等に、恋人に、なりたいんだ」
「…ねぎぼうず」
「僕は子供なんかじゃない。もっとちゃんと、僕を見てよ」

ヴァンがしゃがんで降ろされ、地面に立てるようになる。向き合う形になって、ようやく正面からヴァンの顔が見えるようになった。…変わりに目線が高くなったけど。

「…良いのか?オレ、お前のこと好きだからキスとか、しちゃうぞ?」
「…良いよ」
「もう絶対、弟として見れないぞ」
「そっちの方が良い」

ヴァンが腰を屈めて目線を合わせる。その表情は何かを耐えてるみたいに険しい。

「…オレ、お前のこと好きだ」

抱き締められて、キスをされる。やっと、やっとちゃんと見てくれた。
物好きな人になってくれたヴァンに、柄にもなく嬉しくて笑顔になって、ヴァンに抱き付き返した。



―――
ヴァン総攻め企画の残骸でした。途中で色々と暴走した。誰だこいつら。話もよう分からん。というかそもそもこれヴァンオニじゃなくてオニヴァンや。
子供は子供らしく純粋に、とか考えて無理矢理気持ちを押し込めるヴァンとか良いんじゃないかな。

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