メランコリック(BSR三成夢)
※途中で終わってます
あんな、何考えてるか分からなくて掴めない君を、全然知らないうちに心奪われるなんてこと、あるはずない!
それは学校のテスト期間真っ最中の憂鬱な時期、その間に挟まれた日曜日の日暮れのこと。
勉強ばかりで疲れていたから、近所のコンビニでお菓子を買って、つい立ち読みなんかしちゃっていたら、とある人物がなんと声をかけてきた。
「…貴様、テスト期間中に何をしている」
『え…』
振り向くと不機嫌そうに私を睨んでいる(まぁこれはデフォルトだから仕方ない)、前髪が特徴的なクラスメイトであり私の通う学校の生徒会役員である石田三成くん。
彼は短気で真面目でストイックで、ついでに言うとその真面目とストイックさを全校生徒に強いるような物言いで有名な人だ。生徒会長の豊臣先輩と副会長の竹中先輩を崇拝し、彼等の為に日夜奔走する人。一般生徒からはかなり恐れられていたりする。因みに私もその一人。
その石田くんが、今目の前にいて、あまつさえ立ち読みしているところをばっちり目撃されている。私はもちろん固まった。で、慌てて釈明を考える。下手したら「斬滅してやる!!」と言いながら竹刀でぶっ飛ばされる!
『えっ、えっと、勉強ちょっと疲れたので、軽く息抜きしてました…ここに来たの10分くらい前ですはい!ごめんなさい!』
眉間に皺を寄せながら微動だにせず無言で見つめてくる石田くんが怖すぎて声どもるし裏返るし口調おかしいし。うわーんこんなことならお菓子買ってさっさと帰れば良かったー!
心の中で号泣したけど、私の予想に反して石田くんは何も言わずふいと私から目線を逸らして、近くの棚からシャーペンの芯を掴むとレジへ向かっていった。…芯、切れたのかな。
暫く私が固まっているうちに手早く会計を済ませると、何故か私の所に戻ってきて家はどこだと訊いてきた。
『わ、私の家なんか訊いてどうするんですか?』
「…最近は日が暮れるのが早い…それに不審者がよく出ていると金曜に担任が言っていただろう、聞いていなかったのか?」
『あ…あ、いや、聞いてました!聞いてたけどすぐ近くだし良いかな、なんて……』
もしかして、送っていくと言いたいのだろうか。いや多分そうだよね、うん。
「行くぞ」と言ってさっさと外に出る石田くんを慌てて追いかけ、横に並んだ。
――――
夕焼けでオレンジ色に染まった町並み。その中を私は石田くんと並んで歩いている。なんとも不思議な光景、同じ学校の人が見たら驚くよ絶対。
『そ、そういえば石田くんもこっちの方に住んでるの?』
沈黙が辛かったから私は意を決して話し掛けてみる。
「…私の家は反対方向だ」
『え!?反対なのに送るって言ったの!?別に無理しなくて良いのに…』
「構わん。反対方向と言っても近所だ、さして変わらない」
『でも…』
「拒否は認めない」
強い口調でそう言われたら流石に言い返せなくて、結局黙るしかなくなった。石田くんってなんか掴めない。考えてることが分からない。
そうこうしているうちに家の前に着いて、ここだから、と石田くんに言う。
『ありがとう石田くん。ごめんね家反対なのに…』
「構わんと言っただろう。…それとその呼び方やめろ」
『え…じゃあなんて呼べば…』
「三成で良い」
三成で良いって…親しい訳じゃないし、疑問には思ったけどまた拒否は認めないと言われそうだったから訊くのはやめた。
『…ありがとう、三成くん』
「…まぁ、良いだろう」
ほんの少し、気をつけていないと分からないくらい微妙に、三成くんは笑った。
無愛想な三成くんの笑った顔や銀色の髪は、夕日に照らされて、儚いくらいに綺麗だった。
直後にいつもの無愛想な表情に戻って同じクラスとしてテストで低い点数を取ることは許さない、きっちり勉強しろ、と残し三成くんが去って言った後も、私は笑顔が頭に焼き付いていて、暫くその場で固まっていた。
――――
『はぁ…』
なんとかテスト期間を乗り切り、授業も無い為今日は一緒にファストフードを食べに行きましょう!と鶴姫ちゃんに誘われて、近くのハンバーガーショップに行った。けど私は何となく気が抜けてフィレオを齧りつつ溜め息をついた。それに気付いた鶴姫ちゃんが首を傾げる。
「どうしたんですか、アイちゃん?今週ずっとそんな風にぼんやりしてるみたいですけど…テストそんなに悪かったんですか?」
『えっ?うーん、別にそういう訳じゃないんだけど…体調悪い訳でもないし』
そう返すと、鶴姫ちゃんはピンときたように笑みを浮かべた。
「じゃあ恋ですね!アイちゃんにも好きな人が出来たんですよね!誰ですかっ!?」
『こ、恋!?そんな前田君じゃあるまいし…心当たり無いし…』
「何言ってるんですか!理由無しにそんな症状出る訳ありません!あ、そうだ、今から目を瞑って一番最初に浮かんだ男の人を教えてください!」
『えー…』
キラキラ輝く鶴姫ちゃんの笑顔を前にすると断れなくて、黙って言う通りに目を瞑る。男の人、男の人…と念じると…日曜に見た三成くんの笑顔が浮かんできた。それは私が今週中何回か思い出してしまっている顔。
目を開けると待ってましたとばかりに鶴姫ちゃんが食いついてきた。
「誰が浮かびました!?」
『…み…石田三成くん』
「三成…ってえええっ!?あのこわーい生徒会の人ですかっ!?」
『あはは…』
やっぱり三成くんに対する印象は皆同じようなものらしい。鶴姫ちゃんは大袈裟なくらいのリアクションで驚き、私に少し顔を近付けると声を潜めて喋り始めた。
「あの人が気になるんですか?」
『…気になる、かな。三成くんは思ったより良い人だよ』
「…その三成くんって呼び方は?」
『これは三成くんが自分からこう呼べって言ってきて…』
難しい顔をしている鶴姫ちゃんに、なんだか尋問されてる気分だなぁと関係ないことを考える。
「…気になるなら、突撃あるのみですね!」
『突撃…突撃!?』
「はい、押しまくりましょう!きっと大丈夫です!」
『えぇっ!?』
どういう経路でそうなったからは分からないけど鶴姫ちゃんが言うには気になるなら手当たり次第強気にぶつかっていきましょう!そうすれば上手くいく!とのこと。
一人で盛り上がっている鶴姫ちゃんに気圧されつつ、冷めかけたフィレオをかじった。
_
何年か前に書いてずっと放置してもう書けねぇなって思って没。
曲聞きながら妄想するの好きなんですけど上手く書けないんですよね。
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[mokuji]
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