知ってる?うさぎは寂しいと死んじゃうのよ。迷信って噂もあるらしいけど。
別にそれが迷信だろうと本当だろうとどっちでもいいの。
大事なのは今私が寂しすぎて死にそうってことよ。
私がさっきから自己主張してるのに気付いてくれないの。ひどいひどい、って泣いてみせましょうか?
「やだうっざいこの女」
ばたんと本を閉じて後ろの温もりに寄り掛かる。
いきなり体重を掛けられるとは思ってなかったみたいで見事にバランスを崩して二人して冷たい床に倒れ込んだ。
「何。もう、どこ読んでるか分からなくなった」
怒ったように眉を寄せて、ずれた眼鏡の位置を直すと、自分が読んでた本を放棄して私が文句を言っていた本に手を伸ばす。
「あー、」
うざいって言った理由が分かったように、あー、と一言。
「でも最後バッドエンドだった気がする、コレ」
「何? 寂しすぎて死んじゃったの?」
けらけら笑いながら聞くと、「気になるなら読めば?」と本を返された。
それから床に落ちた本を拾ってまた読み始める。当然私は視界に入っていない。
(今は本の女と同じ気持ちかも)