変態×鈍感

 今日は何の日?そう修学旅行。
 好きな人とまたあした、って別れなくてもいい日。
 まぁその好きな人は俺の思いに気付く訳もなく別の友達と戯れているのだけど。
 それにしても無防備過ぎやしないか彼は。腹チラ腰チラ項チラと、彼が動く度にちらちら見える。誘ってるのか?誘われてるのか俺は乗るぞ。
 ああおい待てお前の友達今お前の腰に手を回したぞなるほど綺麗な花は虫達が放って置かないってわけだな。
 ん、何見ている。

「……お前、襲うなよ……」

 注意を受けた。
 思考がだだ漏れだったという事か?
 とりあえず携帯を出して友達と戯れる彼を記録に納めた。
 相変わらずの細腰は携帯の画面の中でも変わることなく俺を魅了し続けていた。若干見える肌色がたまらないな。
 正直これ一枚でどこにだっていけそうだ。

「どこに行く気だ」

「それは決まっているだろう。トイ痛っ!」

 叩かれた。叩かれる趣味はないぞ。あ、いやでも彼奴になら……。

「おーい、お前の友達が危ない道行こうとしてるぞ」

 手をメガホンの形にして人の群に叫ぶ。「え?」と一際目立つ声がして、人の群をかき分けて彼が現れた。

「何、どーした」

 そう言って、笑顔で俺の前に立つ。草食動物みたいな真っ黒の目がじっと俺を見ている。
 そして彼を呼んだあの男は彼の代わりに群に突っ込んでいった。いきなり二人にさせられてどうしろって言うんだ沈黙が辛い。

「や、どーもしない、から、」

 いや全然です。とても大変です体温と心拍数の上昇が著しい。色々限界寸前だったけど顔に出さずに答える。

「そうか? じゃあ彼奴等行っちゃったし早く追い駆けようぜ!」

 ぎゅう、と手を握られる。いや無意識なんだろうけど意識してしまう訳で。顔に熱が集まるのを感じたけど彼は前を向いているのだから見える訳ない大丈夫。だから追いつく前にこの興奮を抑えろ俺。そうだ手から意識を離すんだ。


 果たしてこの状態で修学旅行中失血死しないかが心配だ。遠くから見ている分には大丈夫なのに、確か彼と俺は同室だったはず。あ、たった今俺の命日が決まりました。


 色々あって夜。
 夕飯は真っ赤に染まった。愛の力故に。多分今の俺は彼の中で血の気が多い人なんだろう。原因は君だというのに。
 布団敷いて風呂に入って。風呂に付いて行きたかったが残念ながらティッシュを赤く染める作業に勤しんでいた。帰ってきた彼は浴衣。そのせいで漸く減りが遅くなったティッシュは一瞬にして無くなってしまった。

「枕投げしよーぜ!」

 彼が提案する。みんなが乗る。俺も乗るべきなのか、と思っていたら止められたのでそっと携帯を取り出した。
 枕を投げる。浴衣の袷から見える腹筋溜まらないな。カメラ機能を用意。カシャリ。
 どうせ浴衣だって適当に着たんだろう。あちこち肌蹴ている。本当にありがとうございます。
 滴る汗とか。項とか。腹筋とか。鎖骨とか。足とか。ひたすら彼にカメラを向けてパシャリパシャリ。どうしよう盗撮犯の気分。気付けば鼻から愛が垂れ流しになっていた。
 枕投げは終わったようで布団にごろんと寝転んでいた。肌蹴た浴衣。汗ばんだ肌。布団に寄った皺が更に。
 何か今日だけでメモリ使い切っちゃいそうで怖い。
 いつの間にか雑に敷かれた布団の上に雑魚寝しているみたいになっていた。大丈夫かな。そぉっと、彼の横に近付いて寝転ぶ。


「……ん、おは、よう?」

 俺が起きるともうみんな起きていた。でもみんな浴衣だ。着替えないのかな。いや、これからならこれからで。

「これから朝風呂入り行くんだけど、一緒に行く?」

 いそいそとバスタオルを抱える彼に誘われた。その時点で断るなんて頭にない。

「行く」

 そう答えて、俺もバスタオルを用意して、畳んだバスタオルの中に携帯を忍ばせ……

「おい待て」


 お泊まり、枕投げ(をしている彼を盗撮)、常識です



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一応二人は友達です


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