歴史の教科書。
さあ開いてみようか、載っているのは何だ?
そう、戦争と大災害と思想だ。手っ取り早く教科書に載るにはどうすればいい、災害はだめだ。俺には天災を起こすような力はない。詩的な事も哲学的なことも偉大なる先人たちが遂げてしまっている。ならば残るは一つしかあるまい。
「そうだ戦争をしよう」
がたりと立ち上がって宣言する。
今は昼休みだから生徒が立ち上がったくらいで気に止める人間もいない。
但し、一人だけ俺の動きに突っ込みを入れつつボケてくる奴を除いて。
「馬鹿なこというなよ。もしそうなったら俺は全力でお前を止める。我が全勢力を駆使してな!」
「止められるものならば止めて見せよ!」
斯くして我らの戦争が始まったわけだ。
「良いか各員心して傾聴せよ!」
空教室に戦争にノってくれる奴等を集めたら結構集まった。向こうがどの程度いるかは分からないがこれだけいればいけるのではないか。
「戦を制するのは食料である! 昼休みになると同時に売店、食堂に特攻せよ!」
「はい!」
言い終わると同時に右後方から勢いよく手が上がる。
「どうした!」
「母さんお手製愛情弁当持参の者への対処は!」
「放置だ! 親子の愛までを引き裂く必要はない!」
親の愛に肖れない者を攻撃するのだ!と。それだけ聞くといじめみたいだが。ただ単に人の鞄を漁るのは良くないなという話である。
「それから無関係の者は巻き込まぬよう!」
「いいかお前等よく聞けよ」
空教室に奴等の行動を止めてくれる奴を集めたら結構集まった。つまりはアイツ等はそれだけ危険視されているのか、それとも突っ込みが必要だと思ったのか。
「アイツ等のことだ。昼休みになると同時に購買ダッシュをするに決まってる。俺達がする事は……分かるな?」
教室を見渡す。目が合うと当てられると思っているのか皆目をそらす。何か先生になった気分だ。
「そう、奴等の行動を止めることだ、つまり当日購買、食堂はかなりの人間が集まることが予想される。一般の生徒に被害を出さないためには、はい、一番前の君」
先生気分で指を差す。一瞬びくっ、と震えた。ああ先生ってこんな気分なのかな。
「え、中に、彼らを入れない……?」
不安そうに顔色を伺うように答えを出す。大丈夫。君の答えは大体合っている。
「そうだ。中に、入れない。だからといって入り口で争っても同じだ。だからその上で、俺達の仕事は、教室で奴等を足止めする」
「はい」
さっきまで黙っていたのに手が上がった。さっき差されたといえど意見を言っていたからだろうか。
「どうした」
「同士がいない教室はどうなるのでしょう、食堂への進入を許してしまうのでは」
コイツ入る軍間違えたんじゃないかってくらいノリいいな。まあ多分止めてくれるんだろう。
「それは多分心配ないから安心していい」
そう、ここに居るのは、向こうの奴等の突っ込みをやっていた人。つまり人数はほぼ一緒と見て間違いはない。
ならば俺達がやるべきは相方の足止めな訳だ。
明日は確かルール配布だから、戦争は明後日から。
「止められるものなら止めて見せよ!」
「止めてやるさ……。覚悟しろ!」