「だから! 目玉焼きにはソースなんだって!」

「いや醤油だから! お前味覚ダイジョウブ?」


 いや、うん。詰まんないことで何言い合ってんの俺ら、とは思っても何もどうにもできないのが若さって奴だ。止まらないし止められないんだ。

「「なぁお前目玉焼き何かける!?」」

 二人して側で傍観していた一人に聞いてみる。多分俺らの目は血走っているんだろうな怖い。
 傍観していた奴は溜息を吐いて一言。

「シンプルイズベスト」

 つまりそういうことらしい。どうしような。収集つかないな。


 結局それで喧嘩したまま。
 帰りにシンプルイズベストな奴に話しかけられた。

「下らない事で喧嘩してそのまま……、なんてよくあるんだぞ」

 それだけ言って去っていった。なんつーか彼奴がシンプルだよな。そういえば彼奴お兄さんいるとか言ってたな。兄もあんなシンプルなんだろうか。


 家に帰って喉が乾いたので冷蔵庫を開く。目の前で鎮座してらっしゃるは生卵。
 あれか、俺を焼けって事かさては。

「めんどい」

 卵に向かって言うと冷蔵庫を閉じて部屋に行った。
 着替えようと押入を開ける。

「おかえりなさい」

 ばたん、と押入を閉める。
 何だ今の。ジャージ着た変な奴がなぜ人の家の押入に……。
 思案していると押入が開いてジャージの人が降りて来た。空き巣?空き巣って表現が一番しっくりくるな。うん、空き巣だ。
 それで空き巣にはなんて挨拶すべきなんだろう。お帰り下さいませ空き巣様?うんいいなそれ、それで行こう。

「空き巣扱いとは失礼な」

 空き巣ジャージが喋った!じゃない、なんで空き巣だと思ってたのがばれたんだ。

「それは、私が神様だからだ」

 ああ違った空き巣じゃなかったイタイ子だったどうしよう。俺このジャージとどう接していけばいいんだろう。

「あぁ、えぇと、お帰り下さいジャージ様」

「扱いが空き巣と変わってないぞ」

 それは多分イタイ子と空き巣は俺の中で大体一緒の分類されてるからなんじゃないかな。

「私は空き巣でもなければイタイ子でもない!」

 はいはいカミサマなんですよね理解。神様だっていうなら何か凄いことの一つや二つしてみろってんだ。

「ならば下らないことで喧嘩したお前等二人の仲を直してやろう」

 下らないって言われた。何も知らないジャージに俺達の壮絶な言い争いを下らない、と。いや確かにちょぉーっと下らないかなぁーなんて思わなくなくもなかったけど。
 まぁなんだ、シンプルな奴も言ってたし、

「できるもんならやってみて下さい」

 頼んでみる……のも癪だなぁとか思ってたらこうなった。神様なら広い心で許してくれるだろうと。
 神様は「明日の朝ビビれ!」と捨て台詞を残して押入に帰って行った。気になって開けたら誰もいないしまぁ気にしちゃいけないんだよなこういうのって。


 次の朝のメニューが目玉焼きだった。母さんが厚意でかけてくれたのかは知らないが

「母さん! いつものと違う!」

 口を開けば文句ばっかの息子でごめんな母さん。でもこのかかってる奴さぁ、昨日喧嘩した相手がかけてる奴な訳だよ。
 台所から「ごめんねー」と謝る声がしたので「おー」と返してとりあえず目玉焼きをもぐもぐ。
 で、ごーとぅーすくーる。


「あのさぁ、醤油、かけて食べてみたんだよ」

「マジで? 俺もソースかけて食べたよ」

「まぁ悪くなかったな」

「何でそんな偉そうなんだよ、まぁ、ソースも悪くはないな」

「お前も一緒じゃねぇか」

 で、まぁ仲直りできたわけで一応あの空き巣ジャージ神様の力かどうかはわからないが一応感謝してみる。

「ねぇ」

「ん?」

 シンプルな奴が話しかけてきた。今日はどうした。

「昨日、兄が不法進入したみたいで、ごめん」


え?


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